シンニホン感想文:この本にはイワカンの栞を挟んでおこう
ぼくが「シン・ニホン公式アンバサダー」に応募した理由
『シン・ニホン』。壮大なスケールと哲学で書かれた国家論だ。
ぼくは現在、岩手県陸前高田市で市議会議員を務めている。
生まれ育ちは東京だが、震災をきっかけに、NPOの活動で陸前高田に出会い、通い続けた。
大学院の修了後に移住し、昨年当選させていただいた。
ぼくが現在27歳で、次に若い方が50歳。平均年齢は58歳の本市議会。
先輩議員の方々に学ぶものは大いにある一方、若い議員が極端に少ない地方議会あるあるの中で(20代議員は0.6%だそうな)
若い世代の自分だからこその発言、提言をしていくんだと青い炎を燃やす日々だ。
あの夏から1年半が経ちました。
そんなぼくにとってシン・ニホン及び、勉強会には
・「(特にデジタル分野における)新しいもの・世の中の流れ」をちゃんと学びたい
・国家を語るような大きなスケール、ビジョンを自分の中に持ちたい
という2つの期待があり応募した。
シン・ニホン、ここがおもしろい
自分の目指す世界、社会の明確なビジョンをつかみたい。そのビジョンに到達するための納得感のある道筋を語れるようになりたい。そんな想いで読んだ。
すべて音読した。一言一句、見逃さないように。ブツブツ音読し、線を引き、「ほお、ここがつながるのか」「ん?このグラフはどういう意味だ?」などと言いながら読み進めた。
こんな読み方はなかなかしない。時間がかかる。
が、『シン・ニホン』に関してはしっかりと精読したいと思った。
時代・歴史の区切りごとで進む論旨。これでもか、と他国との比較データを見せつけられ、日本という国に健全な危機感を持つようになった。
特に最終章の風の谷構想は秀逸だ。
地方創生、まちづくりに携わる方々は、風の谷構想に自分たちの取り組みに太鼓判を押された感覚を覚えるのではないだろうか。
「キミは何をしたいの?よくわからない」
「地方創生とか言ってるけど、結局消滅する自治体も多いわけでしょ。延命治療をして意味あるの?」
これは、ぼくが今までに周りから投げかけられたものだ。
NPOを通じて、東京から陸前高田に移住、まちづくりの世界に飛び込んだぼくにはうまく答えられなかった問いがたくさんあった。
自分では納得していても、人を説得できなかった。
信念はあれど自信はなかった。
安宅さんのようなデジタル系の人(という言い方も微妙だが笑)がどんなロジックでデータで、残すべき未来を語るのか。
緻密に論が構築された1〜5章を読んで、迎えた最終章。
期待が高まる。
が、
その答えは「少年」だった。
安宅さん:「地方の豊かさを、残したいから残したい。だってそうじゃない?」
ぼく:あれ・・・?
ぼくはお会いしたことはまだないが、安宅さんはきっと少年の目をしてそう語っているのだろう。
本をひたすら音読する中で、1〜5章は安宅さんの講義を受けている感覚だったが、最終章では急に少年と対話しているような気分になった。
「それでさ!ナウシカの『風の谷』みたいな感じの場所をつくりたいんだよ。ブレードランナーみたいになったらいやだもん。そんな未来だったらおもしろいだろうなあ」
データや、哲学、思想、各界の第一人者たちとの対話を織り交ぜて書いてはあるものの、伝わってきたのはこういうことだった。
爽快だった
まちづくりに携わる人も、「社会をよくしたい」人にとっても、本書が何度も何度も語ってきた「未来への意志」にぐっと背中を押された感覚なのではないだろうか。
心から共感し、ぼくは、ぼくたちの目指したい未来に向かって進んで行こうと思った。
ここまでの文章でもわかる通り、僕の考え方にもシン・ニホン的思考が相当滲み出ている。大好きだ。
出会えてよかった。
我が家から見える景色。風の谷を育めるのか
イワカン
ただ、
ぼくはこの本にイワカンという栞をしっかり挟んでおこうと思う。
アンバサダーという立場において、自身の違和感を大切にしながら、多くの方と議論や対話をしていきたいからだ。
イワカン①「競争というパラダイム」で書かれた論ではないだろうか
『シン・ニホン』にはデータが随所に折り込まれ、日本の国際競争力の低下を嘆き、どうしたら勝てるのかが書かれている。その根底にあるのは「競争」の論理だ、とぼくは受け取った。
協調、共創などが強調される昨今において、「最新の技術とデータを駆使した『昭和』な発想」とも言えるのではないか。
イワカン②個人の幸福はどうなるのか
(『シン・ニホン』というタイトルにある通り、日本国はどうあるべきかという本なので、そもそも「個人の幸せはどうなるのか」という違和感自体が見当違いなのかもしれないが)「個人の幸せを社会的合意としているかどうか」は人口減少・成熟社会を生きる日本にとって向き合わなければいけない問いだと思う。①にも通ずるが、未来の日本人の幸せはどうなるのか。という「?」が回収し切れてなかったように思う。
イワカン③安宅さんが言うから、風の谷が正当化されるわけでも地方創生が正当化されるわけでもない
これは至極当然なのだが、自分に対して今一度しっかり伝えておきたい。
日本全国でまちづくりに取り組む方々が本当はそれぞれ少しずつ違う、揃える必要もない目的で活動をしていらっしゃると思う。しかし、本書のヒットと、コロナ禍を好機として、みんなが地方分散を、我が物顔で語るのは「嫌だな」と思う。きっと地方への機運は高まっていくだろうが、真にそれぞれの地で、当初思い描いた取り組みができると良い。その個性が、多様で先進的な地方社会、ひいては日本社会に繋がっていくのだろう。
対話ツールとしての『シン・ニホン』
いくつか、自分なりのイワカンを並べてみた。読む人によっては、このように感じなかったりするかもしれない。
本書を大好きな上で、関係者の皆様にリスペクトを持った上で、あえて、あえて書かせていただいた。
ただ、あえて違和感を書いてみることで、自身の中で大切にしたいことの輪郭が少し明確になった気はする。
そういった意味で
・「(特にデジタル分野における)新しいもの・世の中の流れ」をちゃんと学びたい
・国家を語るような大きなスケール、ビジョンを自分の中に持ちたい→考えられるようになりたい
の2点は満たせたと感じる。
『シン・ニホン』は絶対的な答えが書かれた「聖書」ではない。一人ひとりがこれからの日本を構想するための素材がちりばめられた「対話のツール」だ。
だからアンバサダー養成講座では、ディスカッションだけでなくファシリテーション研修に重きが置かれているのだ。
これだけみっちり読み、仲間とも勉強した本だからこそ
イワカンをしっかり栞として挟み込み
何度でも読もうと思う。
元気をもらいたい時は最終章へ。そこには少年が待っている。
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