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[無いものの存在]_01: 右足を切断しました

既にお知らせをした方もいらっしゃいますが、実は右足を切断する手術をしました。

青木はなんか足が悪いらしいくらいの認識のかたがほとんどで、中にはそんなことも知らない人もいると思いますが、右足には人工関節が入っており、障害者手帳も発行される身体障害者です。
元々、12歳の誕生日に骨肉腫が見つかり約1年間の抗がん剤治療後、右足を人工関節にする手術をしていました。その後は数度の手術をしつつも再発はなく順調に生活していました。

2019年9月に夜道でつまずいたことで人工関節を入れた右足が激しく痛み、ちょっとヤバイと思い近所の病院に駆け込んで紹介状を書いてもらい、約7年ぶりに大学病院に行きました。
12歳の頃から仲の良かった医師に診察してもらったところ、つまずいたことは問題なかったのですが、数年前から感染症が進行しており、その影響で脆くなっていた大腿骨に人工関節が埋没し始めていて良い状態ではないとのことでした。

感染症からの再発を防ぐことと、運動機能の向上に向けて、医師からの提案は右足の切断でした。

昔から切断自体にはまったく躊躇はありませんでした。
14歳から20歳ごろまで車椅子バスケをしていたから下肢切断の人は多く見ていたし、人工関節で運動するのは怪我のリスクなどがあるので切断のほうがのびのびできることから、高校生の時に「今から切断という選択肢はあるのか」と医師に相談したこともありました。
当時の主治医には「いつでも切れるからまだつけとけ」と言われ、せっかく残してくれたのだから人工関節を最後まで使い続けようと思いました。とは言え人工関節も消耗するので、いつまでもこれで過ごせないということは分かっていました。
そんなことで切断の提案は予想外ではないし、むしろ感染症のリスク回避や運動性能の向上は自分にとってはとってもポジティブな選択です。

そして2019年11月28日、30年を共にした右足と約15年を共にした人工関節を切断しました。

SNSなどで報告するつもりも無かったのですが、術後のとある症状がこの日記のような文章を書かせるきっかけになりました。

それは幻肢痛です。

欠損した四肢が残っているかのように、身体が無い場所に痛みを感じる症状です。ほとんどの切断患者が経験すると聞いていましたが、手術を終えてベッドに戻った瞬間、麻酔で朦朧とした意識の中でも既に幻肢の感覚がありました。
実はこれを経験できることはひとつの楽しみでもありました。10代で骨肉腫になり感じた自分自身の身体の変化。脳腫瘍で亡くなった父の言動の変化から感じた人間という輪郭の脆さ。そんなことが相まって、学部の卒論では現象学をベースにした論文を執筆。研究中に出会った精神医療への関心は現在まで継続しています。言葉では知っていた幻肢痛。何が楽しみだったかというと、肉体を超えて伸縮する身体感覚を自分自身で考察したかったからです。
こうやって書くと不謹慎な部分があるかもしれませんが、僕はそれくらい自分の身体で感じたことを手掛かりに行動することを大切にしてきました。

それは例えば現在の仕事においてもそうです。最近、いくつかのプロジェクトでは今までとは違う振る舞いを意図的に試したりしていました。プロジェクトによって異なるものの、そこでの僕の振る舞いを漸くすると、一人で決定せず、管理し過ぎず、フラジャイルな選択をどのように泳がしておけるかの模索です。
そういうコンセプチュアルな部分と、会議や会計、書類作成などプラクティカルな部分は、心と身体のように連動していると思うのです。だからある種完成された身体の型だけでプロジェクトをこなしてもつまらない。一緒にいる人がステークホルダーではない、役割のない主語に出会う中でものをつくりたいとも思いました。

右足切断という事実と芸術と向き合う振る舞い。
幻肢痛を感じた途端にそんな両者が繋がるのではないかと閃いてしまい、昨日話題が共有できそうなアーティストの友人達にメッセージを書きなぐっていたところ、山内祥太くんから「エッセイ書いたらどうですか?」と提案され、公開noteの作成を決心しました。

予め断っておくと、このnoteは誰かのための読みやすさやは考えきれていません。それを考えてしまうとまだ思考と記述が追いつかないからです。あくまでも僕の頭によぎったこと、身体で感じたことの断片です。もし書いてあることで気になるかたがいたらぜひ会ってお話しましょう。

これからのいくつか続くであろう投稿は右足切断による幻肢痛を始めとする身体の変化を記録しながら、細々と生計を立てている芸術というもの・ごとの動かしかたについてのアイディアを重ね合わせた日記のようなものです。

自分という小さな主語で「無いものの存在」について書き綴るものです。


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