閃光の10分おじさん【ネットカフェ・サンサーラ♯1】


ネットカフェで受付をしていると、
「あ、この人たちセックスしに来たな」となんとなくわかる。

主に若いカップル。学生にとってホテルは高いし、うちの店にセックス禁止というルールはないから特に文句はない。

問題は良い歳してホテル代をケチり、ネットカフェでコトを済ませようとする奴らである。
風呂も布団もない狭い部屋、固くて冷たいマットの上で女を抱こうとする男は100%ゴミだ。コスパ良く自分がスッキリすることしか考えていない。
そしてそんな所で抱かれてる女はちょっと頭を冷やして、その男で本当にいいのか今一度考えてみてほしい。その男が愛しているのは貴女の膣だけだ。
真剣交際しているのなら、お互いの価値を下げることになるからネットカフェでのセックスはおすすめしない。あと壁薄いから普通に聞こえてる。

しかし適当な関係の男女なら、室料300円から入れるネットカフェは手軽で助かる存在だろう。
実際に、プロと思しき若い女性とおじさんという2人組が来ることはよくある。うちの店にそれを禁じるルールはないから普通に受付する。

ある日、やはり金銭が絡む関係であろう男女がやってきて、男の方が急いだ様子でカウンターに前のめりになって口を開いた。前歯がなかった。
「2人なんですけど、空いてる部屋ありますか?今すぐ入れますか?」
「はい、すぐにご案内できます。何時間ほどご利用になりますか?」
「30分で!」
……さ、30分で済むんですか!?
口から出そうになったが抑えた。
「かしこまりました。では当店のご利用についてご説明を……」
「あ、大丈夫です!ちょっと急ぎの用でパソコン使いたくて!」
「かしこまりました」

レジを打って部屋の鍵を渡すと、男は早足で部屋に向かう。その後ろを気だるげに女性が付いて行く。
あんなにやる気満々!という様子を隠さない男もなかなか珍しい。性春真っ盛りの若いカップルだって受付のときは落ち着いているのに。
まるで早くお散歩に連れて行ってほしくてしょうがないワンちゃんのように……否、ちょっとその例えは無理がある。歯なしのおじさんをかわいいワンちゃんに見立てるのはどうしても無理だ。

10分後。見間違いではない。まだ10分しか経っていない。
「帰ります。ありがとうございました」と受付に伝票を持ってきたのは、さっきの歯無しおじさんとプロお姉さん。
30分で大丈夫なのかなど、全く杞憂だった。
おじさんがスピードタイプだったのか、お姉さんが凄腕なのか。

おじさんは店に入ってきたときと比べて明らかに落ち着いていて、堂々としており、男として一回りデカくなったように感じた。穏やかな笑顔で受付の私に礼を言い、ゆったりとした足取りで店を出て行った。
その部屋に清掃に入ったが、パソコンを使った形跡はなかった。他の形跡はあったけど。

閃光の10分射精おじさん。
次は何分の記録を出してくれるだろうか。
また店に来てくれるのをちょっと楽しみに待っている自分がいる。

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