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読書レポート #13 『エンジニアの知的生産術』


この本を選んだ背景

「エンジニアの知的生産」というワードに興味を抱いたからである。

最近、AIによる知的生産が盛んになっている。AIに画像を描かせたり、音楽を作ってもらったり、文章や資料を要約してもらったりするツールが雨後の筍のように登場している。

こうしたツールによって、だれでも知的生産活動が行えるようになってきている。ただし、現状のAIによる生成物には誤りが生じていることもしばしばあり、嘘のことを事実っぽくみせた成果物は多く存在する。

正しくない成果物を見抜くためにも、知的生産の地力を高める必要性は失われておらず、むしろ高まっているように感じた。

そこで、今回はこの「エンジニアの知的生産術」を読んで、知的生産の基本的な要素とその高め方を学んでみたいと思った。

内容

●新しいことを学ぶには

学びを血肉とするプロセスは、下記となる。

  1. 具体的なものを学ぶ

  2. 学んだものを抽象化する

  3. 抽象化したものを実践にうつす

具体的なものを学ぶというのは、本でいえば目次を読むようなものである。
特定のジャンルで何を学ぶべきかわからないなら、ひとまずかたっぱしからやってみることである。

プログラミングえいえば「写経」のようなものである。
具体例でいえば「経済のことがわからないなら四季報を写経する」である。これを実際に行っている方が「四季報写経ウーマン」さんである。
リンクは以下に掲載。

この人は「四季報奢ります」企画に参加したことで会社四季報を手に入れ、四季報の活かし方として経済に詳しくなろうと試みた結果写経にたどり着いた。

写経を開始した当初は「財務諸表の読み方もわからなかった」「世の中にこんなにもたくさんの企業があるなんて知らなかった」というが、写経を進めるうちに経済に対する知識が深まると同時に興味が湧き、ニュースの裏側が読めるようになったとのこと。

四季報写経の方の例でいえば、流れは下記のようになる。

  1. まず写経を通して具体的な学びを得る。

  2. 無意識のうちに経常利益を増やすための動きや事例に敏感になる。

  3. 得た知見を転職に活かしたり投資に活かしたりする。

●やる気を出すには

Getting Things Done(GTD)

やる気を出すには、GTDの手法を用いるのが良い。

GTDとは、「Getting Things Done」の略である。
これは、気になることをすべて集め、その後処理を行うことである。

たとえば、部屋の整理をするとしよう。
部屋の整理は知っての通り、少し面倒である。「どういう流れでやったら効率的か考えるのが面倒」「そもそもやんなくてもそこそこ生活できるし…」「疲れるしホコリも出るし面倒くさい」といったことを考えてしまう人は多いだろう。

GTDの手法を部屋の整理に取り入れると、下記のようになる。

  1. 整理したいエリアのものをすべて、別の場所に移す。

  2. 空になったエリアに、必要なものを配置する。

  3. 残ったものは捨てたり、売却・譲渡を行う。

エリア内のアイテムを移す先の確保であったりと他にも必要なことはあるが、GTDの手法を適用するとこのようになるだろう。

すべての情報がそろわない場合、利益やリスクに関して想定がつかない。想定のつかない状況で行動を起こせる人はあまりいないし、大抵は無駄な動きをしてしまうものである。

すべての情報を洗い出すことで、予測可能な利益およびリスクを出す根拠がそろう。これにより無駄な動きを減らせるうえに「カンペキに近い行動」をとることができる。

リスクを嫌う人でも、他者に説明のつく(他人/状況/運のせいにできる)状況がそろっている場合は行動に起こしやすい。こうした心理的障壁を低くできるのも、洗い出しの良い点である。

