幸福の木
オフィスに幸福の木がある。席の移動があり、なんとなく面倒をみることになった。
1.5メートルぐらいの高さで、直径3センチぐらいのひょろっとした幹で、てっぺんだけに40〜50センチの細長い葉が10枚ほどついている。
幹をつかむと、からからで空洞で、茎と呼ぶことにする。葉は元気だ。鉢の土が少なくなって、ひょろっとした茎はふらふらと揺れる。
時々水だけはやっていた。根も緩いのか、だんだん傾いてくる。まあ少し土を足してやるかと、100円ショップで、ころころとした花の土を買ってきて加え、棒でならしてやった。
しばらくたったある朝、出勤するとその木が見えない。席まで来てよく見ると、茎が、ま真っ二つに折れて葉が下を向いてしまっていた。
どうしようか、放っておくわけにもいかないので、少し考えて、大手術をする事にした。
洗面所に持って行き、折れたところの直ぐ上を、ハサミでジョキリと切った。残った根っこは抜いて残った茎と捨てた。
ままよ、と残った葉と短い茎を土にずぶりと挿した。いわゆる挿し木だ。葉が元気なことに賭けた。たっぷり水もやった。
その後1月ほどたったが、葉は元気だ。茎を引っ張っても抜けない。
ふと思った。根が浮いてぐらぐらしていた時、土を加えたが、何日かして折れてしまった。本当は弱い茎と、元気な重い葉と、浮いた根とぐらぐらで、バランスがとれていたのではなかったのか。土を加えてそのバランスを崩してしまったのではないか。根もとがしっかりした途端に折れたので、こんなことを考えてしまった。
ゲド戦記では世界の均衡が崩れ、それを回復することが重要なテーマだが、良かれと考えてやったことが、案外悪い結果をもたらし、更に何とかしてそれを回復する。これを進歩と呼ぶのだろうか。
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