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【都議選2021】各党の公約を検証する【コロナ対策】

 世の中は都議選の争点など二の次で、オリンピックで酒を出すとか出さないとか、観客を入れるか入れないかとか、近視眼的な論争ばかりが繰り広げられている。小池知事が応援するかしないかとか、本当にどうでもいい話だ。まして、衆院選にどう影響するのかなど、本来は東京都政とは何の関係もない。今週金曜日には都議選が告示される。コロナ対策で集会や街頭演説にたくさん人を集めることはできないだろう。候補者の政策をじっくり聞く機会は4年前よりずっと減るはずだ。せめて、各党の公約くらいはネットでチェックしてみてはいかがだろうか。

 主要政党が公表している政策集(公約)から新型コロナウイルス対策の主要な公約だけ抜き出してみた。

2021都議選政策コロナ関連

【都ファ】年間最大15万円給付は財源の裏付けが弱い

 都民ファーストの会の「政策集2021」は、3つの柱として①「爆速」ワクチン接種で経済活動再開へ②都民を守る「都民ファースト・ケア」③あらゆる事態を想定すべき。国が強行開催するならば東京オリパラ大会は最低でも「無観客」ーーーを掲げている。

 一つ目の「爆速」ワクチン接種の「爆速」が何を意味するのかは政策集をつぶさに読んでもよく分からない。具体策としては「都立施設の活用など都独自の大規模接種体制の整備・強化」「接種の担い手確保策の強化」「接種後の副反応のフォロー体制整備」などが並んでいるが、「爆」が付くほどのスピード感はなかった。与党なのだから、公約などせずとも、今すぐ実行に移していただきたい。

 「国産ワクチン・治療薬の開発支援強化」は、具体策が全く分からない。大阪府も同様に大阪発のワクチンを開発しているが、吉村洋文がほらを吹くばかりで、いまだに実現に至っていない。まさか、イソジンでうがいとか言い出すのだろうか。

 二つ目の柱である「都民ファースト・ケア」では、「国に奪われている都税を取り戻し『東京コロナ・ケア』を実現」とぶち上げている。都は「地方税の偏在是正」を名目に法人事業税を国に年間約7600億円召し上げられていて、その召し上げられた財源は、地方にバラまかれている。これを都税に戻し、世帯年収に応じて年間最大15万円の給付を都民に行うというのだ。元々都税だった財源を国税から都税に戻すというのは筋論としてはあり得るが、政府が税制改正しなければ不可能だ。石原慎太郎でさえできなかったことを、小池知事ならできるということだろうか。国がノーと言えば終わる。財源の裏付けとしては弱い。

 三つ目の五輪の「無観客」は、公約に掲げるのは勝手だが、与党なのだから、今すぐ小池知事が実現すればいいだけだ。未だに1万人とか2万人とか言われているのは、自らの与党としての実行力の無さを証明している。

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【自民】自民党らしくないバラマキ減税政策

 自公過半数の奪取を目指す自民党は、「ワクチン接種の加速化に、東京の未来に、全力で。ーいま、東京に必要なことの全てをー」と掲げている。

 政策の冒頭にワクチン接種の加速化を掲げた。

何よりもワクチン接種の加速化を。
コロナウイルスという災禍を乗り越え、東京の未来を切り拓く。
私たちTOKYO自民党の決意です。

 具体策としては、「区市町村のワクチン接種を支援するとともに国との連携を強化し、高齢者の方の7月末の接種完了を目指します」としている。「何よりもワクチン接種の加速化を」と言っている割には、公約の文言からは特段スピード感は感じられなかった。

 野党として都議選政策を掲げるのは久しぶりだ。そのせいだろうか、非常に自民党らしくないなと感じた。それはやはり、減税政策だ。

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 今回の都議選で自民党は圧勝し、自公過半数を獲得するだろう。今頃都庁の幹部は頭を抱えているのではなかろうか。

○個人都民税を20%減税し、家計において自由に使えるお金を増やします
○事業所税を50%減税し、企業が独自の取り組みに使えるお金を増やします

 少なくとも私が四半世紀見てきた都議会自民党は、こういう聞こえの良いバラマキ施策を最も嫌った。というのも、このご時世で平気な顔で「減税」と言えるのは、稀代のポピュリストである河村たかしくらいしかいないのだ。どこの自治体もコロナ禍による景気の後退で税収は大幅に減る見通しだ。減税には、それなりのたくわえや準備が必要だ。ただでさえ、東京都は金持ちだと誤解されている(実際、金持ちだが…)。都ファが国から奪い返すと公約している法人事業税だって、その根本には〝東京富裕論〟がある。減税などしようものなら、減収に苦しむ地方から再び〝偏在是正〟の声が上がるのではないか。