洗い出したタスクについては、下記を意識すると良い。

  • すぐ終わることはすぐにやる

  • 他人に任せるべきことなら連絡を入れる

  • 特定の日時にやるべきことならカレンダーに書き込む

●記憶を鍛えるには

記憶は科学的には複数の意味で用いられる。
心理学では「過去の経験を保持し、後でそれを思いだすこと」、生物学では「過去の影響が生物の性質のひとつとして残ること」、コンピュータ・サイエンスでは「RAMやUSB等の記憶装置に情報を格納すること」である。

この項目で示されるのは最も一般的に用いられる心理学的な意味の記憶である。過去の経験を覚えて後で思い出すために重要ば脳の部位として、海馬が挙げられている。

過去にてんかん手術の影響で海馬を取り除く必要があった患者がいた。彼は手術後にものごとを覚えられなくなったが、会話をしたり日常生活を送ることはできていたという。記憶がなくなったのではなく、新しいものごとを覚えられなくなったのだ。

海馬の重要性

この出来事がキッカケで海馬に注目があつまり、ラットによる動物実験が行われた。実験の内容は以下である。

ラットを不透明な水の入った水槽に落とす。水槽はラットがおぼれるには十分な深さがあり、水槽の特定の場所にのみ足のつく浅瀬(足場)が存在する。着水してから足場に到達するまでの時間を測定する。
実験に参加するラットは、A.通常のラット・B.海馬を除いたラットの二種類である。
実験ケースは、①指定した場所に落下させ続けるケース・②ランダムな場所に落下させるケースの2パターンである。

この実験の結果は下記となった。

  • A群(通常のラット)は、①②の両方のケースにおいて回数を重ねるごとに足場に到達する時間が短縮された。

  • B群(除海馬ラット)は、①のケースでは回数を重ねるごとに足場に到達する時間が短縮されたが、②のケースでは足場に到達する時間が短縮されなかった。

この実験から考えられることは下記となった。

  • 普通のラットは足場の位置からの景色を見て場所を類推し、場所への行き方を編み出すことができる。

  • 除海馬ラットは足場の位置からの景色を見て場所を類推できないが、特定の場所への行き方という手続きは記憶できる。

  • 目印からの景色から場所を類推することは、具体的な体験から抽象的なモデルにすることに相当する。海馬はモデル化に重要な部位だと推測される。

海馬では具体的な体験から抽象的なモデル化を行い、記憶の質を変化させる機能があることが示唆された。

記憶と筋肉の共通点

脳内にはニューロンという神経細胞が存在する。それぞれが1000個ほどの突起をもち、他のニューロンに繋がっている。ニューロンどうしの継ぎ目を「シナプス」という。

記憶にはニューロンの働きが強く関与している。記憶を脳神経科学の観点から見ると、下記のような現象が起きている。

  • 何らかの外部刺激を受けることで、特定の部分のシナプスが一時的に増える。

  • 一定以上のシナプスが存在する部位に関しては、大脳皮質への記憶領域へのアクセスが開かれ、長期で記憶しやすい形に変化する。

特定の部分のシナプスが一時的に増え、さらに刺激を与えることでこれが安定する…という働きは、筋肉の生成に非常に近しいものである。ある部位のトレーニングを行うことでその部分の筋肉が徐々に発達すること、それにはある程度の時間と継続した刺激が必要であることはまさに共通点である。

アウトプットが記憶には必要不可欠

筋肉はひたすらトレーニングしプロテインを飲むことで増強されるが、記憶は異なる。どのように異なるかというと、記憶にはアウトプット作業が必要ということである。

筋肉増強の手段として用いられる筋トレはどちらかというとインプット作業であり、記憶でいう勉強である。ただし、記憶を増強させるには勉強というインプットだけでなく報酬系を刺激するアウトプットが必要である。

小テストは、その最も端的かつ簡素なアウトプット手段である。小テストは特定の分野の記憶を確かめるために行い、点数付けされる。最初は点数が低いものの、どこが記憶できていないかが可視化される。合っていることを確認することで報酬系が刺激される。

