﹣散文﹣
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1 .
あぜ道
入道雲
蛙が鳴き出し
雨のにおいがする
田舎の余韻
2 .
夜の街明かりが
涙のひとしずくに
見えた
独りぼっちの夜
3 .
金木犀のメロディーが
ゆらりと流れる部屋に
珈琲の香りが漂う
適当に描いた絵が
空へ飛んでゆく
灰色の雲が
私を見ていた
4 .
踊る熱帯魚
さかさまの時計
浮かんでゆく泡
ここではないどこかへ
旅に出たくて
支度をする
5 .
開けっ放しの
引き出しを閉めて
緑茶の渦に
身を任せる
5匹のちょうちょと
熟した柿の誘惑
6 .
悲しくて悔しくて
ドライマンゴーを
食べながら泣いた
きっと明日は
今日よりもっと
強くなってるよ
7 .
月を見つめて
眠れない夜は
ちょっと罪の味
闇の中で
空っぽな心を
抱いている
8 .
コップの底に映る瞳
ごくりと飲み干したら
きっといい事
ありそうね
9 .
桃の香りがして
体が包み込まれる
宙に舞って
また舞い降りて
10 .
金木犀が香る
海の底の町で
小さな高鳴りを
抱えて歩いた
あなたのいる町を
インクで描きながら
気がつけば
涙がこぼれ落ちた
11 .
蝶が舞う草原で
また会おうと約束した
遠い夏の記憶
滲んだ笑顔
小さな影法師
記憶から消えて
なくなってしまう前に
12 .
明け方の空に
白い月が見えた
嫌いだった冬
夜空がきれいで
嫌いになりきれない
そんなふうに
季節は巡って
ゆくのです
13 .
少しずつ明けていく
ソーダに似た空
まだ薄暗い街の
街灯が宝石のよう
窓越しに
見つめていた朝
14 .
懐かしさを抱きしめて
夜に浮かぶ明かりの中
ゆっくりと朝を待つ
大好きなうたが流れる
𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄
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