 減税する余裕があるなら、思い切って23区に財源を移譲すべきではないか(都区財調の配分率を見直す)。

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【公明】とりあえず、公約は文字にしてくれないか

 困ったことに、公明党は他党が公表しているような政策集的なものがHPのどこにも存在しない。あえて言えば、「政策目標チャレンジ8」というのがHPに項目として挙がっている。

 8項目ごとに映像で都議が解説する形式になっていて、動画を観ないとならない。非常にめんどくさい(苦笑)

 しかも、コロナ対策の公約は別枠であるらしい。

 YouTubeに都議会公明党の記者会見の映像が上がっていた。その概要欄に会見で東村幹事長が語った内容がまとめられていた。

 重点政策は、新型コロナ対策をはじめ、3つの無償化を含む「チャレンジ8」、議員報酬の2割削減を継続する「身を切る改革」が盛り込まれている。

 新型コロナ対策について東村幹事長は、ワクチン接種を加速させるため、医療従事者や65歳以上に続き、都が設置する大規模接種会場において、1日当たりの感染者数が最も多く、行動範囲の広い20代で希望する若者に速やかに接種を開始することを挙げた。

 都議会公明党が訴え、実現した高齢者、障がい者施設での集中的なPCR検査に加え、今後は、飲食店が軒を並べる都内の繁華街で、集中的なPCR検査を推進していくとした。

 新型コロナ収束後の経済対策として、国の対策が十分に及ばない分野に関して、都独自対策の実施を訴えていくとした。

 続いて、東村幹事長は、都議選後の4年間で実現する施策として、「チャレンジ8」を掲げた。具体的には、①第2子の保育料無償化②高校3年生までの医療費無償化③肺炎球菌ワクチン接種の無償化④都立病院への重粒子線の導入⑤駅ホームドアの整備拡大⑥高速道路上の料金所撤廃⑦保護付き動物愛護センターの設置⑧地下調節池の整備促進――の8項目。

 また、都議会公明党が2016年11月に他党に先駆けて提案し、17年度から実現した「身を切る改革」について「今後も議員報酬2割削減、政務活動費(政活費)の月額10万円の削減を継続する」と述べた。

 一方、東京五輪・パラリンピックについて、東村幹事長は、「五輪憲章で政治利用が禁止されているため、公約には盛り込まなかった」と説明。その上で、「徹底した感染防止対策を実施し、感染状況や医療提供体制を評価した上で、国、東京都、組織委員会が判断し、具体的なエビデンス(科学的根拠)を基に、都民、国民に説明していくべきだ」と述べた。

 ポイントは二つだ。一つは、20代の若者に対するワクチン接種を速やかに開始すること。もう一つは、都内の繁華街で集中的なPCR検査を推進すること。どちらも具体的で分かりやすいし、公明が掲げたからには都は実際に予定しているのではないか。

 ただ、経済対策に関しては「国の対策が十分に及ばない分野に関して、都独自対策の実施を訴えていく」としか書いていない。要するに、国と被らないようにしたいらしい。政権与党であり、小池与党でもあるから仕方ないことだが、不満が残る。

 公明党は公約や実績の〝魅せ方〟にこだわっていて、基本的な文書をネットに上げることをしていない。まずは、そこから始めていただきたい。

【共産】〝検査〟から〝ワクチン〟にシフトしてほしい

 共産党の「訴えと重点公約」は、「コロナ危機をのりこえ、安心と希望の政治を東京から」と掲げている。

 共産党のコロナ対策は以下の通り。

第一に、コロナを封じ込めるために、無症状者からの感染を防ぐPCRなどの大規模な検査をおこなうことです。医療機関、高齢者施設、障害福祉施設、職場や学校、保育園等での週1回程度の検査、感染が広がりやすい場所、人が集まる場所(繁華街、駅、大学など)での無症状者への検査、変異株の全数検査などを、飛躍的に拡充させ、実行することです。

