見出し画像

HIDE~23回忌の「次」とめぞん一刻~

5月2日は愛するHIDEの命日である。


この日はたいてい毎年ぴーかんに晴れることばかりで、でもちょっとだけ音楽の神様を呪ったりする。その日が来るたび、かつては毎年複雑な思いになっていたものだ。

昨年2020年は23回忌とのことでひとつのおおきな節目であったのだが…かのcovid-19騒ぎでイベントらしいイベントも無かったはずで、お墓参りも「来ないでね」とのヘッドワックスからの案内もあり、世間的にもごく静かに23回忌を迎えることとなった。

画像1

本当、三浦霊園のここだけはいつ行ってもお花でいっぱい。

そして翌年。今年、2021年の5月2日のこと。

僕はまるっきり命日のことを忘れていた。

ちょっと別のことをまる一日集中してやっていたせいもあったのだが……。いやいや待てよ、と。あれだけ好きだったHIDEの、メモリアルなタイミングをだよ?と。
これが23回忌を迎えるということか…。」と心底痛感し、また昔の人は、お坊さんはかくも良くできたシステムを組んだものだと心底関心した。お坊さんて、カウンセラーだよねやっぱり。

※仏教的には「弔い上げ」とされるのが33回忌であり、これがひとつの節目とするようなのだが、実際そこまでやるケースはまれで、やっても23回忌が区切りとなるケースが多いようである。同世代の親族は高齢化しているし、当人が亡くなったその年に生まれたひとは成人し、世の中を動かし始めているタイミングだ。その人達はリアルに故人のことを知らない時代になっていく。そうやって世界は回っているのよね。

いや…実は今年始まったことではない。白状するが、だいぶ前からそうだったのだ。13回忌を過ぎた頃からだろうか。

そう、そんな移り変わりと成長を描いた作品があるじゃないか。

めぞん一刻だ。

亡くなった旦那さんのことを墓前で、管理人さんは呟く。日々ちょっとずつ旦那さんのことを忘れている自分に気づいているのだ。

画像2

「きっといつか、私はあなたを深いところに沈めてしまう。」

「だけど、無理にあなたの想い出にしがみついているのは、もっとつらい…」

「自然に忘れる時が来ても…許してください。」

そうなのだ。僕らにとって、というか僕にとって青春時代の音楽は全てが彼らで埋め尽くされていた。エックスこそが全てであり、エックスで最も人気があったのがHIDEだった。最高にかっこよかったし、今でもそれは変わらない。ヴィジュアル系は彼に始まり、彼の死とともに(時代性もあり)終焉を迎えたとされる。ただ、言わずもがな、私たちは日々生きている。生きていればいろいろなことが起きる。楽しいことも辛いこともあるけど、楽しいはずの日々なのに、どこかで故人に囚われて生きているのは、とても悲しいこと。

僕は成人したし、21世紀になったし、学生から社会人になった。人並みに結婚ぽいことをしたし、離別するようなこともした。HIDEが亡くなって絶対にないと思っていたエックスが再結成するというミラクルが起きたし、初音ミクというムーヴメントが世界に発信された。HIDE、あなたが目をつけて面白がっていたコンピューターやインターネットの世界は、もうだいぶ前からこんな面白いことになってんぞ笑

そして日々新しい音楽が生まれている。貴方が旅立った1998年、一体誰が「フェス」なんてカルチャーが根付き、かつ乱立し、挙げ句COVID-19でフェスが開催できなくなるなんて思ったよ?誰がひとまわりしてBABYMETALというメタル×ダンスプロジェクトが世界を席巻するムーヴメントが起きるなんて思ったよ?

忘れるということ

5月2日を迎えるたびに「あ、そういえば今日はHIDEの命日じゃん」と当日しかもお昼頃に気づくようになった。で、あわててSNSにつぶやく。お墓参りなんて、混んでるからもともとこの日には絶対に行かないようにしているし。(言い忘れたが、私の実家は横須賀であり、三浦霊園も車でちょいと行ったところにあるからいつでも行けるのよ。)

こうやって、いつしか貴方のことをすっかり忘れてしまう日がくるのだろうか。そう思うとちょっとだけ悲しくなったりしていた。

そして、ついにその時が来た気がする。

画像3

でも、たとえそうだったとしても、彼の音楽はもう僕の心の一部だし、彼の音楽に影響を受けたアーティストが日々自分たちの音楽を生み出している。そこには彼の音楽が継承されている。何より、彼は最初からエックスだけを聴け!なんてみみっちいこと言っていなかったしね。むしろ「良いと思った音楽、新しい音楽、どんどん聴けよー」って。

好き嫌いせず、先入感なく、様々な音楽を聞いて良いんだと思わせてくれたのは、他でもない彼だ。彼のおかげで邦外問わず様々な音楽を積極的に聴くようになり、より広い世界へ旅立つことができた自分。結果、実に様々な良い音楽に出会うことができた。多くの良き人との出会いもたくさんあった。貴方はいつしか「影響を受けたアーティスト」の一人となり、ごくたまに聴く「懐かしのあの曲」カテゴリーに含まれるようになった。うまく言えないけど、「忘れたけど、忘れたわけじゃない」という存在。

これが「23回忌」を迎えるということなんだね。

でも、ありがとうHIDE。忘れちゃうけど、忘れないよ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?