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「既得権益」によって「インシュアテック」が普及しない現実

損害保険ではすでに実用化されているインシュアテックが多数存在する。有名なものだと自動車保険の「テレマティクス保険」だ。テレマティクス保険とは、損害保険会社が自動車に設置した機器やアプリによって運転状況や走行距離などの情報を取得し、それによって保険料を算出したり、運転者支援のサービスを提供する保険だ。
走行距離を保険料に連動させるタイプや、急ブレーキの回数などをカウントして保険料に反映するタイプがある。それだけでなく、運転状況によって居眠りアラートが発せられたり、あるいは自己状況を把握できるなどのサービスを提供している会社もある。

保険業法では、保険会社が取り扱う商品や行う業務について厳しく規制を設けており、保険会社は保険業法で認められている業務以外は行うことが出来ない。保険業法で保険会社に認められている業務は、「固有業務」「例示的付随業務」「その他付随業務」だ。インシュアテックで提供するサービスがこの3つのうちどれかに該当しなければ行うことが出来ない。
保険業法では、契約者や見込み客に「特別の利益」を提供してはならないと定めている。例えば、保険料を割引したりキャッシュバックしたりする行為だ。したがって、保険会社が提供するインシュアテックを用いたサービスが、徴収する保険料に対して過剰になっている場合は、保険業法に違反していることとなり、サービスの提供が困難になる。

このような保険業法による様々な規制は、日本のインシュアテックが諸外国と比べて出遅れている原因となっている。保険業界に限らず、日本では多くの規制があるため、あらゆる業界でIT化が遅れている。規制がなかなか緩和されない理由は、「既得権益」を守っているからだ。規制があることで一部の人間はメリットが得られる。その一部の人間が自分たちの既得権益を守るため、規制緩和を遅らせている。ちなみに、日本では1日1本のペースで規制が増え続けている。
個人的に、トランプ前大統領がやっていた「2対1ルール」は規制緩和する上で非常に有効な施策だと思う。トランプ前大統領は、主に金融・エネルギー・通信といった分野での規制緩和を進めるために、「新たな規制を1件導入する際には、既にある規制を2件以上撤廃しなければならない」という制度を義務付けた。日本でもこのように「自分のことしか考えずに既得権益ばかりを守る」のではなく、もっと「将来のことを考えてチャレンジしやすい環境をつくる」ような施策を行ってほしい。


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