小テストに対して苦い記憶を持つ人も多いだろうが、小テストを記憶の手段として使い、本番のテストで高得点を取ることに用いるのはとても賢い方法である。

関連付けで一石二鳥以上の効果

ただの文字列や知識を覚えることは、大変な苦痛であろう。
例えば、アメリカの都市を覚えることを挙げる。都市人口別上位から並べると、ニューヨーク・ロサンゼルス・シカゴ・ヒューストン…といった名前が挙がる。ただ、こうした名前をただ覚えるのは非常に苦痛といわざるを得ない。

ただし、他の物事と関連付けて覚えるのは極めて効果的である。
アメリカの都市であれば、NBAやMLBのチーム名や選手と一緒に覚えるという手段が効果的である。

ニューヨークを例にとると、NBAチームは「ニューヨーク・ニックス(Newyork Knicks)」「ブルックリン・ネッツ(Blooklyn Nets)」、MLBチームは「ニューヨーク・ヤンキース(Newyork Yankees)」「ニューヨーク・メッツ(Newyork Mets)」がある。

ヤンキースといえばゴジラこと松井秀喜選手が所属し、2009年にワールドシリーズ優勝に大きく貢献してMVPを獲得したことは有名である。また、メッツには千賀滉大・藤浪晋太郎と日本人選手が在籍していたり、ブルックリンネッツには渡邊雄太選手が昨年在籍して3ptシューターやディフェンダーとして活躍していたりした。

また、大谷翔平選手は現在ロサンゼルス・ドジャースに所属している。ロサンゼルスもまたスポーツチームを多く抱える大都市で、MLBはドジャースのほかにロサンゼルス・エンゼルス、NBAはロサンゼルス・レイカーズとロサンゼルス・クリッパーズがある。なお、レイカーズには八村塁選手が在籍し、活躍を残している。

スポーツチームごとに覚えることで、少なくともチームの本拠地がある都市の名前や特徴に関して覚えることができる。NBAであれば30チーム28都市(ニューヨーク・ロサンゼルスに2チームある)、MLBであれば30チーム26都市(ニューヨーク・ロサンゼルス・シカゴ・サンフランシスコに2チームある)に関して効果的に覚えることができる。

●効率的に読むには

読むとは何か?

この章においての「読む」は、2ついずれかの目的をもって文章を見る行為のことである。ひとつが「情報を見つけること」、もうひとつが「理解を組み立てること」である。マンガや小説を「娯楽として」読む行為もあるが、こちらは効率化すべきことではないため、スコープ外としている。

読む行為の最終目標は、文章の執筆者の考えを自分にインストールすることである。そのためには、本に書かれている文章を見るだけでなく理解を組み立てる必要がある。情報を見つけることと理解を組み立てることは切っても切り離せない。

文章や情報そのものに価値があるものもあれば、文章や情報の背景にある指針や考え方・哲学といったものに価値がある場合がある。情報の深さについて、イギリスの哲学者であるFrancis Baconは下記の言葉を残している。

Some books are to be taseted, others to be swallowed, and some few to be chewed and digested: that is, some books are to be read only in parts, others to be read, but not curiously, and some few to be read wholly and with diligence and attension.
日本語訳:
ある本は味わうべきであり、他の本は飲み込むべきであり、またある本は噛み砕いて消化すべきである。つまり、ある本は部分的にだけ読むべきであり、他の本は好奇心を持って読むのではなく、ある本は全体を熱心に注意深く読むべきである。

Francis Bacon, "Of studies", 1625

Baconは本を食べ物にたとえて、「味見するだけの本」「丸のみすればいい本」「よく咀嚼し味わうべき本」があると述べている。読む前に、目の前の本や文章をどのレベルで読むのかを考えると良いだろう。

読む速度

読む速度について詳しく知ることで、自分の読む能力を向上させる目安を知ることができる。この章では仮に1ページ900文字で200ページある本(180000文字)を読むとして、手段ごとにかかる時間を算出する。

