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マメからおマメに変更したんよ

 今日で、四日目になる。
 
 初めて犬を飼うということで、YouTube で、成犬を預かる心得みたいなものは頭に叩き込んでおいた。色々観る中で、すぐに一人のおじさんの動画を見つけた。とても信頼出来る人な気がした。そのおじさんから様々な飼い慣らし方を学んだ。そのおじさんは、沢山の犬を預かっている。特に暴れる犬を専門に。観ていると、たちまち狂犬が穏やかな顔になっていく。あれだけ噛み付いていた犬達が、おじさんに笑顔で並走している。あ、これや。この通りにしたら、絶対大丈夫や、思った。
 
 僕は、八歳の雌の豆柴を飼うことになった。様々な環境を経てこの家にやって来る訳なので、優しく接し、少しずつ環境にならせていこうと思った。
 でも、おじさんは、それは駄目だと言った。
 
 初日が命。と言い切った。
 
 初日を甘やかすと、そのあと、ずっと犬主導の生活になる。今まで辛かったこともあるかもしれない。だから、初めのうちは優しくしてみよう。これが、大間違い。
 この家にはこの家のルールがあるということを教えてやらなければならない。理解してくれたら、全力で、褒めてやる。そういったことを叩き込んだ上で、信頼を築き、主従関係を結んでいく。特に柴犬は忠誠心が強く、主従関係を作ったほうが存分に甘えて来るし、むやみに噛んだりしなくなると、おじさんはたんたんと話した。
 ごく稀にいらっしゃる。自分の辛かったことやアドバイスなんかを淡々と話す方。
 「昨日の晩ごはん、ハンバーグ作ってみたけど、なんかあんまやってんなあ〜。」位のテンションで、死にかけた話とか、誰かに騙されて多額の借金背負ったとか、するすると話す人。聞き心地が良くて、こんな人になりたいなって思える。
 おじさんは、そんな「音」を持ってる方に感じた。

 まず、室内で飼う場合はゲージを全てどけること。(買ったやつ、全部どけて、今ようわからん窓の前とかに置いてる)これで、犬のストレスを軽減させる。
 でも、決して自由にさせない。行ってはいけない場所に入ろうとしたり、触れてはいけない物に向かって行けば、強く低い口調で「ノー」。これを何度も繰り返し、覚えるまでやめない。
 散歩の時間はわざとバラバラ。どれだけせがんできても、行かない。そうすることで、これもまた、犬主導の生活から抜ける。この時間に行くと決めてしまうことで、飼い主のストレスを軽減出来る。
 だけど時間をバラバラにしようが、散歩には絶対に行ってやること。それにより、犬も、あ、この人、時間バラバラやけど散歩は絶対にいってくれるやん、てなる。生まれる信頼。
 そして、散歩は、自由に歩かせない。初めのうちは、前をぐんぐん歩くから、室内で、トレーニングする。リードを繋いで、一緒に、歩く。前を歩くようなら、物凄い太めの強めのノー。藤岡弘ばりのノー。デヴィ夫人ばりに奇譚なくノー。横か後ろを歩けば、全力で、褒める。これを繰り返し、外に出た時、しっかり並走してくれる。出来上がる主従関係。

 動物と共に暮らす事は、動物に捧げる事ではない。動物の生活リズムと己に折り合いを付け、出来る限りお互いのストレスを減らして、その上で全力で愛する事だと、おじさんは言った。

 絶対にそうや。間違いない。すとんと胸に入ってきた。気持ちのいい音がした。

 迎え入れ当日。
 鼻を膨らまし、胡座をかき、目を瞑り、反芻する。
 甘えて来ても散歩の時間はバラバラ。触ってはいけないものには、ノー。並走トレーニング。

 おマメがやってきた。
 
 あっかん。めっちゃかわいい。おやつあげたい。居てくれるだけでええかも。甘やかしたい。俺をめちゃくちゃにして欲しい。だ〜め!とか言わして欲しい。暴れて。そんなに怒らん感じでいくから。俺を困らせて。貢ぐから。なんでも買ってあげる。俺、白い米だけでいけるから。おかずの分とか貯めて、なんでも買ってあげる。いや、買わせて。振り回して。壁にぐちゃぐちゃに当たって血が出るくらい俺を振り回して。好きです。愛じゃないかも。好き。一方的に。
 そんな気持ちが心と部屋を走り回っている。
 走り回る僕の悪い心を、僕の中の冷静なおじさん魂が、首輪を付けてくれる。
 
 深呼吸をし、気持ちをなんとか切り替え平静を装う。へぇー来たんや位の感じ。そうして、これから宜しく、となんとかクールに放つ。

 ここで、甘やかしたら今後関わる。鬼の想いで垂れる目と頬を引っ張り上げる。


 そして、ここから本番。
 
 リードを外す。

 緊張の一瞬。

 え?あれ?おマメ?

 
 おマメは全然動かない。
 おマメは全然走らない。
 たまに部屋をくまなく歩くが悪いことは一切しない。
 触ってはいけないものにも触れない。
 散歩も行きたがらない。
 行ってもうんちしたらすぐ帰りたがる。
 外、でかいトイレやと思ってるらしい。
 部屋の中でリード繋ぐ。
 歩いてみた。
 きっちり横歩く。
 凄いいい子。
 散歩行きたがらんの心配。
 八歳。
 シニア突入らしい。
 めっちゃ寝る。
 たまーに横来て撫でて欲しいみたいなんしてくるようになってきた。
 俺よりちゃんと、距離感保ってる。
 皮膚病患ってて、これから暫く週一回シャンプーするんやけど、それでも、病気のせいか身体が酸っぱい匂いしてる。
 匂いは、僕敏感やから、慣れれるか不安やった。
 今その匂い好きでたまらん。
 おもちゃも全然欲しがらん。
 投げても全無視。
 シニアの女の子はそんなんらしい。
 
 おじさん、お世話になりました。
 貴方から学んだことはどれも素晴らしいものでした。
 しかし、おマメは、大丈夫でした。

 食事は、決められた餌しかあげれない。
 病院の先生が、「恐らくこれなかなか食べないと思います。正直、これを食べてくれると有り難いんやけどね。食べない場合は、少しおマメには良くないものが入ってるまだマシなやつをあげましょう」って言われて、とりあえずあげてみた。 

 食べへんかったら「ノー」って言うてみてもいいんかなあ。ご飯はちゃうかあ。とか、考えながらあげる。

 おマメ、バクバク食うてる。
 めっちゃええ子やで!

 


 めちゃめちゃ、寝る。

 とりあえず、散歩(ほぼうんこだけやけど)終わり、玄関で足拭くとき先に部屋に入ろうとするからその時は「ノー」と言う。
 ちょっとだけ、やってますよ感を自分に与えることが出来る。

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もしも、貴方が幸せになれたら。美味しいコーヒー飲ませて貰うよ。ブラックのアイスをね。

幸せござんす
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これからやりたいことが沢山ある。 それが全て間に合うように、ここに少しずつその断片を、置いていくつもりで書く。何かの形になっていたとき、共に良かったねと思って頂けたら嬉しい。 出来るだけ剥き出しで書けるようにしていきたい。 でも、愛を持ってかわいいなって思いながら書きたい。