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【お題SS】永遠の味噌汁


過去にTwitterに載せたお題SSを微修正したものです。テキストの最後に裏話のような補足を書いていますので、よろしければぜひ。

以下のお題メーカーをお借りしています。

秋野桜さんには「懐かしい味がした」で始まり、「ああ、もうやってらんない」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば3ツイート(420字)以内でお願いします。
#書き出しと終わり
https://shindanmaker.com/801664


 懐かしい味がした。だから思わずレシピを尋ねたのだけど、返ってきた言葉に拍子抜けした。

「冷凍食品だからわかんねぇ」

 同棲相手の雅人はそう説明した味噌汁を啜った。同じものが注がれているお椀を片手に私は固まる。

「これ、冷凍食品? インスタントじゃなくてそんなのあるの?」
「あるよ。便利だし、具も多くて本格的でいいだろ。うちの会社の商品サンプルなんだよ」
「へえ……」
「まあ、パッケージ見たらある程度レシピは想像つくんじゃね? 味が気に入ったならあとで冷凍庫見てみろよ」
「ありがとう、そうする……」

 確かめるように一口啜って味わった。出汁と味噌の配分か、それとも具材の旨味なのか。やけに舌が懐かしいと騒ぐ味が広がる。

 幼い頃、祖母がよく作ってくれた味噌汁の味によく似ていた。母も私も、いくら作ってみても再現出来なかった味。もう二度と出会えないと思っていたのに。

「え、泣くほどこれ美味い?」
「……違うわボケ」

 ああ、もうやってらんない。



▼裏話

もう二度と味わえない味って、何かしらあると思います。閉店してしまったお店の味とか、期間限定の味とか。
私にとって根強く残っているそれは、故人がかつて作ってくれた味です。このSSはそんな私の経験から生まれました。味噌汁ではないですけどね。

お題で決まっていた最後の一文には、もう二度と味わえないと思っていた懐かしい味に突然遭遇した際の主人公の心情が繋がるようにしたつもりです。あくまで、つもりです。

ちなみに私はまだ懐かしい味を再現できていないけど、もし再び出会えたら嬉しいだろうし、きっと思い出が甦って泣いてしまうかもしれませんね。そんなことを思いながら書いたSSです。


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