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午後のひととき

そこの君、ちょっと待った。
寄っていきなよ。
お茶でも飲んでいきなよ。
今日はおっちゃんの奢りだ。
ほら。
当店自慢のホットティーだよ。


眉間に皺を寄せてない?
どうよ?

安心しな。
鏡を見てみろ?って言わないから。
嫌なことでもあったんやろ。
そんな時に、鏡を見てみろって言う人って残酷だと、おっちゃんは思うんだよね。
暗い顔を見たら、余計に気分が滅入るじゃん。
眉間に皺を寄せてる自分の顔なんて、見たかねぇ!って思うじゃん。

え?
ため息をつくなって言われた?

は?いいやん。いいやん。
どんどん、ため息ついていいよ。
全然、オッケー👌
ここで好きなだけ、ついていきなよ。


なんでって?
ため息つきたい気分なのに我慢ばっかりしているから。
ほら、肩に力が入っちゃってるよ。
背中もガチガチと違うか。
いいからいいから。
ダメ元で、ちょっとため息ついてごらんて。


おお、いいねぇ。その調子だ。
もういっちょ!
出しちゃえ、出しちゃえ。
そうそう。
いい感じ。

お、愚痴聞いてって?
いいよぉ。喜んで聞くよ。
ぜーんぶ吐き出しちゃえ!


……ふんふん……
あー、友達と喧嘩した。
あるよね。人生終わったってなるよねぇ。
そっか、そっか。

何?まだある?
よし!ドンと来い!

……うんうん…
そうだねぇ。
親って、なんでああも、わからず屋なんかね?
困ったもんだ。

次は恋の悩み?
経験は少ないから偉そうなことは何も言えないけど、聞くだけなら聞くよ。
……うん…うん…ん…
..……..…
はぁ〜。
すごっ!
。。。あ、ごめん。
最近、こんなガチな恋バナに無縁でさ(笑)
いや、冗談言ってごめん。ごめん。
悪気はないのよ。
ただ、おっちゃんも昔、似たことを言われたなぁってちょっと思い出しただけ。
あ、信じられない?
おっちゃんにも、そんな若かった頃があったんだよ。
とりあえず、男って生き物は、女心がわからん人種らしいよ。


おっ!
笑ったね?
いいねぇ。いいよ。
君、笑顔がサイコーに素敵じゃないか。

うんうん。
嬉しいねぇ。
君の笑顔を見れて幸せだ。

どうだい?
肩の力が抜けてないかい?
背中のガチガチも楽になっただろ。
そう。
それでいいんだ。

ため息つけば自然に息を吐くだろ?
そうすれば、気持ちのいい空気が入ってくる。

愚痴だってそうさ。
言いっ放しじゃ、酸欠になっちまうわな。
喋れば勝手に新しい空気が入ってくる。

だからな、無理して我慢するこたァねぇんだよ。
おっちゃんはそう思うよ。

もし、また上手くいかないことがあれば、いつでもここに来なよ。
温かいお茶を用意しておくから。







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