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3.トルコのごはん(第8章.旅先で考えた食することの楽しみ②)

 トルコ料理はフランス料理、中国料理と共に世界三大料理の一つとされている。オスマン帝国が最も華やいでいた頃、宮廷料理として発展を遂げたのが今のトルコ料理の原型と言われている。

 そんなトルコ料理。最も名が知られているのが、やはりケバブだろう。ケバブとは要するに肉である。羊か鷄か、あるいは牛。豚は食べない(トルコはイスラム教のため)。それらの肉を炭火で焼く。ケバブの中ではドネル・ケバブが有名だろう。大きな肉の塊を回転させながら焼く。それを薄切りにして供される。食べ方は色々あるが、私が最初に入ったイスタンブールのレストランではチャパティ(白い薄切りのパン)に挟んで食べた。

 それからシシ・ケバブもお馴染みである。こちらは一言で言ってしまえば串焼きである。私はロカンタと呼ばれる大衆食堂で頂いた。カウンターのガラスケースに入っている串焼きを指で指して注文すれば、炭火で焼いてテーブルまで運んでくれる。

 それから、トルコの肉料理で忘れてはならないものがキョフテである。こちらはハンバーグのような肉団子のような…もちろん炭火で焼く。私がイスタンブールに到着した最初の晩。ホテルの近くにあるキョフテ専門店に足を運んだ。しかし、この店は有名店であるらしく、店に入るのに何と長い行列が出来ていた。「駄目か…この店は諦めるか…」と思って帰ろうとした時、この店がテイクアウトもやっていることに気付いた。そうか…どうせホテルの近くだし、部屋に持ち込んで食べるのも悪くないなと思い、キョフテをテイクアウトすることにした。

 部屋に戻り、さっそく買ってきたばかりのキョフテにかぶりつく。その瞬間、「うまい!」と思わず叫んでしまった。トルコに着いて、初めて口にしたトルコの味。部屋に持ち込んで食べたからかもしれないが、どことなく庶民の味が口いっぱいに広がった。

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 さて、トルコ料理と言えば肉であるが、もちろんトルコの人達は肉ばかり食べている訳ではない。どんなに肉好きの人だって飽きは来る。彼らは魚も好きなのだ。

 イスタンブールにエミノニュという界隈がある。この界隈にガラタ橋という大きな橋が架かっている。ちょうど旧市街と新市街を結ぶ橋だ。このガラタ橋周辺では釣りが盛んで、私が訪れた時も中高年の男達が釣り糸を垂れていた。

 そのすぐ近くには屋台が幾つも並んでいる。香ばしい匂いにつられて屋台を覗いてみると、サバサンドを売っていた。ちょうど昼時ということもあり、私も一つ買ってみた。

 サバサンドとは焼きたてのサバをレタスと一緒にフランスパンに挟んだ極めてシンプルなイスタンブールの名物である。サバとフランスパンという意外な組み合わせがクセになる一品だ。まさか、釣り人が釣ったばかりの魚をそのまま屋台に持ち込んでいる訳じゃないだろうが、釣り人、屋台、サバサンドというシチュエーションが庶民の心を捕らえて離さないような気がするのだ。トルコ料理は宮廷料理から発展したものであるが、最終的に人気の料理は、やはり庶民の味なのかもしれない。

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