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読書レポート #3 『その後のとなりの億万長者』


本の選定理由

現代の資本主義社会に生きている限り、お金を意識しない日はないだろう。
自分が今行っている行動が自分の目標である「億万長者になる」に向けて正しい行動をしているか確かめたかったからである。
この本を読む前、億万長者に至る道は以下のように考えていた。

  • 収入を増やし、支出を減らす。

  • 投資はリスクが低いものを中心に行う。

このような考え方から、以下のような行動をしている。

  • NISAやiDeCoによる積立投資

  • ふるさと納税による節税

  • 通信料や保険料などの固定費の削減

あと、これに加えて株式投資や外貨預金・為替取引・先物取引を少額で行っている。
金融関係の本はいくつかあったが、何人かのビジネスや金融のスペシャリストがオススメしていたこの「その後のとなりの億万長者」を選定した。

この本の概要

"となりの億万長者"とは?

職業や持ち物は億万長者の証明とはならない。
たしかに、エンジニアや教員といった専門職の人は収入を富に変換する性格的特性や能力を持つ人が多い。
しかし、職業や持ち物は目印なだけであり、本質はより広範な行動パターンや体験を持っている人物のことである。
彼らは「お金を大切にする」からこそ億万長者になったのである。
お金を大切にするとは、富を築くための習慣を毎日惜しまず行うことである。例えば、貯金すること・浪費しないこと・投資すること…これらに対する情報収集と行動を怠らないことである。

収入は富ではない

収入と富は似た概念かもしれないが、全く異なる。
バランスシート(賃借対照表)で例えるとわかりやすい。
収入は売上で、富は純資産である。
売上が大きな企業は確かに儲かっているように見えるが、費用がかかっていたり借金が多かったりする場合は儲かっていないどころか破綻状態にあることさえあるのである。

期待純資産の公式

筆者の調査から、年齢に対する期待純資産を導く公式が提唱されている。
 → 年齢×収入÷10
 例:30歳で年収500万円の人の場合
 30×500÷10 = 1500(万円)

億万長者はとある"神話"を無視している

億万長者が無視すべき神話は、以下のような神話である。
多くの人物は下記の神話を信じるあまり、富を築くうえで誤った認識と判断を犯してしまう。

・富を築ける人は特定のグループに属している
肌色や民族性によって富を築く可能性は左右されない。

・収入は富である
収入が増えるたびに支出を増やすこともできるが、富は蓄積しない。

・何に乗り、何を買い、何を着ているかで人の財産を判断することができる
筆者が調査したデータでは、億万長者(実収入が年25万ドル以上)は高級品をあまり買わない傾向が示された。
逆に、"小金持ち(実収入が年5-10万ドル)"は億万長者の2.5倍以上高級品を買う傾向が示された。

・「お金持ち」は公平な分担金を支払わない
世界有数の億万長者であるウォーレンバフェット氏を例にとる。
確かに、彼の当時の資産額(460億ドル、約4兆円)に対してたったの0.087%相当しか税金を納めておらず、公平な分担金を支払わないというのは理解できる。しかし、額面でいえば膨大な税金を政府に支払っている。2010年は3981万4748ドル、当時のドル円レート(約88円)にして約35億円を支払った。
加えて、彼は自分の資産の多くを寄付に充てている。
具体的には、175億ドルをゲイツ・ファウンデーションに寄付した他、保有株式30億ドル分を子どもたちの財団に寄付している。
筆者はウォーレンバフェット氏の寄付行動について「お金を効率的に分配することに関しては、連邦政府より見識ある慈善団体の方が優れたパフォーマンスを発揮すると考えている」と結論づけている。彼らの崇高な目的を果たすための結論は、連邦政府より慈善団体へお金を渡すことなのだろう。

・お金持ちになれないのなら、お金持ちを非難しても構わない
他人を非難したところで、自らの資産が増えることはない。
そうしたことに使う時間があるなら、なぜ自分のキャリアを充実させようとしたり、投資判断を精緻化するための情報を集めようとしないのだろうか?

・自力では成功できない
いいかえれば、親から膨大な財産を受け継ぐか宝くじで当たらなければ億万長者になれないという思い込みである。
筆者の調査では、アメリカの億万長者の少なくとも80%はたたき上げで資産を築いたという。

・お金持ちは邪悪だ
アメリカには億万長者が500-1000万世帯存在する。彼らの中には邪悪な人がいることは間違いない。しかし、裕福な人の多くは邪悪な方法ではなく、昔ながらの方法で億万長者になっている。

富に対する影響

億万長者の性格を築く基盤に「家庭の安定」は強力に作用するとわかっている。彼らの75%ほどは「自分が成功できるよう、両親が励ましてくれた」経験を持つと回答している。
また、具体的に以下のような教育を受けたことを明かしている。

