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キズアトを残さないキズの治し方(現役皮膚科医が教える皮膚科に行かなくても健康、綺麗になる方法)

みなさま、こんばんは!
過ごしやすい秋らしい季節になってきました。
今週から急に涼しくなり、私も白衣の下に長袖を着るようになりました。
日差しも空も、はっきりとした季節の変化を感じますね。

今回は「キズアトを残さないキズの治し方」についてのお話です。

その昔、傷はぬらさず消毒、乾かして治療することが常識でした。
ご家庭の救急箱には、消毒薬や粉タイプの傷薬が常備されていいたのではないでしょうか。
しかしながら、近年では皮膚の創傷治癒の仕組みが解明され、以前の「濡らすな、乾かせ治療」よりもある程度の湿度を保ち肉芽(にくげ、というキズが治る過程で作られる組織です)を増生させる「湿潤療法」が痛みも少なく早くキレイに治る方法として定着しています。

「湿潤療法」という言葉を聞いたことがなくても、ドラッグストアでよく見かける「キズパワーパッド」を使用された経験のある方も多いのではないでしょうか。

けがの原因は様々です。包丁などの切りキズ、屋外で転んでできた擦りキズ、ぶつけて裂けたキズなど。深さや性状もいろいろです。しかしながらまず全てに共通する治し方があります。それは次の3つです。


1洗い流す

まずはキズを石けんを使用し周りの皮膚もしっかり洗い流すことです。特に屋外でできたキズ、明らかな泥や砂、アスファルトがついた傷は丁寧に洗いましょう。
初期の洗浄が不十分だとその後に湿潤療法を行った場合、覆った箇所で雑菌が繁殖して感染を起こしてしまいます。しっかり洗いましょう。
使う水は、水道水で十分です。
ご家庭で洗っても汚れが十分に落とせない場合は局所麻酔を用いてしっかり洗う必要がありますので、皮膚科や形成外科を受診してください。


2消毒しない

昔はキズは消毒して乾かすもの、とされていました。しかしながら、ある一定濃度以上の消毒薬は細菌だけではなく正常な皮膚細胞まで傷つけてしまうことがわかっています。つまり、消毒薬を使うことでキズの治りが悪くなるのです。
ほとんどのキズの場合、周囲に付着している細菌はそれほど多くはありません。ですから消毒薬を使わずとも、水道水と石けんできちんと洗い流すだけで感染対策になるのです。
ただしキズの状態により、消毒が必要な場合もあります。その場合は皮膚科や形成外科を受診しましょう。

3早い時期から乾燥させない

ケガをして皮膚の細胞が障害されると皮膚の細胞からキズの治りをよくする働きのある成分(サイトカインといいます)が産生されます。この成分がキズを覆い、組織の再生を促します。しかしながら、早い時期からキズを乾燥させてしまうとせっかくの成分が痂皮(カサブタ)になってしまい、キズあとになりやすくなります。また、キズが空気に触れると痛みも感じやすくなります。
そういうわけで、キズを治す初期段階ではキズを乾燥させない方が良いのです。


またキズはその深さや性状によって適切な治療が変わってきます。


1擦りキズ

皮膚の浅い部分(表皮から真皮の浅いところくらいまで)が剥がれた場合(いわゆる擦りキズ)
これは先ほどお話ししたようにしっかり洗浄して汚れを取り除いたあとに被覆剤や軟膏を使用して湿潤療法で治療します。

キズの状態にもよりますが、貼るタイプの被覆剤(キズパワーパッドのようなもの)は2−3日に一回交換します。
被覆剤の代わりに軟膏を使用する場合も軟膏処置の場合、軟膏を塗って絆創膏やガーゼを使ってキズを覆いますが、通常のガーゼはキズに貼りつきやすいので軟膏を厚めに塗るか当院ではモイスキンパッドという傷にくっつかないタイプのガーゼをお勧めしています。

貼るタイプの被覆剤の場合、傷からの浸出液が多いとかぶれてしまうこともあります。
傷が痒くなったら使用を中止してください。また、治療中に細菌感染を起こしてしまう場合があります。キズが赤くなったり、痛みがひどくなったり、嫌な匂いがしたら細菌感染の可能性がありますので、速やかに剥がして皮膚科や形成外科を受診しましょう。

2切りキズ

これは包丁やカッターなどで謝って手を切ってしまった、ガラスなどの鋭利なもので怪我をした時のキズです。深さによって治療方法は変わってきますが、基本的には皮膚科や形成外科を受診されることをお勧めします。

表皮や少し浅い真皮までのキズはキレイに洗浄後、縫合せずに専用のテープで傷を寄せて固定する治療をすることがあります。また外用剤を使用することもあります。

皮膚がある程度の深さまで(真皮以下)切れている場合(少し白っぽく見えることが多いです)、キズ跡を目立たせなくするよう治すためには皮膚がずれないように縫合が必要になります。
通常局所麻酔を使用し、きちんと洗浄をして異物や汚れを取り除いたあと、2−3ヶ月で自然に溶ける糸を使って真皮縫合(皮膚の奥を縫うこと)後、皮膚の表面を縫合します。場所にもよりますが5−7日くらいで抜糸することが多いです。ただし、手掌や足底など厚い部位では真皮縫合は行わず、2−3週後に抜糸をすることもあります。

また、キズの深さが深くなるほど神経や血管の損傷の可能性が高まるので、のちのちしびれや障害が残る場合もあります。脂肪や筋肉が露出しているようなキズ(肉眼的に黄色い組織や赤い組織が見えます)や手や指のキズなどは速やかに専門医を受診してください。

また、深いキズであっても、すでに感染を起こし化膿している場合や動物や人の咬みキズは、縫合すると状態が悪くなることがあるため縫合しないケースもあります。
これも専門医の受診が必要です。

また抜糸後、キズが治ったあとも、数ヶ月は赤みが続きます。また、縫合部の皮膚は縫合
した方向と逆に引っ張られてそのままにしているとキズあとが広がって目立ってしまいますのでテーピングが必要です。
縫合部に直角に肌色のテープを貼りキズが動かないように固定します。緩くなったり、汚染したりすれば交換です。通常三ヶ月から六ヶ月くらい継続をお勧めします。
さらにキズの部分の皮膚は黒ずみやすいため一定期間遮光が必要です。日焼け止めや帽子、日傘などを使用したり、当院ではエアウォールというシールタイプの貼る日焼け止めもお勧めしています。

ケガをした場合、なるべく傷跡を目立たせずに治したければ、
早めに専門医を受診されることをお勧めします。

本日もお読みいただきありがとうございました。

昨年11月に開催された学校の先生方向けざ瘡web講演会の動画が学校保健会のサイトにアップされました!ニキビについてお話しています。よろしければこちらもご覧下さい^ ^

https://www.nikibi-hoken.jp/


医療法人社団兼愛会前田医院皮膚科・美容皮膚科ホームページ

http://hopitalmaeda.com/derm/index.html
 
https://www.instagram.com/p/BgLsCWIFlQD/?igref=ogexp&utm_source=fb_www_attr

https://www.environ.jp/  

http://www.cutera.jp/zoskinhealth/  

顔は洗うな-なぜスキンケアで失敗するのか-大仁田亜紀

https://www.amazon.co.jp/-ebook/dp/B01NAZ7NHQ/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1525966921&sr=8-1&keywords=大仁田

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