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アトラスダムのチョコ

 学術の都、アトラスダム(オクトラ1)。温暖なフラットランド地方ウォルド王国の王都であるこの町は王立の学院や図書館があり、著名な学者の講義も受けられる機会が多く、学問を志す者にとっては夢のような環境が整っている。

 城下町のここで出会ったのは、学院の生徒たちに愛されているスティックチョコだ。
 力を込めたら折れてしまいそうなほど細いスティックチョコはポキポキと歯ざわりがよく、舌の上に乗れば体温ですっと溶け、心地いい苦味と甘味が広がる。気分転換がしたいときにちょうどいい刺激だった。

 この細いチョコはどうやって作っているのかと店で問うたら、意外とすんなり教えてもらえた。大理石の上でチョコを伸ばし、櫛のような道具を滑らせて細く分けているそうだ。これは……作り方が分かっても、真似するのは難しそうだ。そりゃあすんなり教えてくれるわけである。

 ところで、アトラスダム王立図書館といえば……そう、あれだ。学者ならば一度は耳にしたことがある伝説の書物、『辺獄の書』が収蔵されているという噂だ。
 思い切って確認してみたところ、本当に収蔵されているとのこと。一目だけでも拝みたいと思ったのだが、残念ながら先客が閲覧中であった。ああ、見てみたかった。

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