  • 貯金の推奨

  • 勤労し労働の対価を受け取ること(アルバイト等)の推奨

  • 自分の使うモノを自分で買わせる

  • 消費にまつわる責任の教育

  • モノを大切にすること

消費する自由

・出費は自宅から始まる
近所の人たちが裕福であるほど、ありとあらゆる製品やサービスに費やすお金が多くなる。これは、自分を周囲と比較してみてしまうヒトとしての性質が作用している。

・居住地の選定
億万長者の多くが「質の良い公立学校が近くにあった」ことを挙げている。
教育は子どもの成長を左右する他、支出の面でも影響度は大きい。

・自動車の選定
自動車は消費の究極の試金石である。
億万長者は高級車を購入している印象があるが、億万長者が最近購入した車の値段の中央値は35000ドルである。
安価ではないが、高級車というほどでもない。彼らは車をステータスシンボルとして買うのではなく、壊れにくく安心して乗れる車を適正価格で買うのである。

富を築くための力

億万長者はお金を大切にするが、その要素として「自らは世帯のCFOだ」という認識で日常を過ごしていることも見逃せない。
世帯のCFOの役割は多岐にわたるが、その根本は「自分たちで自分の資産を管理する」という気持ちが高いことにある。
知性がわれわれを豊かにするわけではない
億万長者のSAT(米国の大学進学標準テスト、日本でいう大学入学共通テスト)の平均得点率は65.8%である。パーセンタイルに換算するとおよそ70であり、上位3割程度の学力を持っている。
平均より高いのは事実だが、特別優れていなければ億万長者になれないというのは誤りである。

「誠実性」は富を築くために最も大事な特性

業績や社員定着の観点で相関が強い個人特性として「誠実性」が挙げられる。
この特性は下記のように細分化される。

  • 勤勉さ

  • 美徳

  • 自制心

  • 順序

  • 責任感

  • 伝統主義

これらの要素は経済管理に優れた人の特性と類似している。

富のコンピテンシー

  • 規律に従う

  • レジリエンスが高い

  • 忍耐強さ

従業員としての仕事と起業してからの仕事、どちらでも切羽詰まる場面はある。これを乗り越えるためにはレジリエンスと忍耐強さが必要である。

時間の使い方
億万長者は「ビジネス記事を読む」「自らのスキルアップ」「読書する」に多くの時間を使う一方、蓄財劣等層は「ソーシャルメディアの閲覧」「ゲーム」に多くの時間を使う。
人生の楽しみとしてゲームに時間を使うのは否定しないが、その一部でも自らの成長に使ったなら経済的に豊かになる道筋は見える。

ステータスシンボルとしての大学?
億万長者の大半は大卒であるが、名門大学に進学した全員が億万長者になれるわけではない。米国の名門大学へ通い、卒業するためには多額の授業料が必要である。平均的には年間4万ドル、高い大学だと年間7万ドルほどかかる。
しかし、大学選択の際に「ステータスシンボル」を選ぶあまり大きな負債を抱えるような選択をする人もいる。名門大学での学びやステータスシンボルを活かす計画がない限りは、そうした選択は狂気の沙汰といえよう。

※小池考察
日本円にして年間600-1000万円ほどかかることを考えると、公立の大学なら年間100万円程度しか授業料がかからない日本の教育環境はかなりコスパが良いと考えられる

適切なキャリア選択こそ億万長者への第一歩

「投資こそ億万長者への道」というメディアの記事をよく見かける。
たしかに、億万長者のほとんどは適切な投資をしている。
しかし、投資の元資金が作れなければそのスタートさえできないのである。
一般的には元資金が多ければそれだけ投資の幅は広がるため、成功率は上がる。小資金から成りあがるケースもあるが、それは投資に生活の多くを捧げている人物だったり、すでに投資スキルがある人物が小資金からなりあがるといった特殊なケースである。

インターンシップ
ある分野の業務を知るためにインターンシップは効果的である。特に、インターンシップによって下記の理解が深まる。
・その分野に興味が持てるか
・その分野で生き残ることができるか
・その分野が好きか
人生の早い段階で当該分野における興味と能力について知ることができるのは、よりよい選択を導く礎となるだろう。

キャリアと人生の調和
億万長者は、キャリアと人生が調和している。
もう少し詳しくいうと、環境・市場といった外部要因にスキル・能力・特性といった内部要因を合わせているのである。よりよい収入を得るために、より儲かる市場を探してそこで活躍するためのスキルセットを磨くのである。

「自営業」として、会社に頼らない選択も持つ
キャリアを作る中で「どうしてもこの会社で働きたくないが、働かないと生活できない」という思いが芽生えることがある。こうした状況を端的にいうと「"生活のために働く必要がある"罠にはまっている」と表現できる。
この「罠」を回避するために必要なのは「いずれ自営業になる」と決断しておくことである。自営業に必要な2要素は下記である。
・ライフスタイルに余裕を持っておく
・自営業になるための仕事のチャンスを開拓する