スピーチでは、一分間に300文字程度の速度でしゃべるのがわかりやすいという。このため、音読の速度も同程度だと考えられる。先の仮定では、1冊あたり10時間と算出される。

一方、文章を見て認識できる速度は個人差がある。ただ、人間の限界値はある程度推測できる。光の点滅を認識できる限界はおおむね50-100ms(0.05-0.10s)である。ここから考えると、1秒間に10ページを見るのが視覚的な限界値ということになる。つまり、一冊あたり20秒と算出される。

また、物理的な本である場合はページをめくる手間もある。ここを考慮して2ページを読んだら0.5秒かけてめくることを計算に入れれば、一冊あたり95秒と算出される。

自分の場合は、一般的な単行本を読む際は1ページあたり30秒で読んでいる。仮に通しで読んだ場合は、一冊あたりおよそ6000秒かかると算出される。6000秒とはすなわち100分(1時間40分)である。

本を読む際に「静かな音読」をしていないだろうか。静かな音読とは、声に出さない音読のことである。この場合、音読をやめて目で追って認識するようにすれば読む速度は相当に速くなるだろう。

速度を上げると、理解の壁が立ちはだかる。読む速度を上げることで入力できる情報は増える。だが、入力した情報と理解できた情報に大きな差がある場合、気持ち的に読み続けられなくなるだろう。

単位時間あたり読む文章が2倍に増えても、理解量が増えなければ理解度は1/2となる。この理解度の減少が自己像と現実の不一致を引き起こし、ストレスを生むのである。

したがって、読む速度を上げる行動を取るならば「理解度を落とさず読める最高の速度で読む」ようにすべきである。

【速読】1ページ2秒以下の見つける読み方

「The PhotoReading Whole Mind System」という本には、速読のコツが書かれている。この本に書かれている"Whole Mind System"というシステムをこの章では解説する。このシステムは下記の8要素で構成されている。

  1. 準備

  2. プレビュー

  3. フォトリーディング

  4. 質問を作る

  5. 熟成させる

  6. 答えを探す

  7. マインドマップを作る

  8. 高速リーディング

準備とは、本を読む目的を明らかにすることである。
プレビューとは、「本の内容をおおざっぱに把握する」ことである。
表紙・裏表紙・目次を見て概要を把握し、各章を適当に開いてキーワードを探したりすることで、目的を修正するか判断する。

フォトリーディングとは、ページ全体を写真のように扱うことである。1ページを1,2秒眺めてどんどん次のページを読み、一冊通すのである。筆者は「個人的にはあまり効果を感じないが、静かな音読をしている人に向けて目で読む訓練をさせるためのものではないかと考えている」としている。

質問を作るとは、具体的な質問文を作ることで当該の本を読む目的をより明確化することに焦点を置いた過程である。例えば「エンジニアの知的生産術」を読むことでいえば、「エンジニアとしての能力を高める方法を知りたい」から「エンジニアとして文章を効率よく読めることは大事。効率よく読むためには文章を読む目的を精緻化することが必要だが、どうしたら精緻化できるのか?」という風になる。

熟成させるとは、質問を作ったうえで10-20分(できれば一晩)時間をおき、質問を発展させることである。この間に自分の過去の体験や浮かんだ考えと質問を紐づかせたり、新たな質問が浮かぶことがある。

答えを探すとは、熟成させた質問の答えを探すことである。
マインドマップを作るとは、見つけた答えや学んだことをノートに記すことである。読んだ過程で思いついた単語をツリー状にどんどん書いていく。

高速リーディングとは、自分が適切だと思う速度で止まらず最初から最後まで一気に読む行為である。本を読む行為の最終地点であり、これを済ませると「読んだ」という達成感を感じることとなる。

