フランシス・フォード・コッポラ「ワン・フロム・ザ・ハート」

リアルさを追求せずむしろ作り物感をあえて強調するかのようなセットが味わい深い。空港もセットを作り、飛行機が飛ぶとこまで見せてくれるんだから驚き。ストラーロの撮影も最高の仕事と言える。

物語はひたすら男女間のゴタゴタが続く痴話喧嘩モノでたいした起伏もない。こういうのこそ感情の機微をどう描くかが肝であるはずなのに、それが一切表出してこない。コッポラが適任だったかどうかは甚だ疑問。ウディ・アレンなら半分以下の予算でもっと面白く撮れるだろうな、と思いながら見ていた。

ただ、ナスターシャ・キンスキーが綱渡りなどの曲芸を見せるシーンはフェリーニを想起させるような画面の躍動感があり、こういった細部は楽しい。こぢんまりした話を何故かめちゃくちゃ金と手間かけて撮る非効率な感じも含めて、なんか憎めない映画ではある。

(2024年5月12日、U-NEXTで鑑賞)

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