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DB UIC-Z客車の系譜

はじめに

ドイツ連邦鉄道では、第2次大戦後全長26,4mのUIC-X客車が1950年代の基本設計の下で1970年代まで製造されていました。1960年代になると、最高制限速度も路線の改良やTEE、IC列車の登場で160Km/hまで認可された62系列の登場により、1970年代には徐々に200Km/hまで引き上げられるようになり、UIC-X客車も台車やブレーキの改良で200Km/hの高速運転が可能になった一方、高度経済成長を背景に鉄道利用者の増加と2等車ニーズの高まりやTEE列車による欧州大陸内の鉄道移動の成功から、より快適な車両の開発が急務になる背景もあり、欧州大陸西側のDBを始めÖBB、SBB、FS、SNCB、SNCFの6カ国の鉄道事業者が共同で新しいUIC-Z客車を開発し、信託車両として共同調達する形で製造が開始されました。

UIC-ZとEUROFIMA

UIC(国際鉄道連合)による客車分類のUIC-Zは、UIC-X、UIC-Yに続いて出来たカテゴリで全長26,4m、1等客車、2等客車、1/2等合造客車、1等開放室客車、2等開放室客車、また2等簡易寝台車などが含まれ、最高制限速度160Km/h・200Km/hで全て空調設備がついた車両を指します。後に空調設備なしの同型車両もSBB(スイス国鉄)で出始めたことから、空調付きはUIC-Z1、空調なしはUIC-Z2という細分化した分類に改められています。(ここではDBのみを扱うため、DB車籍で運用されたUIC-Z車両(UIC-Z Wagen)としています。)

このうち、1等座席車は9つの区分室(定員54名)、2等車は11の区分室(定員66名)、1/2等合造座席客車(1等24名、2等36名)の区分室車は10の区分室を持つ客車として規定されています。
また、UIC-XやUIC-Y車両では乗降扉が半自動の折戸だったのに対し、UIC-Zでは全自動のプラグ式引戸に改められています。
DBは1等区分室客車をいち早く調達しましたが、2等区分室客車は定員の少なさなどの問題で調達を行わず、また区分室客車はBm 234(UIC-X)が製造されていたこと、開放室客車の需要もあったことから定員80名のBpmz 291が後に製造されることになりました。

1976年に欧州鉄道信託機構(EUROFIMA)枠で西側関係国向けの合計500両のUIC-Z規格での信託車両として車両共同調達が行われました。これにより、これら車両の俗称をEUROFIMA車両と言われるようになりました。これら車両のうちDBとSNCFを除く国々では、当初Eurofima-C1-Lackierung(ユーロペン塗装)と呼ばれるオレンジに白に近いライトグレー帯の共通色で塗装されていました。
*DB以外では、2等区分室客車や2等簡易寝台客車、また空調設備なし(UIC-Z2)のバリエーションもありますが、ここではDB車籍の車両のみとして記述します。

DB UIC-Z客車の分類

DBのUIC-Z客車は、以下の4車種が新製車両として量産されました。
各車両形式毎にリンクされた別ページにて詳細を記しています。(順次更新予定)

*旧東ドイツ国鉄(DR)でもUIC-Zに準拠した客車(UIC-Z[DR])が開発・製造されましたが、ここではそれら形式については取り上げないこととします。

UIC-Z客車の登場前夜

1976年のEUROFIMA客車と呼ばれる量産車が登場するのに先だつ1972年に、EUROFIMAの主導によりDBのBZA Minden(ミンデン連邦鉄道中央局)とLHB社の共同開発で1/2等区分室合造客車(ABwümz 227)と2等区分室客車(Bwümz 237)1両の2車種を異なる仕様で合計7両試作車両として設計・製造されました。なお、2等区分室客車(Bwümz 237)はUIC-X規格として設計されています。

派生形式と多様化による複雑化

当初の1等座席車と2等座席車の2つのベースとなる車体から、最晩年となった現在では、あまりに種類が多くなり、後にその大半が改造を行っているため派生車種が多く細分化も進み、一層理解が難しくなっています。
ここではドイツ連邦鉄道(DB)と民営化されたドイツ鉄道株式会社(DBAG)のUIC-Z客車について登場時から現在に至る変遷と系譜を掘り下げながら理解を深めてみたいと思います。

まとめ

UIC-Z形客車は、一般にはEUROFIMA客車として分類されている1等区分室客車と2等区分室客車が一般的なイメージではありますが、最初に調達した5カ国の鉄道会社でも、改造を含め多くの派生車種が登場し複雑化、更に現在では、民間会社や旧東欧圏などに売却も進み、全てを把握するには膨大な数に膨れ上がっています。
このため、DBのUIC-Z客車の絞って調査を試みたのですが、該当する4車種の車両についても、老朽化や時代の要求に合わせたリニューアル改造が各車種で進み、電源をはじめとした技術面での仕様バリエーションなど、複雑化は他国の鉄道事業者同様に進んでいることが調査しながら理解できました。

現在DBでは、長距離優等列車は電車タイプのICE化や固定編成化が進み、鉄道が興った180年以上前からの1両ごとの客車は、今後登場しないのではないかと考えられます。その最後になるかもしれないUIC-Z客車も終焉が近づきつつあり、この記事がDB車両ファンに留まらず全ての車両研究の一助となれば、この上なく嬉しく感じます。

参考文献

Taschenbuch Deutsche Reisezugwagen / Horst J. Obermeier + J. Deppmeier / Franckh'sche Verlagshandlung, Stuttgart

DB-Wagen "Reisezug- und Güterwagen der Deutschen Bahnen" / Michael Dostal / GeraMond Verlag GmbH

"WAGEN" Das Archiv der Deutschen Reisezug- und Güterwagen / GeraNova Zeitschriftverlag GmbH, München






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