第二に、ワクチンにかかわる正確でわかりやすい情報を国民・都民に提供しつつ、接種を希望者全員に、安全に、迅速に、確実にゆきわたらせるよう責任をはたすことです。

第三に、3度にわたる緊急事態宣言を含め長期にわたるコロナ禍によって危機に陥っている中小企業、芸術・文化関係のみなさんに、事業を続けられる十分な補償を行うこと、生活困窮者への緊急の支援をおこなうこと、「人流」抑制を求めることに見合った生活保障をおこなうことです。

第四に、すべての医療機関への減収補てんに踏み切り、病床を確保するためにあらゆる手だてをとることです。都立・公社病院の「独立行政法人化」は中止することです。

 やはり、共産党の政策の大きな柱は「大規模検査」だ。これはコロナ禍初期から変わっていない。

 検査に関しては「無症状者が感染を広げる特徴のある新型コロナを封じ込め、医療崩壊を防ぐためには、幅広い検査で感染者を把握し保護することがイロハのイです。ワクチン接種の普及と並行して、検査の徹底が必要」と主張している。

 共産党の立場はあくまで、検査ありき。ここに不安を感じる。そもそも、幅広い検査を行えば医療崩壊を防げるという論理自体、私は「イロハのイ」とは思っていない。なぜ、そういう誤解がリベラル層に広がっているのかがよく分からない。確かにコロナ禍初期にはPCR検査に何日も待たなければならないほど、検査体制が脆弱だった。だが、私自身は医療機関を予約して、その日に検査を受けている。

 世田谷区がかつて提唱した〝いつでも、どこでも、だれでも〟というのはお勧めしない。ただ、東京に関して言えば、民間のPCR検査が普及していて、無症状者の検査で待ち時間はほとんどないので、実質的に誰でも、いつでも検査できる。むしろ、心配なのは医療的な検査だ。症状が出た患者が確実に検査できているのか。

 感染拡大の初期の段階で、繁華街や施設、学校などに戦略的に検査を行うことは有効だと思う。

 つまり、戦略なき検査には意味がない。それは、私自身が「陰性」の診断から3日後に発症したことで、既に証明されていると思うが、いかがだろうか。

 共産党の議員さんは現場を歩いていて、検査の心配をしている方がどれだけいるだろうか。現場の空気を感じ取ってもらいたい。検査からワクチンへの政策のシフトが必要だ。

【立民】10万円以上の定額給付金は「国に求める」そうだ

 立憲民主党の政策集は「ZEROコロナで乗り越える」とし、「重点政策コロナ+5」を示している。

①感染の繰り返しを封じ込めるZEROコロナ戦略に転換し、生活と経済を力強く再生させます。
②正確なワクチン情報を提供し、公正・迅速な接種を実現します。
③積極的なPCR検査で、感染の連鎖を断ちます。
④医療体制・保健所体制を強化・拡充します。
⑤10万円以上の定額給付金の実現を目指します。

 立憲民主党のコロナ対策のコンセプトは、「withコロナ」の否定だ。日本のコロナ対策の特徴は、社会経済と感染対策を両立させることだ。「zeroコロナ」では感染を封じ込め、早期に通常に近い生活・経済活動を取り戻す戦略だ。

 確かに、欧米は強力なロックダウンを行い、感染を封じ込めた上で経済を再開させる。そのための補償も手厚い。

 不思議なのは立憲民主党の政策に「ロックダウン」はないのだ。積極的なPCR検査で、感染の連鎖を断ち切れると思っているらしい。ここは大いに?が出てしまうが、大規模検査を求める共産党にも近い政策と言えるだろう。

 ただ、ワクチン接種に関しては共産党より具体的な提案が盛り込まれていた。「東京都連都議選政策2021」から抜粋する。

 コロナワクチンについては、正確でわかりやすい情報を提供し、公平・迅速な接種を実現します。また、現場の最前線に立って社会機能の維持に日々汗を流し貢献している、交通、運輸、生活必需品の販売員、清掃・介護・保育・教育の従事者、都内のエッセンシャルワーカーに優先的に接種すべきであり、駅前接種やワクチンカーの巡回などを都として行います。

 だれでも、いつでも、どこでもワクチン接種ができるのが理想だと思う。ワクチン接種がこれで終わるとも思わない。希望者が一通り2回のワクチン接種を終えた後、駅前に現在のPCR検査センターと同じように、民間のワクチン接種会場があってもいい。ドラッグストアで打てるというのも手だ。