【遅読】1ページ3分以上の組み立てる読み方

この章は速く読む方法についてが主題であるが、それは「知りたい情報とそれを構成する理屈」を精緻化してそれに該当する情報を見つけるというトップダウン型の読み方であった。

一方で「遅く読む方法」も存在する。具体的には、哲学や数学などの本で用いられる方法である。哲学や数学は理論を積み上げて結論を導くものであるため、結論ありきの読み方とは相いれない。この分野においてはボトムアップ型の読み方をする必要がある。

この読み方についてまとめると、下記のようになる。

  1. 本を選ぶ

  2. わからないところをノートに書き留める

  3. 何がわからないのか明らかにする

  4. わからない部分はわかるまで調べる

「わかる」とは何か?これは数学者の考えを提示するのが最も端的であろう。それは「該当する概念について、自分の言葉で概説と他との違いを説明できること」である。

数学では「なぜその計算方法を用いるのか」「その定理は何の定理なのか」などを都度聞かれ、それでないといけない理由や説明をする必要がある。その際にはメモやノートを遣わずに説明しないといけないという。本当に理解していなければ自分の言葉で説明できず、メモやノートに頼って説明をしてしまうからだ。

●考えをまとめるには

考えをまとめるという行為は、知的生産の要である。最近ではAIサービスの発達により、ChatGPTやGeminiなどのサービスを使って情報をまとめられる環境ができつつある。それでも、本当に発信したい内容でまとまっているか・足りない内容はないか・出典が正しいかなどは最終的にヒトが判断するため、今後も全くいらない能力ではないだろう。

GTDの応用

考えをまとめる上でも、本文章の「やる気を出すには」で解説したGTDは役に立つ。考えをまとめることに対してGTDを応用すると、下記のようになる。

  1. 得ている情報を一か所に集める

  2. 集めた情報を整理する

  3. 整理した情報を体系化する

得ている情報を一か所に集めることで、まとめるに足る情報が集まっているかを知ることができる。仮に「こういう系統の情報が足りないかも」と思えれば、それについて追加で集めるようにできる。

発信したい分野の情報を集められたと判断できたら、次は整理する。整理する中でも情報が足りない系統が出てきたり、わからないことが判明したりするだろう。そういう場合は追加調査を行っていく。

整理していくうちに、情報の色がわかるようになってくるだろう。色というのは、濃淡があることのたとえである。例えば人の意見というのは賛成・反対のような二つの対立構造に集約はできるが、完全に賛成/反対という意見はほぼ存在しない。個人ごとに賛成/反対の意見に強さが異なるのである。

「賛成だが、ある点においては良くない」「どちらともいえないが、わずかに賛成」「ぎりぎり反対」「反対だが、この点を直してくれればわからない」…のように、濃い色の賛成意見もあれば薄い色の反対意見もあるといった具合である。

ある観点から見た情報の濃淡の差を見つけ、観点軸に沿ったものに並べてみるとまとめやすい。

「レポートが書けない」という人は多くいるが、この本に書いてあったことを考慮すると彼らは下記二点に課題を抱えていると思われる。

  • そもそもレポートを書くに足る情報を得られていない

  • 情報を得ていても、それらがどう関連しているか理解していない

●アイデアを思いつくには

アイデアを思いつくまでには下記3つのフェーズがある。

  1. 耕す

  2. 芽生える

  3. 育てる

耕すとは、考えをまとめることである。
芽生えるとは、耕した情報を寝かせて熟成させることである。
育てるとは、芽生えたアイデアが利用可能か検証することである。

耕す上で大事なことは、言語化されてない情報を言語化することである。
ここで大切なのはトリガーであり、下記が挙げられる。

  • 質問トリガー

  • 身体感覚トリガー

  • 描画トリガー

質問トリガーとは、定型化されたフレームワークによる質問を自分に投げかけることである。これにより、足りない情報や無意識で身に着けていた情報を言語化できる。

身体感覚トリガーとは、身体の動きを言語化することで抽象概念を説明することである。例えば摩擦を説明する際「靴底が減るのは、地面の小さなでこぼこが靴底を削るからである。この小さなでこぼこが靴底を削る力が摩擦である」といったものである。

