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「筆あとの誘惑」

かれこれ30年以上も前、京都の美術館で「筆あとの誘惑 モネ、栖鳳から現代まで」という展覧会が開催されました。
画家の手の動きによって生み出される「筆致」に着目したとて興味深い展覧会でした。

1993年11月に京都市美術館で開催された
「筆あとの誘惑 モネ、栖鳳から現代まで」の展覧会図録とチラシ

・・・それから年月はどんどん流れ、美術展を鑑賞する機会もすっかり減っていたのですが、昨年、縁あって「三人展 -異想 夜想 妄想- 内田麻ゆ 北山翔一 鈴木友晴」展を見に行きました。

2021年12月~2022年1月に日本橋高島屋S.C.美術画廊Xで開催された
「三人展 異相 夜想 妄想 内田麻ゆ 北山翔一 鈴木友晴」展のパンフレット

そこで目に留まったのが鈴木友晴さんの「夜景#2」という4号の油彩画。
都会のイリュミネーションのような、いやいや、氷山が聳え立つ最果てで繰り広げられている、見たこともない不思議な幻想的な光景のような・・・

「夜景#2」
鈴木友晴
油彩

そして、この「筆致」。
流れるような筆の趣は、なんて魅力的な・・・
この絵は生きている・・・
白と青の凛とした筆致。
動き流れ、まばゆく揺れる筆致。
ふと、30年以上前に感動した「筆あとの誘惑」展を思い出したのでした。

それから間もなく、私は「網膜硝子体手術」という目の手術を受けました。
手術中に見える網膜にうつる景色、手術後から今も目をつぶると見える不思議な模様、それがこの作品の雰囲気と似ているのです。
作家の手から生み出されたその「筆あと」に魅了されると共に、「夜景#2」は、私にとって思いがけず、心強い存在なのです。

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