2023年11月~12月に見た映画

☆は5段階評価です。スピルバーグ、是枝、宮崎、スコセッシ、北野、カウリスマキ、ヴェンダースなどの新作が見れて、且つそれぞれに素晴らしかった2023年。映画ファン的にも充実した1年だったのかなと思います。

アラビアのロレンス(デヴィッド・リーン) ☆☆☆☆

やや変わり者って程度の飄々とした好青年ロレンスが別人のような形相に変貌していく過程をたっぷりと時間かけて描く。その狂気と屈折を表現しきったピーター・オトゥールの名演。清濁の両側にスポットを当てた、単純ではない人物造形が物語に深みを与える。

冒頭のバイク事故から始まり、ハイライトの場面が間断なく続くかのような贅沢な作りに驚かされる。金と手間をかけた臨場感溢れるモブシーンは映画の醍醐味だ。長尺で多少しんどくても、映画館の大きいスクリーンで見るべき作品なのは間違いない。

東京の女(小津安二郎) ☆☆☆☆

ランブルフィッシュ(フランシス・フォード・コッポラ) ☆☆☆☆

イメージの本(ジャン=リュック・ゴダール) ☆☆☆☆

結局この編集スタイルが好きかどうかが評価の分かれ目なんだろうが、私には刺激的に感じられる。ゴダールは最後の最後までゴダールだった。引用されてる映画を全部見てみたいと思ってしまう。

首(北野武) ☆☆☆☆

ヒョロい風貌でイキりまくる加瀬亮の怪演が面白すぎるのだが、与えられた役割を十全にこなす木村祐一や中村獅童も適材適所なキャスティング。命の軽さ、それをギャグとして描く不謹慎さ。呆気なくもキレのあるラスト。大作時代劇でも北野武の持ち味は健在。

フェノミナ(ダリオ・アルジェント) ☆☆☆☆

ド派手な音楽と突拍子もない殺人描写は相変わらず。本作は何と言っても大量の虫が空からやってくるという発想が強烈で、ヒッチコック「鳥」をグロくしたようなヴィジュアルは相当な驚きを与えてくれた。しつこいぐらいに見せ場連発の最終盤も満足度高い。

アリスの恋(マーティン・スコセッシ) ☆☆☆☆

友達みたいな関係性の母子とイカれた周辺人物たち。ハッピーエンド風だが実際はそうとも思えないような帰結。敵対してた相手と仲良くなる展開も、それぞれのマトモじゃなさが際立つような描き方で妙に可笑しい。女性映画を撮ってもスコセッシはスコセッシ。

天はすべて許し給う(ダグラス・サーク) ☆☆☆☆

少女暴行事件 赤い靴(上垣保朗) ☆☆☆☆☆

やくざ絶唱(増村保造) ☆☆☆☆

暴力兄の束縛から逃れようとする前半はまだ追えた大谷直子の心の動きがどんどん理解不能になっていく。それでも圧倒的な演出のテンションで見せきってしまう。この時期の増村は完全にトチ狂ってた感あるが、これはこれで面白い。勝新のパンチの重量感も圧巻。

枯れ葉(アキ・カウリスマキ) ☆☆☆☆

紙片紛失から始まるすれ違いの切なさもアル中男の自省を経た再出発も、そこを広げて面白くしようという欲張り方を一切しないのだが、この腹八分目な感じも含めてカウリスマキらしさを堪能。カラオケ映画としても「3-4x10月」と共に記憶に留めておきたい。

ロッキーⅥ(アキ・カウリスマキ) ☆☆☆

ワイヤーを通して(アキ・カウリスマキ) ☆☆☆

悲しき天使(アキ・カウリスマキ) ☆☆☆

俺らのペンギン・ブーツ(アキ・カウリスマキ) ☆☆☆

影武者(黒澤明) ☆☆☆

面白くなりそうな設定ではあるのに、各キャラを立たせることを放棄したかのような覇気に欠ける演出が黒澤らしくもなく、弛緩した空気が全編を支配。中途半端にモノクロ時代の残滓を感じる部分もあるのが、かえって衰えを際立たせてしまっていて物悲しい。

仲代が見る悪夢のシーンは「どですかでん」を思わせるどぎつい色彩。ここは晩年の黒澤作品ならではの異様さで印象には残る。

崖(フェデリコ・フェリーニ) ☆☆☆☆

ネオレアリズモ的作風の中にも後のフェリーニスタイルの萌芽が随所に見られる。とりわけ大人数が室内でガヤガヤ騒ぐパーティーのシークエンスが傑出。その後人通りの少ない寂しげな通路のショットになるのもいい。マシーナは相変わらず幸薄そうな女を好演。

PERFECT DAYS(ヴィム・ヴェンダース) ☆☆☆☆

東京の宿(小津安二郎) ☆☆☆☆

岡田嘉子が美しく悲しい。坂本武がああいう行動をするのも納得できる彼女の存在感が物語を支える。終盤の突然インサートされる花火や、坂本と飯田蝶子の緊張感溢れる切り返しショット。簡潔な描き方でも心揺さぶるものがあるのはさすが小津と言うべきだろう。

欲望という名の電車(エリア・カザン) ☆☆☆

アステロイド・シティ(ウェス・アンダーソン) ☆☆☆

いつの間にかよく分からない映画を作るようになってしまったウェス・アンダーソン。やたら凝った構成にするのも結構だが、それが面白さに繋がっているとは思えず、ただただ見てて混乱するだけ。もっとシンプルでいいのに。宇宙人の登場シーンは可愛かった。

ちなみに2023年新作映画ベストはこちら。

フェイブルマンズ
怪物
レッド・ロケット
イニシェリン島の精霊
キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン
ベネデッタ
PERFECT DAYS
君たちはどう生きるか

RRR

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