描画トリガーとは、別の概念を利用して描画することである。
例えば、創造性をこのトリガーを利用して絵を描くと次のようになる。

「頭の上に木の幹を設置し、果実がなること」
 →果実がなることを創造性と表現する
「人の↑に核融合のマークを配置する」
 →核融合によるエネルギーの産生を創造性と表現する

アイデアを磨き上げるには、最小限の実現可能な製品を作ることから始めるのが良い。これをMVP(Minimum Viable Product)と呼ぶこともある。ただし、正しく磨き上げるには顧客がどんな人か明確にしている必要がある。顧客を正確に理解していなければ、高品質なアイデアを定義できないからだ。

●何を学ぶかを決めるには

何を学ぶべきか知るには、興味の湧いたものから学ぶのが良い。未知のものを発見するには、幅広く探索するのが良い。「知らない」と感じないものは盲点である。盲点を発見するには他者の視点が有用であるため、他者とコミュニケーションは積極的に取ると良い。

そもそも、何を学ぶべきか一概に決めることはできない。それは人生の正解がわかるのは死ぬ直前となるからである。しかしながら、これでは何も人間の生活向上に役に立たないことになる。そこで「何が正解になるかわからないが、正解の確率が高いものを学ぶ」というのが最適解となる。

正解の確率が高いのは「経営資源を増やすための知識」である。経営資源というのは"自分株式会社"を経営するための資源のことである。具体的には、人材(知り合い・友人)やモノ・金・時間である。学んだ知識で金やモノを手に入れたり、ヒトとのつながりを得たり、時間を節約したりする。

さらに、知識の掛け合わせによる差別化戦略を適用するとより経営資源を獲得しやすくなる。ある人は英語を話すことで業界上位30%の地力があると同時に寿司を握る能力で業界上位30%の地力がある。この時、英語を話せる寿司職人のランキングでは理論上では上位9%の地力を持つことになる。

スポーツや芸術などのトップヘビー分野を除けば、上位9%の人は相当な実力者といえる。このとき、お金を稼ぎやすい分野で上位の地力を持っていると、経営資源(お金)を非常に稼ぎやすいことにつながる。

例えば、現在進行形で英語圏(特にアメリカ)において英語を話せる寿司職人の価値は高騰しており、年間10万ドルのオファーも存在するという(2024年6月末で、1610万円ほど)。

学んだこと

知識の学び方以上に、知識を学ぶ前提の「やる気」の出し方を学んだと思う。業務上のタスクをこなす上で、全力でこなすようになるまで時間がかかることがあった。この原因はタスク中の小タスクの把握がうまくできていなかったからである。

今後、タスクをこなす上ではタスク中の小タスクを洗い出し、それらを分類していくことを意識していきたい。また、小タスクにかかる時間を想定したあと計測し、その差分を測る行為もしていきたい。自分が今いるプロジェクトではタスクごとの時間を記入することが義務付けられているが、これを自分のタスク遂行に利用していきたい。

アーシャルデザインの社員としては「知識の掛け合わせ」という点は強く意識したい。

我々は「スポーツ」という分野の感覚的な深い知見はもちろん、技術・歴史的な知見も有している。それに加えてITの知見を有している集団である。
我々はこの2つの知見を有することにより、ITとスポーツの橋渡しをするチャンスに恵まれていると思う。

また、個人的には経済(投資・投機取引)の知見も有しているため、これらの知見を持つ人たちとの橋渡しができるのではと思う。あくまで可能性を持っているだけであり、実際に行動しなければその可能性も拓かれないはずである。以降、スポーツ・IT・経済の背景を持つ人達とのコミュニケーションを行い、大きなチャンスをつかめるようにしていきたいと思う。


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