投資の方法

億万長者の多くは標準的な投資を行っている。
その一例は、下記の通りである。

  • 退職金口座の資金:30%

  • 投資用不動産:33%

  • 居住用不動産:20%

  • 有価証券(株式・債券etc):10%

  • 現金:5-10%

ウォーレンバフェットの金言
「私はいつも、コストの低いS&P500インデックスファンドをおすすめしている」

ピーターリンチの方法論
彼も金融界隈では非常に高名なであり、多くの伝説を残した人物である。
彼は10倍株を意味する「テンバガー」という金融用語を生み出した人物でもある。
特に一般投資家が賢明な株式投資判断をする上での知見を多く持っており、その一部が下記のとおりである。

  • 自分が知っているものに投資すること。

  • 企業の倹約ぶりを探ること。投資予定の会社が会社の内装に大金をかけているようではだめである。

  • 素人投資家は、大衆を無視することで市場に打ち勝つことができる。

大金を運用する組織のエキゾチックな投資傾向
大金を運用する組織ほどエキゾチックな投資をしがちである。
顕著な例は、ハーバード大学寄付基金の運用である。
2016年度のハーバード大学寄付基金の運用成績はマイナス2%であった。
同時期のS&P500指数は横ばい(0%)であったため、世界でもとびきりの秀才が集まって運用したにもかかわらず指数に完敗したのである。
彼らの投資先には標準的なものも含まれていたが、相当な割合でエキゾチックな投資先があった。具体的には、ベンチャーキャピタル・プライベートエクイティ・インフラ・私募不動産・森林・ヘッジファンドといったものである。

成功する投資家の特徴

  • 分散化されたポートフォリオを持つ

  • 頻繁な取引はしない

  • 銘柄は慎重に選ぶか、シンプルなインデックス商品を選ぶ

経済的成功を収めるための結論

  • 収入と富を混同しないこと。

  • 富に関する神話を無視すること。

  • お金持ちそうに見える人と本当の金持ちを見極めて人付き合いすること。

  • 消費者として優れた判断を下し続けること。

  • お金を大切にする行動を取ること。

  • 投資行動を改善すること。

本当の金持ちは、自分の直接的な資産を大っぴらに明らかにするようなことはしない。本当の金持ちは、自らの成功のために規律と情熱を持って生活する人である。

お金を大切にする行動とは、いかに集約される。

  • 質素であること

  • 経済的な結果に責任を持つこと

  • 知識に基づいて自信を持って判断すること

この本を読んで学んだこと

この本では「浪費をせず規律を持った生活を続けることが億万長者への第一歩」ということを学んだ。
自分が行っていた行動はおそらく正しいと判断できた。強いていうなら、より収入の高いポジションに就くことや成長性のある株式会社の調査をもっと行って資産の利回りを高めたりすることが挙げられる。

この本に書いてあることは非常に基本的な内容であり、斬新な手法や突飛な行動などは記載されていない。あえて言うなら「つまらない」内容である。
しかし、億万長者になる王道を記載した本に対する「つまらない」という感想はある種の誉め言葉なのではと個人的に思っている。

世界三大投資家のひとりであるジョージ・ソロスの名言のひとつに下記がある。

もし投資が面白くて、楽しいのならば、おそらくお金を作り出すことは出来ない。良い投資というのは退屈なものなのだよ。成功すれば、人は自分の考えに関心を示してくれるはず。

ジョージ・ソロス

面白い投資というのは、端的にいえば「一攫千金」が狙えるかわりに非常に高リスクな商品・企業への投資である。たしかに、非常に低確率で一攫千金となることはある。しかし、そのほとんどが詐欺であったり中身のないものであったりするものである。
仮に一度成功したとしても、そうした手法に再現性はないため、面白い投資を続ける限りはどこかですべてを失うときが来るのである。

こうして点を踏まえて「つまらない投資」に目を向ける。
インデックスファンドへの積立投資を例にあげれば、年平均利回りは7.3%である(全世界株式、1988~2022年のデータより)。仮に今後もこの利回りで推移するとして、100万円を買っても最初の1年間で73000円しか増えない。
"面白い投資"の「1日で2倍!」「一年後には100倍!」といった刺激性の高い文句と比べれば、はるかに「つまらない」。しかし、この手法は誰でもでき、再現性があり、資産額が増えても機能する手法である。

野球のレジェンドであるイチロー選手も「小さなことを積み重ねることが、とんでもないところへ行くただ一つの道」という言葉を残しているように、どの世界においても成功を掴めるのは「つまらないが成功できる」ことを繰り返しできる人なのだと、あらためて思った。


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