 10万円以上の定額給付金の実現は思い切った政策かと思ったが、政策集を読んだら腰砕けだった。

緊急事態宣言がたびたび発出されており、最も早く公平に支給できる、ひとり当たり10万円以上の定額給付金を国に求めます

 都として、ではないらしい。あくまで、国に求めるだけだ。

【維新】若者ウケする面白さがあるが、実現にはハードルが高い

 東京維新の会の「2021都議選マニフェスト~『コロナ敗戦』から立ち上がる 維新八策~」が公表されている。「コロナ危機に鑑み、区市町村や事業者・都民に2兆円規模の大胆な経済対策を行う」とし、財源確保のための一時的な都債発行後、東京メトロ株や都庁第二庁舎の売却・事業民営化等により、数年以内に同額分の歳出削減を可能とする大行政改革を断行するという。

 第二庁舎売却論は20世紀末から延々と出ては消え、出ては消える話題だ。職員を減らせばいいとか、民間に委託すればいいとか、いろんなことを言う人がいる。維新は「都庁をデジタル空間に仮想的に移転」とした。私にはそんなことが可能なのかどうか分からないが、要するにみんなテレワークすればいいってことだろうか。

 他党にはない施策は「東京版ベーシックインカム」で、毎月定額無理し無担保で借りられる貸付金制度を新設し、所得が一定額に満たない場合は返済を免除する。

 自粛と補償の在り方についても踏み込んだ。

・「自粛を要請」という中途半端な対応をやめ、営業停止命令を活用する。その実施に当たっては補償を必ずセットとし事業規模に見合ったものとする。近い将来、マイナンバーと個人口座を紐づけ、命令と同時に補償できる仕組みを構築し、誰ひとり取り残さないデジタルシフトを実行する。

 現在の自粛要請という私権制限のあり方に対して問題提起しているのは、維新だけではないか。

 おそらく、若い人たちが政策づくりに参加しているのだろう。非常に意欲的な政策ができているが、マイナンバーの紐づけやメトロ株の売却など、東京都だけで解決できない課題が多いとも感じる。

【生ネ】ボトムアップで堅実な政策

 生活者ネットワークの候補者は3人しかいないので、都民でもなかなか選択肢に入らないのかもしれないが、意外にしっかりした政策を出している。早い段階から支持者を集めた市民集会を開いて、政策について議論している。ボトムアップで政策をつくっている政党はなかなかないのでは。地域政党らしい堅実な政策ともいえる。

いのちと生活を守るコロナ対策を前へ
●心配にすぐ対応できるPCR検査体制をつくる
●医療崩壊を防ぐ専門家チームをつくり、都民の命を守る
●安心して自宅療養ができるよう食事・生活必需品配達員を派遣する
●失業・収入減で困っている人にスピーディーな生活給付金を支給する
●住まいは人権!民間賃貸住宅の借り上げで暮らしの基盤を保障する
アフターコロナを見据え医療体制を徹底強化!
●都立医療機関で働く公衆衛生専門人材を育成し、感染症に備える
●感染症対策の中枢としての保健所機能を強化するため、医師・保健師等を増やす

 ワクチンの「ワ」の字もない(笑)

 自分の経験からも、自宅療養者向けの「食事・生活必需品配達員の派遣」は必要だと思った。県が送るワタミの弁当のまずいこと、まずいこと(笑)軽症なので自炊はできるから、必要な食材を配達してくれる人がほしいと思った。こういう政策は、生活者の感覚がないと出てこないだろう。

【その他】国民民主やれいわなど

 国民民主党やれいわ新選組も都議選政策らしいものはあるみたいだが、ネットでまとまった資料が見つからなかった。表は、議員や候補者のHPやチラシから抜粋したものである。候補者は少ないから、知ろうとする都民もあまりいないかもしれないが、都政をどう見ていて、4年間で何をしたいのかという公約的なものはネットのどこかに置いておいていただけるとありがたい。

 さて、いよいよ6月25日に都議選が告示される。ネットにはいろんな情報が行き交うと思うが、あまり振り回されるに自分で情報を獲りに行き、じっくりと候補者の品定めをしてほしい。そして、五輪の開催の是非のような分かりやすい二元論ではなく、これから4年間を見据えて、どの候補にそれを託すのかを考えてほしいと思う。

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