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もっともらしい人たち ~天使の申し子、さやエル~

今朝、夢に懐かしい人が出てきた
物語も途中に、目覚めてしまって
もうちょっと会っていたかった

なので、トイレでおしっこしながら
夢を記憶にセットした

さやエル、セット完了

これしないと、おしっこの後
もう忘れちゃってて思い出せないんだよね

頭に輪っかが刺さってる


俺が好きな人種の中に
もっとも『らしい』人、というのがある

俺の文才能力で、この人種を
フィット感よく伝えられるだろうか

もっともらしい人の特徴は
一見、人間性に優れ
社会の中で順応して暮らしている
ように見えるんだけれど
実は、ひとつふたつ
大切なものが欠落しているばっかりに
いつも手痛い目に合ってしまう人たちのことだ

もっともらしい例題
お花の先生、貴子さん、55歳

おち会ったのは文京区にある公民館
公民館とはいえ5階建てで
バスケットコートもあるくらいの規模だから
様々な催し物が開催されている人気の場所だ

貴子は、マッシュルームカットに
丸顔にくりくりした目が可愛らしく見える
背丈は小さいが、背筋がピッとしており
生成りのブラウスが、上品な印象を与えていた

そして彼女は華道〇〇流の先生らしい
館内のあちこちに飾られている花を見て

あれは違う、あれはなってないと言い
右手を顔の前、真ん中、右、左と
しなりのある手刀を3本切って

これが基本なの
と、花の流儀を俺たちに教えてくれた

声も腹から出ていて様になっている
これはホンモノだ、みんなそう思った

すると、このグループのリーダーが

貴子さん、何度も言ってますが
お花の話よりも
今日も30分遅刻です
みんなに迷惑がかかってると分かってますか

と、苛立ちを顕わにして言った

俺も引率側なので
この光景を何度も見ていたから知っていた

そう、彼女はこんなにもっともらしいのに
どうしても時間を守れない
という致命的な機能不全があるため
これまでも、結婚相手の両親に家を追い出され
仕事もすぐクビになり
今では実家で半引きこもり生活

お花の先生、貴子は
俺の愛して止まない
もっとも『らしい』人、そのものだった

お分かり頂けるだろうか
一見、ごくごく普通の人で
むしろ、なんか素敵、くらいの
気持ちにさせる時もあるのに
仲が深まると、著しい浮草感が露呈する

これが、俺の愛する
もっとも『らしい』人、なのだ

こういう逸材は近年増えてる傾向にあるが
まだまだマイノリティの範疇なので
出会ったら、逃してはならない
しっかり味わい尽くす必要があるのだ

すべてを愛しているわ


さて、熱が入って、長くなり過ぎた(笑)
話を戻そう、今朝の夢に出てきたのは
その、もっとも『らしい』人

当時のまま、麗しきその存在
人類愛に目覚めた大天使、さやエルさん、35歳(当時)

彼女は、2児のママなんだけど
旦那がめちゃくちゃ仕事が忙しくて
家を留守にしがちな専業主婦だった

美人で瘦せ型、緩いカーブのあるパーマをかけ
ふんわりしたワンピースの袖からは
アクアマリンのブレスレットが見え隠れした

とてもセンスのいい大人の女性
というのが、第一印象だった

俺の家の飯会に、友人の友人として
参加することになったんだけれど

彼女は初対面なのに話が上手で
その内容もビビッドに富んでいたから
友人たちとはすぐに打ち解けた

彼女は身の上話が得意で
今まで両親に愛されて
友達もたくさんいて
困らない程度にモテて
旦那も優しくて
子どもたちは天使だと言った

なんて明朗な人生のダイジェスト

そして、この満たされた自分を
世界平和のために何かしらの形で貢献できないか
日々、考えてる最中で
みんなにどんな貢献ができるか尋ねてきた

すると他の友人たちが

金ありそうだから
ピースボートがいいんじゃね?

あれあれ、豊平川のゴミ拾いボランティア
募集してる団体、わたし知ってるわよ
紹介しようか?

友人たちが世界に貢献する具体案を出すが
その辺は、彼女にとってどうでもいいのか
彼女の世界基準に合ってなかったのか
しなやかに笑顔で無視した

みんな無条件の愛って、知ってる?
母が子を思うのは無条件の愛なのよ
この無条件の愛を伝えたいわ

彼女は、これこそ世界基準よね
と言わんばかりに透明感のある声で言った

そうなん? 老後の心配だと思ってた

うちは家にいるからお金入れてもらってる
2万円ポッチだけど、いくらかはもらわないと
割に合わないわよね

何だろう、彼女といると
我々は悪魔の手下みたいな気分になる

彼女は自らまばゆい光を発し
色とりどりの花の精霊たちが宙を舞って
我々を浄化してくれているようだ

我々の身体から
硬く石灰化した皮膚とともに邪念が浮き上がり
屋根を超え、空を超え、光へと吸収されてゆく

何だか、そんな気分になるのはなぜだろう

このあたりでなんだかキナ臭いな、と
勘づき始めるのだが
いかんせん、決定打がない

そして彼女は
思う存分、自分の世界基準を話せて
気持ちが良くなり過ぎたのだろう

愛の象徴、ラファエルって大天使がいてね
上品なピンク色なの
私ピンク色が大好き
だから、私の名前が、さやかで
さやエルって自分のことを呼んでるのよ

。。。キタ。。。

キタキタキタキタキタぁぁぁぁぁー

無性に、愛したくなるの

さやエル

なぁに?

さやぁエル

なぁぁぁに?

長男がトイレに行きたいと
さやエルの袖を引っ張っているが
さやエルの聖域には、うんこは存在しない

我慢しなさい

さやエル

なぁに?

さやぁエル

なぁぁぁに?

次男がさやエルの鞄から
紙パンツを取り出して遊んでいる
でも、さやエルの聖域に、紙パンツは存在しない

しまいなさい

さやエル

なぁに?

さやぁエル

なぁぁぁに?

友人のひとりが見かねて
長男をトイレに連れて行ったその時
長男が後ろを向いてこう言った

ママじゃなきゃヤダ

もうひとりの友人は
肩ががくがく震えだしてる
もう笑いを隠せず、口ぶえを切った

さやエルちゃん、近くからいこ!
俺も息子を無条件で愛してみるから
まずは長男の便所だ

友人は、無条件の愛など
出来もしないことを言って
さやエルを何とか現実に戻そうとした

そ、そうね、世界って言ってもほら
けっこう幅が広いから
まずは、札幌近郊で探しましょうよ

もう一人の友人は
両手を胸の前にだし、距離を測るように
広げたり縮めたりして言った

太ったペンギンのようだ

さやエルを連れてきた友人も
バツが悪そうな顔して

あんたベルバラみたいなこと言ってないで
〇〇のオムツ取り替えたら?

そう言って
次男坊が振り回している紙パンツを指さした

至極、ごもっともだ
とみんなで頷いた

さやエルは、んもぉ~と
おもちゃを取られた子供のような顔して
次男の紙パンツを替えに席を立ったのだった

頭の中の抽象度が欠落している
天使の申し子、さやエル

そんな彼女はほどなくして
彼女の世界基準を我々に見せつけてくれた

波動をあがるらしい
ひとりカラオケの模様をアップしたり

気が向いた日にしかお目にかかれない
スピ本丸写し無条件の愛
一言メッセージを配信しだしたのだ

凄くいい、さやエル
心の表層が凄く癒される
俺はそんな君が大好きだ

感動した俺は、3か月くらい
『いいね』を送った

わたしも、大好きよ

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