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4.世界の米料理(第7章.旅先で考えた食することの楽しみ①)

 ポルトガル人は何故か日本人と食の好みが合うようだ。イワシ、干鱈などの魚介類。それから米料理もその一つだろう。米が主食と自認する日本人が西洋の米料理を食する…何となく面白そうだと思い、私はポルトガルを訪れた際、「arroz(アロース)」という米料理を食べてみることにした。

 入った店は首都リスボンの旧市街にある庶民的なレストラン。中に入ると、壁一面がアズレージョと呼ばれる絵タイルで埋め尽くされていた。内装だけでも伝統的なポルトガルの雰囲気で、と言っても肩肘張らない雰囲気で、それだけで気に入ってしまった。

 さて、さっそく米料理を注文してみる。頼んだものは「arroz de marisco」。「marisco」は恐らく海の幸だろうと想像して頼んだ。すると、想像通り、魚介類をふんだんに使ったリゾットが出てきた。そう、「arroz」とはいわゆるリゾットであるみたいだ。味はもちろん、すこぶる美味しい。魚介類の身が美味しいだけでなく、ダシがリゾットによく浸みているのだ。ポルトガル人にとっても米料理は欠かせない主食であるのだと、この料理を味わってそう実感した。

 思えば米料理は世界各国にある。ポルトガルと同じようにイタリアにはリゾットがある。そのイタリアとアドリア海を挟んで反対側のクロアチアにもやっぱりリゾットはある。イタリアと近いこともあってイタリア料理がかなり浸透している印象を受けた。私が行ったドゥブロヴニクでも港の近くのレストランでは海の幸のリゾットが名物だった。

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 また、ポルトガルのお隣スペインでもお馴染みパエリアがある。私はスペインへは行ったことはないが、パエリアは何故かオランダとフランスで食べた。

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 そして、米と言えば、何と言ってもアジアである。

 台湾では、日本とほぼ変わらない炊きたての白米を麻婆豆腐のお供に頂いた。タイとベトナムも言わずと知れた米大国で、長粒種を炊いたり炒めたりと調理方法は幅広い。

 シンガポールやマレーシアではお馴染みのチキンライスがある。鶏肉の茹で汁を使って炊いたご飯は中華系とマレー系がミックスされたような独特の味わいがある。私が食べたのはシンガポールのチャイナタウン。フードコートの中にある店で食べた。お好みでチリソースを掛けて食せば、南国らしいスパイシーな味わいになる。

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 それから、米料理で特筆すべきなのはラオスである。ラオスの米は日本のようなうるち米ではなく、何と、もち米なのである。カオ・ニャオと言って、まさにラオス人にとってのソウルフードだ。蒸したもち米を竹で編んだおひつに入れて食卓に上る。少し粘り気のあるもち米は、同じ米でもうるち米に慣れ親しんだ我々日本人は最初は面食らうかもしれないが、ラオスの人達にとってはもち米がスタンダードなのである。メコン川流域の肥沃な土地とモンスーン気候がもたらした自然の恵み。それらはラオスの人達にとって、もち米を生んだ大切な文化である。

 我々日本人にとっての主食である米。主食だからこそ大切にしたい気持ちは当然ある。しかし、大切にしたい気持ちは日本人だけでなく、それぞれの国の人達にとっても当然ある。だから、私はそれぞれの食文化に対して敬意を払いたいと常々思っている。「やっぱり日本人は米だ」とか「日本以外の米は喰えない」とか…そんなこと、おこがましくて絶対に言えない。しかも、それを日本人が言うのは筋違いだ。だって、今まで述べてきたように、米料理は世界中どこにでもあるのだ。そして、それをそれぞれ大切に思っているのだ。

 スシは軽やかに国境を越え、今や世界中に浸透しつつある。それは恐らく、スシを受け入れた国の人達がそれぞれの国の文化を大切にしながらも、スシに敬意を払ってくれたからだと思う。そして、スシそのものが何処の文化に触れても、それを受け入れられる要素が十分あったからだと思う。私はそんなスシの軽やかさが、とても好きだ。

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これで「第7章.旅先で考えた食することの楽しみ①」は終わりです。

次回から「第8章.旅先で考えた食することの楽しみ②」が始まります。

内容は以下の通りです。

1.ウサギ料理

2.クスクスとカレー

3.トルコのごはん

4.パプリカの国

5.近未来的でレトロなオランダ

6.fishなメニュー

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