アラサー、焦る。

あの頃、私は焦っていた。
学生時代の友人たちは仕事が軌道に乗ってきて、個展を開いたり海外で仕事を始めたり、生活に余裕が出てきて車を買ったとか良いマンションに住めるようになったとか、中には結婚して子供が生まれたとか、立派な大人になっている。

私もいい加減ちゃんとしなければならない。フリーランスといえば聞こえはいいが、実質仕事なんてほとんど来なくて、主な収入は週に3〜4日のバイトで月に10万円ちょっと。
実家暮らしで生活費はほぼゼロ円だからなんとかなっているが、いつまでも親の脛をボリボリ齧っているわけにはいかないのだ。なによりカッコ悪すぎる。

私の28歳の誕生日、小説家である一回り年上の友人Oさんに、近所のサイゼリヤでエビグラタンとカボチャの冷製スープ、ティラミスを食べさせてもらった。
熱々のグラタンをスプーンでもちゃもちゃやりながら、最近の出来事とか、他の友人達はこんなにスゴイのに私は置いてけぼりだとか、もうフリーランスで好きなことで稼ぐなんて諦めて地道に会社員として生きていくべきかという話をした。

私のまとまりのない話を黙って聞いてくれていたOさんは、私の話が一旦キリよく途切れたところで「日記書けば良いじゃん」と言った。は?日記?
「嶽本さんの好きな洋服とか音楽の話、映像の仕事の話、今の実家暮らしだとかバイトだとかのカッコ悪い話、日記というかエッセイにして本にしたら面白いと思うけどね。で、文フリに出してみたら?売れたら嬉しいし副収入にもなるよ」

私はなんとなく物書きを志していた時期もあったけれど、自分で本を作ったことは一度もない。
そしてフラフラとバイトしたり会社員になったり無職になったりしながら28歳になってしまった。

なんかしないとヤバイ。よくわかんないけど、なんかしないといけない。好きなように書いていい日記なら簡単にできそう。あと副収入はめちゃめちゃ欲しい。

今まで、物書きになりたいなぁ、書きたいなぁと思いながら本気で全力で書いたことなんて一度もなかったのだ。そのくせ「書く時間を無くしたくない」なんていう言い訳で怠けて週3週4のバイトしかしてこなかったのだ。

ちょっとだけ、本気でやってみようかな。
書くのも、仕事も。

それから私は書き始めた。目標は文フリだ。
仕事も、知り合いのツテや前に仕事をいただいた会社の人にお願いしまくって色んな現場に行き、撮影や編集、雑用でもなんでも引き受けた。
日雇いのバイトやUber eatsの配達なんかもやってみた。あとキャバクラの体験入店にも行った(これはまた別の機会に詳しく書きたい)。

とにかく、自立できるくらいのお金を稼ぐ。空いた時間は10分でも書き進める。やるぞ!!

そしたらまぁ、体をぶっ壊した。
元々、鬱病から来る全身の倦怠感や不眠症で普通の人と同じように毎日働くのが私にはちょっと難しいのだ。

引き受けてしまった仕事だけはなんとか終わらせ、家に引きこもり1日の大半は布団で横になる日々に逆戻りである。書いていた日記も結局途中で止まった。

20代の後半はほとんどこれの繰り返しだった。
周りはみんな立派に生きてる。私もちゃんとしなきゃいけない。そして焦って無茶な働き方をして倒れる。そうしたら軟弱な自分が情けなくなって気分が鬱いでしまう。

どうしたら立派な大人になれるのかな。
かなり焦っている。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?