見出し画像

犬、山、飯、テン泊。好きなものを全部組み合わせたらこうなった。

よく晴れた秋の日に保護犬(ひばり)を1匹引き取ってから、早くも3年が経ちました。雑種犬ばかり飼って5匹目ですが、先代犬たちがそうであったように、ひばりにもまた他の4匹にはない強烈な個性がありました。仔犬の頃からとにかく体が強かったこと。成長が早く、元気いっぱいで好奇心旺盛。ただし、やんちゃぶりは度を超えていて、叱ってもびくともしないタイプの犬でした。他の4匹がすぐに覚えた「お座り、お手、おかわり……」などの芸も、とうとう一つも覚えないまま成長して今に至ります。

ただ、芸をするような器用さはなくても、ひばりには別の才能がありました。その一つが、山で群の一員として動ける賢さと運動能力。やんちゃで体力が有り余っていた生後5ヶ月のひばりを裏山に連れて行き、未整備の山林の急斜面を登らせてみたところ、その特質はもう一目瞭然でした。

画像3

山を必死で駆け上がるひばりの目の輝き、筋肉の躍動、全身から沸き立つような興奮とピンと張った集中力。里にいる時とは全然違うオーラです。それでいて、一人で勝手にどこかに行ってしまったり無茶をすることもない。常に飼い主の居場所や安全を確認しながら進んでいきます。おぉ〜!これは鍛え甲斐がある!と、こちらも鳥肌が立ちました。以来、少しずつ距離を延ばし、難易度を上げて、今では1200メートル超の山や雪山にも「ちょい長めの散歩」と称して行けるようになりました。

画像1

もともと好きだった登山に大好きな犬を連れて行ける。これだけでも十分嬉しいですが、去年の夏、高野山近くの山中に住んでいる友人宅で、たまたま庭にテントを張らせてもらって寝てみたところ、これがまたヒット!ひばりが言うんですよ
「これこれ!これがやりたかったんだよ!こうやってお外で寝たかったんだよ!」って。(笑)
それで決めました。姉と私とひばり、2人と1匹で山の中で眠れるテントをモンベルさんに買いに行きました。
「あの〜、犬連れ登山でテン泊なんですけど・・・」と店員さんに無理な相談をして、ステラリッジ3型(2型は持ってたんですが)と、ひばりの寝袋とマット、それを入れる60Lの新しいバックパックを買い揃え、ついに「犬と山でテン泊をする」という夢のような遊びができるようになりました。

画像2

ひばりを飼うずっと前から、好きで山には登っていました。トレーニングで登ったり、友人たちとキャンプをしたり、名山と言われる人気の山へ誘ってもらうこともありました。テン場でわいわい語うことや、下山後に温泉に浸かること、汗を絞り出してから飲む冷えたビールが楽しみで、あちこちの山に行きました。好きでしたよ、そういうの。楽しかったですよ、いつだって。でもね、それらの楽しみをぜんぶ捨てたんです。まったくの新しい楽しみのために。

「犬と山で眠る」

犬が一緒ということは、(基本的に)温泉には行けません。バスや電車が使えない(車移動です)ので、下山後のビールは飲めないし(テントでは飲むけど)、基本のルートはピストンになります。遠方の名山にも行けないし、長い距離を縦走するのも難しくなりました。人の多い人気のコースや、人の集まるテン場にも、ほぼ近づくことはなくなりました。林のどこかに平な場所を見つけたら、もうそこが今夜の寝床です。怖くないとかと訊かれたら、やっぱり少し怖いです。それでもね、犬と一緒に登れるのなら、ひばりとテントで眠れるのなら、今となっては120%、これより幸せな登山はないです。

画像4

日が暮れて辺りが真っ暗になると、ひと気のない山の中には動物の声が聞こえてきます。近くの林をガサガサと鹿の親子が駆けていきます。そんな時、ひばりには私たちには聞こえない音が聞こえているし、見えないものが見えています(嗅ぎ分けている)。人間が食事をしている間も、星空を撮影している間も、ひばりは休んだり遊んだりしません。私たちを背に正座して、じっとどこかを見つめています。耳をピンと立て、風の中で鼻を動かして、決して警戒を解こうとしない。薄闇の中、水場を探しに行く時も、夜中にトイレに行く時も、一緒にテントを飛び出してきて周辺の警備に当たってくれます。野生動物がテントの側を横切ろうものなら、少しばかりの唸り声で撃退だってしてくれます。

自分が群れを護るんだ!ぐらいの気概が感じられます。笑

山の中では、特にテントで眠る時には、さすがは犬です、頼もしいです。家でゴロゴロしている時とは、まるで別人、じゃないや……別犬ですから。

画像5

下山後の温泉&ビールは手放しましたが、山ごはんは今後も引き続き愉しんでいこうと思っています。昔より行き先が近場に、より低山になったことで、時間的にも体力的にも、食事にかけられるキャパシティは広がったのかもしれません。犬と山に行って、ご飯を食べてテントで眠る。いいとこ取り、とは、きっとこういう状態を言うのでしょう。

画像6

ひばり、メス、3歳。今、一番脂が乗ってる時です。あと何年、こんなことができるのかは分かりませんが、ひばりが元気なうちは一緒に登れる幸運をかみしめながら、一瞬一瞬を大切に過ごしていきたいと思います。

ではまた、ごきげんよう。

安希

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?