淀屋橋

 冬の夜、9時ごろだろうか、いつものように京阪を淀屋橋で降りて北に向かった。少し酔っていたようにも記憶している。
 日銀の前の通りは人通りもなく、占いが2つぐらい、小さな机にうっすら光る四角い行灯をつけて闇に沈んでいた。
 「いくらですか」
 そのうちの一人に声をかけた。
 「二千円です」
 「それじゃお願いします」
 若い女の占いは、左手を手に取り、懐中電灯で照らしながら、考え込むように凝視していた。やがて顔を上げると、すこし戸惑ったような面持ちで、口ごもるように、
 「破滅の相がでています・・・」
 「あなたには破滅の相がでています」
確かめるように2度言った。 
 それから取り繕うように、
 「私ではわからないこともあるので、是非私の先生に観てもらって下さい」
 「電話番号を渡します」
 私は、終始無言であった。
 小さなメモを握りしめ、新地に向かって歩いた。メモはすぐには捨てなかったが、見ることもなかった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?