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3.ビールの美味しさ(第9章.旅先で考えた食することの楽しみ③)

 2000年の時点で私が行った国と言えば、フランス、イギリス、ポルトガルの3ヶ国だ。実は私はこの3ヶ国でビールの美味しさを知ってしまったのだ。フランスとポルトガルはビールの国ではなくワインの国。このワインの国で飲んだビールが美味しかったのだ。ワインの国で飲んだビールが美味しいなら、ビールの国で飲むビールはもっと美味しいだろう。そう思うと、ビールの国へ行ってみたくなった。それで私は2007年にチェコ、2010年にドイツを訪れた。

 チェコは一人当たりのビールの消費量が世界第1位である。その名に恥じぬ事がある。それは私がチェコを訪れた2007年8月。首都プラハでとあるカフェに入った。ちょうど昼時。サンドイッチと、それからミネラルウォーターを頼もうとメニューを見た。すると何と水よりビールのほうが安いのである!これはビールを注文して下さい、と言っているようなものだ。だから(という訳でもないが…)私はもちろんビールを注文した。

 出てきたビールは本当に美味しかった。チェコのビールはピルスナーと呼ばれるタイプのものである。喉越し爽快でホップの苦みが効いている。このピルスナーとはラガー・タイプの1種で、世界で最も飲まれているタイプである。

 このピルスナーの語源となったのがまさにチェコのプルゼニュという街で生まれたプルゼニュスキー・プラズドロイという銘柄のビールだ。チェコではこの銘柄のビールを飲ませてくれるビアホールが実に多い。私が入ったプラハの昔ながらのビアホールもこの銘柄を出していた。

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チェスキー・クルムロフ(チェコ)の街並み

 また、チェコには有名な銘柄だけでなく、もちろん地ビールも多い。世界遺産にも登録されている川沿いの小さな街チェスキー・クルムロフにもエッゲンベルクという地ビールがあった。ライトとダークの2種類があって、どちらもとても美味しかった。

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ミュンヘン(ドイツ)のビアホール

 さて、所変わってドイツ。と言っても、私はドイツはミュンヘンしか訪れたことがないので、ビール大国ドイツを語るにはいささか力不足かもしれない。それでもミュンヘンはドイツの中でも有名なビールの街。まあ、よしとして頂きたい。

 ミュンヘンに到着したのは17:30頃。私はホテルに荷物を置くと、ビアホールに直行した。そのビアホールはドイツでも名の知れたツム・フランツィスカーナーという店だ。私はテーブルに着くなり、給仕係の女性にビールを頼んだ。しかし彼女は「ラガーにしますか?ヴァイツェンにしますか?」と聞いてきた。私はヴァイツェンというビールを当時は聞いたことがなかったので、試しにヴァイツェンとやらを頼んだみることにした。すると、その美味しさに驚いてしまった。

 ヴァイツェンとはラガー・タイプ(下面発酵)とは全く違う上面発酵のビールである。泡立ちまろやかで香りも高い。日本のビールはラガー・タイプが多いので、ヴァイツェンを飲んだ瞬間、私は新たな世界が広がったと感じたほどだ。

 世界にはまだまだ多くの種類のビールがある。「とりあえずビール」はビールに対して失礼である、と私は思う。せっかくだから、ビールの美味しさを思う存分楽しみたい。

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ヴァイツェン(ミュンヘンのビアホールにて)
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ソーセージとラガー(ミュンヘンのビアホールにて)


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