社内の技術雑談イベント「AP Tech Talk」の場の設計
はじめに
リモートワークが普及して、社員同士の接点が少なくなったと感じることはありませんか?
私は少しばかりの課題感がありました。そこで今年は、エンジニアリングメンター室という部署の取り組みとして、AP Tech Talk という技術雑談イベントをはじめました。
AP Tech Talk は相談や議論、会話をベースとしたイベントです。問題を解決したり、もやもやを解消したり、仲間を見つけたりする場です。BoFをご存じの方であればBoFに近いと考えるとわかりやすいかもしれません。
これまで7回開催して、のべ約80人に参加いただいています。
プレゼンベースのイベントの場合は発表者と参加者という区別がありますが、雑談や双方向のディスカッションベースの AP Tech Talk ではそのような区別はありません。区別があるとすると、企画者(テーマの発案者)と参加者です。
このイベントを始めるにあたって、どういう場にするか最初にある程度設計しました。この記事では、AP Tech Talk という場の設計について考えていることをまとめます。ポイントは3点、「制約で機会をつくる」「質問を大事にする」「ハードルを下げる」です。
■ 制約で機会をつくる
制約がないと機会もないと考え、日程と内容のテーマを設けています。
日程の制約
Zoomやmeet、便利ですよね。場所や移動時間、物理的なキャパなどに縛られずにコミュニケーションが取れます。自由度が高く、雑に言えば「いつでもいい」面があります。
一方、この「いつでもいい」という自由度が「きっかけがない」に繋がっているフシがあるように思います。制約のなさが機会のなさに繋がっているような。
AP Tech Talk ではこれを逆手に取り、制約で機会を作るという考え方です。日程をきちんと決めます。機会があれば・・といっても機会はなかなか歩いて来ません。なので機会は自分たちで作ってしまえという発想です。もし当日に参加したくてもできない人のために、動画を録ってアーカイブを全社員に公開しています。
内容の制約
内容についても、ある種の制約を設けています。
見知った人同士であればとくにテーマなど設けなくても会話が弾むと思いますが、そうでない場合は「はい、それでは何か話てください」といっても困るケースがほとんどでしょう。
そのため、テーマという制約を設けています。テーマを設けることで、ターゲットの範囲は狭まりますが、同じ興味を持った人が集まり会話ができます。なにか共通点があるといいですよね。見知った人同士でなくても共通のある程度の文脈が持てます。
ターゲットの範囲が狭まる問題は、テーマをいろいろ変えて開催していけば解決できるでしょう。
なお、これまで開催したテーマは以下のようなものです。
ネットワーク自動化視点で JANOG 47 をふりかえる
Azureどうやって勉強している?
良いコードの書き方について教えて!
日程も内容も制約がないほうが、偶発性や意外性が高い化学反応が起こるかもしれませんが、そもそも場がないと何も起こらないという考えのもと、あえて制約を設けています。
■ 質問を大事にする
質問は立派なコンテンツです。
AP Tech Talk では質問を大事にしています。というより、テーマによっては質問がないと成り立たないかも知れません。質問によって双方向のコミュニケーションが生まれます。質問のように言語化しなくても、もやもやや、疑問でも会話のきっかけになります。
極端な例ですと、テーマがそもそも質問ベースなっていることもあります。「良いコードの書き方について教えて!」といった具合です。このテーマのときは、テーマ企画者以外からもいろいろと質問が寄せられました。ありがたいことに、教えてくれる人も集まりました。
質問の作られ方は大きく分けて2パターンあります。
1つめは事前に募集するパターン。開催前に予め全社員が書き込めるネタ帳を用意して、そこに質問やもやもやしていることなどを書き込みます。当日に参加できない人でも書き込んでOKとしています。
2つめは当日に出てくるパターン。ポンといきなり新しい質問が生まれることもありますし、他の人の質問やコメントをきっかけにして新たな質問が生まれることもあります。
■ ハードルを下げる
他の技術系イベントと比べて企画や参加のハードルを低くすることを意識しています。
企画者側
企画は社員から公募しています。気軽に企画してもらいたいため、なるべく負荷をかけない形にしています。
具体的には、事前の資料は作成不要としています。雑談、議論ベースのイベントなので、スライドのような資料は不要です。代わりに、前述のネタ帳(質問などが書かれたもの)や、ネット上に公開されているブログや資料、サイトを会話のきっかけにしています。企画者が資料を作りたいという場合はそれもOKです。
たとえば公開資料を画面共有して「先日この資料見てたんですけど、ここ、なるほどっておもいましたねぇ。」のようなセリフで会話が始まったりします。
企画者はそのテーマに詳しい必要もありません。議論、相談、質問したい、を叶える場として使ってもらいます。企画者も得するような場にしたいという想いがあります。
参加者側
参加者としては、イベントへの関わり方が一つではなくいろいろある、という点でハードルを低くしています。
参加者として一番強い関わり方は、事前のネタ帳に質問や意見を書き込み、当日も参加し、積極的に発言する形です。
ですが、そうでなくても全く問題ありません。当日参加ができなからネタ帳だけ記入するパターン。あとで動画を見るだけのパターン。当日参加するけど、聞いているだけのパターン(ときどき話を振ってしまうこともあります・・)。
ご自身の日程やテーマへの関心度によって、関わり方を選んでいただければと思っています。
おわりに
これまで9ヶ月ほど続けてきて、この場のニーズがあることは感じています。
今年はテーマをある程度絞るかたちで公募していたのですが、企画をいただいているうちに、もう少し緩めたほうがいいと感じてきています。
他にもいくつか課題があったりはしますが、今後もよい場づくりを続けていきたいと思います。
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