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組織のモチベーション(5)「あなたの組織は機能体? 共同体?」

 学生時代、組織には、「ゲマインシャフト(共同体組織)」と「ゲゼルシャフト(機能体組織)」という二つの“形態”があるということを習った覚えがありませんか?

 これは、130年前にドイツの社会学者フェルディナント・テンニースが提唱した概念です。この二つの“形態”が、組織のモチベーションを理解するために、極めて重要なものになりますので、少しアカデミックな話になってしまいますが、しばし我慢してお付き合いください。

 理解しやすいように、二つの“形態”を、機能体、共同体と呼ぶようにし、この順番で説明します。

 機能体とは、そもそも外部に目的があって、それを達成するために作られた組織です。例えば、社会に価値を提供することで利潤を上げるために企業は存在し、戦争などの有事に備えるために軍隊は存在します。

 共同体とは、組織内個人の心地良さ、好みの充足を満たすために作られた組織です。例えば、家族、地域社会や、クラブ、同好会、そしてネットで繋がるSNSやフォーラムも、これにあたります。本来は、血縁、地縁などを元に、自然発生的に作られる組織ですが、インターネットによる知縁(共通の知識が繋ぐ縁)を元に、意図的に作られる共同体も増えています。

 まとめると、機能体とは目的達成組織であり、共同体とは居心地追求組織です。

◆機能体の特徴

 目的達成組織である機能体の価値は目的達成力で測られます。したがって、最小コストで最大効果を上がられる組織が理想だとされます。企業でKPI(Key Performance Indicator)やROI(Return On Investment)が重要視されるのは、企業の目的達成度を数値化した指標だからです。

 一方、組織内個人の評価は、目的達成への、目に見える貢献度が指標とされます。つまり、個人の成果や能力を点数化し、比較し易い客観的評価制度が導入されがちです。

 目的が明確であるため、指示系統はスピード重視で、上意下達が徹底されます。

 人間味のある暖かい組織というよりは、個人を駒と見立てたクールな組織になっていきます。そして、組織の目的達成のために、時には個人の希望を無視した犠牲が強いられてしまうこともあります。しかし、組織が目的を達成できた時には、個人も達成感や実利を得ることができ、個人の犠牲は報われます。

◆共同体の特徴

 居心地追求組織である共同体の価値は、結束力の高さや仲間意識の強さで測られます。したがって、公平性と安住感の保たれた組織が理想的だとされます。

 一方、組織内個人の評価は、組織内での人気や人格が重要視されます。つまり、組織内人間関係による好き嫌いといった、主観的評価に左右されがちです。

 各個人は、各々の価値観で行動し、個人の意思が尊重されます。したがって、クールな組織というより、人間味溢れた組織になっていきます。その代わりに、現場に携わる人間が力を持ち、上司の言うことを聞かないことが、ままあります。

 以下に、機能体と共同体の違いをまとめた表を記します。(「組織の盛衰」堺屋太一著より)

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 機能体と共同体というのは、対照的な概念であり、本来は両立しにくいものなのですが、現実的には、この組織は機能体、この組織は共同体といったようには二分化できず、機能体であると同時に共同体でもある組織が数多く存在します。このことが組織内で矛盾を抱える原因になります。

 例えば、小学校で組織されたチーム・スポーツは、勝つことだけを考えた機能体であるべきか、子供達全員にスポーツの楽しさを知ってもらうための共同体であるべきかで、常にジレンマを抱えています。そして、勝つために上手い子しか試合に出さないというポリシーと、負けてもいいから全員試合に出してあげようというポリシーで、コーチや保護者間で対立が生じたりします。

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 このように、組織の “形態”として、機能体度と共同体度がどのような割合で存在するかが、組織のモチベーションの在りかを左右することになります。

 さて、前章で、組織の“気質”として、成長志向と安定志向があるというお話をしました。組織の“気質”は、組織の“形態”にどのような影響を与えるのでしょうか?

 組織の“気質”が成長志向である場合、成長という数値化しやすい目的を追うために、組織の“形態”は機能体であることが合理的です。一方、組織の“気質”が安定志向であれば、全員の公平性と安住感を求めて、組織の“形態”は共同体であることが求められるはずです。

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 “気質”は、環境によって変化することがあります。しかし、“気質”の変化に対して、“形態”が変化するのに時間がかかってしまうことがあります。

 そこで、“気質”は成長志向から安定志向に変化しているのに、“形態”は機能体から共同体に移り変わらず、ねじれ状態になったりします。この過渡期における、ねじれ状態や、機能体と共同体との混在状態が組織内に矛盾を生じさせ、様々なトラブルやモチベーション・ダウンの原因となります。

 その典型的な例が現代日本の変遷だと思います。次回はそのことについて書きたいと思います。


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株式会社Que取締役。