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5.鉄道大国スイス(第5章.旅先で考えた乗り物のこと)

 「スイスといえば鉄道。鉄道と言えばスイス」と言うくらいスイスの鉄道は優れている。縦横無尽に張り巡らされた鉄道網。ほとんど遅延が無いシステム。そして車窓からの風景が美しい観光列車の整備。どれをとっても優れているのだ。そんな鉄道に乗ろうと、私もスイスを旅してみた。

 昨夜はチューリッヒで1泊した。そして宿から歩いて10分程の距離にあるチューリッヒ中央駅に向かった。ホームにはこれから乗るルツェルン行きの急行列車が入線してきたところだ。私は列車に乗り込んだ。いよいよ出発である。

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 9:04、列車はチューリッヒを出発した。行き先はまずはルツェルンである。実は今回、少し奮発して1等車を選んでみた(インターネットで予約済みである)。いざ1等車に乗ってみると快適そのものだ。リクライニングの椅子は深々と座ることが出来るし、座席の前にテーブルもある。2階席なので、車窓から素晴らしい景色が見渡せる。

 そんな汽車旅も55分程。ルツェルンに到着したのは9:49である。ここで「ゴールデン・パス」と呼ばれる観光列車に乗り換えて、今日の目的地インターラーケンに向かう。乗り換え時間は15分程だ。

 そして10:05、いよいよゴールデン・パスはルツェルンを発車した。この列車はルツェルン〜インターラーケン〜ツヴァイジンメン〜モントルーという三つの路線を乗り継いでいく人気の観光列車だ。私はインターラーケンで下車するが、インターラーケンから先は金色の車両が特徴的なパノラマカーが連結されているという。人気観光列車のため予約したほうがいいと聞いていたので、私はあらかじめインターネットで座席を予約しておいた。しかも、せっかくの観光列車なので1等車を予約した。結果は大正解で、窓が大きいため素晴らしい景色が堪能出来る。

 緑の草原に放牧された牛の群れ…澄み渡る色を湛えた湖の数々…美しい山と麓に点在する民家…これらが車窓に映し出される。これ程美しい風景を見ながら汽車旅を楽しんだことはかつてあっただろうか?この列車は旅(乗車)そのものを楽しむ何かがあるのだ。

 そしてついにルツェルンから2時間弱、11:55にインターラーケン・オスト(「オスト」とは「東」の意。つまり「東インターラーケン駅」)に到着した。山の麓にある駅舎。その駅舎の上には青空が広がっていた。

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 スイスの鉄道に乗ってみて、やはり「鉄道大国」の名に恥じないものがあると私は感じた。運行本数が多く、時間に正確、清潔な列車、親切なスタッフ、そして旅行者にも分かりやすい合理的な案内表示など、まさに世界一の鉄道大国である。私はインターラーケンの後、首都ベルンにも寄ったが、少ない日数であちこち見て回る今回の私のような者にとっては予定が立てやすく旅がしやすいのだ。

 では、何故スイスが鉄道大国なのか、と考えてみる。これはあくまでも私の推測であるが、やはり鉄道が自動車に比べて自然に優しい乗り物であるからなのではないかと思う。スイスは登山鉄道も多く走り、標高3,000mくらいの所でも平気で走る。山の自然を大切に守りたいスイスでは、山に鉄道を通して自然との共生を図ったほうが理にかなっているのかもしれない。自然との共生…この言葉はスイスにとって太古の昔から続く永遠のテーマなのだろう。

 話は少しそれるが、スイス国内で話されているドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語。これらもそれぞれの言語が上手く共生している。スイスの鉄道で旅して見えたきたもの…それは、あらゆるものと共生することは多くの人や物に対して優しくなれる…そんなことをスイスからヒントを得たような気がする。そして私はふと、故郷の山を思い出してみた。

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これで「第5章.旅先で考えた乗り物のこと」は終わりです。

次回から「第6章.旅先で考えた社会の問題」が始まります。

内容は以下の通りです。

1.チュニジアで起きた二つの事件

2.チュニジアのフレンドリーな人々

3.国境沿いの街にて

4.言語の妥協

5.言葉が通じなくても

6.日本人が海外で日本人に出会うということ

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