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6.fishなメニュー(第8章.旅先で考えた食することの楽しみ②)

 海に囲まれた島国で育った我々日本人は魚に対して相当思い入れがある。一つ一つの魚の種類を区別することはもちろん、稚魚と成長魚も別の名前を付けて区別する。それだけ日本人にとって魚は馴染みのあるものなのである。

 一方、マルタ。こちらは地中海に浮かぶ小さな島国。日本と同様に海に囲まれているので、魚介類は人々の生活にとって馴染み深いものである。

 そんなマルタを私も訪れたことがある。宿を取ったのは首都ヴァレッタからバスで20分位の所にあるセント・ジュリアンズという街である。ヴァレッタは城壁に囲まれた観光地のため、気軽に飲食出来る店を探すのは案外苦労する。その点、セント・ジュリアンズは繁華街もあり、安くて美味しいレストランが軒を連ねているのだ。そんな理由から私はセント・ジュリアンズに滞在するこに決めたのである。

 マルタ滞在最後の夜。私は投宿していたホテルのすぐ近くにあるレストランに入った。目の前には地中海が広がり絶好のロケーションだ。テラス席に陣取り、さざ波の音を聞きながら食事をすれば、いい気分に浸れること必至である。

 頼んだ料理はもちろん魚だ。何と言っても目の前が海。魚を食べて下さいといったロケーションである。しかし、メニューには「Grilled mix fishes…」と書かれてあるだけだ。この「mix」とは一体何なのだろう?日本人の我々にとってはサケなのかタラなのか、そこが重要なのであるが、「mix」で済まされてしまっては何とも味気ない。海に囲まれたマルタでさえこの有様だ。まあ、逆に言えば、我々日本人が魚に対してかなりこだわりがあるということを思い知ったという意味では面白い体験だった。

 ちなみに、この「mix」の魚は3種類あって、恐らく一つはシイラだろう。夏のマルタはシイラがよく捕れると聞いたことがあるので。そしてもう一つはマグロだろう。これは味で分かった。残るもう一つは最後まで分からなかった。だから何となく不安が残った。美味しかったのだからいいだろうと言われそうだが、それでも不安が残った。そう、この時ほど自分が魚にこだわる日本人であると痛感したことはなかった。

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魚のミックス・グリル(マルタのレストランにて)

 さてさて。「fish」しか書いていないメニューは海の魚に限ったことではない。川の魚もそうだ。それはラオスのルアンパバーンを訪れた時に体験した。ちなみにルアンパバーンば仏教寺院が数多く残る、メコン川に抱かれた美しい古都である。

 ここで私はとあるレストランに入った。頼んだものは魚の唐揚げである。メニューを見ると、やはり「fish」しか書いていない。恐らくこの魚は、ルアンパバーンという土地柄から考えると、メコン川で捕れたナマズか何かであると思う。日本の川魚ならアユ、ヤマメ、イワナなど尾頭付きがほとんどだが、唐揚げにされたのでは想像もつかない。また、日本ではそれぞれの川魚の味の違いを楽しむが、魚の種類が分からないと、やはり不安を覚える。「ナマズか何か」の「何か」が本当に訳の分からないものだったとしたら…と考えてしまう。でも、まあ美味しければいいか…。「何か」は「何か」のままにしておこう。

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魚の(たぶんナマズ)の唐揚げ(ルアンパバーンのレストラン)
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メコン川の風景

これで「第8章.旅先で考えた食することの楽しみ②」は終わりです。

次回から「第9章.旅先で考えた食することの楽しみ③」が始まります。

内容は以下の通りです。

1.パスティスで乾杯!

2.ムスリムたちの酒宴

3.ビールの美味しさ

4.ワインとビールと

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