現代人が失った「長さの喜び」を京都で知った。
こんにちは、資本主義でも社会主義でも無い新しい経済圏「長い主義」を作っているVeryLongAnimals(通称ベリロン)のファウンダーのAkimです。
僕ほど「長い」という形容詞にコミットしている人間は、歴史上見ても稀なのでは無いかと思います。
ところで、「長い」という言葉に皆さんはどういうイメージがありますか?
話が長い上司
長蛇の列
長生きしすぎな日本人
長引く不況
伸びたラーメン
国民的ダメ男のび太くん
スピード感が上がるばかりの情報化社会、出来るだけ生産性が高いことが求められる資本主義の世の中において、「長さ」(特に時間軸に関して)はちょっとお間抜けな印象も付き纏うワードになってしまっているのかもしれません。
より早く、より短く、より効率的に、より生産的に。が仕事では求められ、そしてその思想は余暇にまで進出しています。
今年発売された「映画を早送りで見る人たち」という書籍などを中心に、タイムパフォーマンス=タイパという言葉も話題になりました。
京都で出会った、長さの喜び
そのような資本主義では至極正しい価値観とは、少し違う価値観を持った土地があります。京都です。
私は京都大学の出身で、学生時代6年間を京都で過ごしました。
親に連れられてたまに行く京都の老舗の料亭などで、店主が誇るのは売上規模、チェーンの数、バズってるかどうか、などではありません。そのお店が続いている長さです。
京都で尊敬されるほど長くやっているお店とは、10年20年の話ではありません。それはまだヒヨッコと言われます。京都には300年以上続く料亭やお菓子屋さんがいくつもあります。中には西暦1000年(長保2年)創業のお店もあります。
また、世界最古の会社は「金剛組」という京都の建設会社であると言われており、1400年以上続いています。子会社化なども経て今も残っています。(2005年まで金剛一族が経営していたそうです)
そして、みんな大好き「任天堂」も京都で1889(明治22)年に創業した長寿企業です。最初は花札の会社でした。
そんな任天堂の経営方針を見てみましょう。
また、任天堂の歴史 - 第3章 受け継がれていく任天堂のDNAによれば、任天堂のDNAとは要点をまとめると
運を天に任せる(娯楽事業の宿命)
無借金経営(運が悪くても良いように体力を温存する)
失意泰然、得意冷然(ボラティリティに浮かれない)
異業種に手を出さない(独自バリュープロポジションだけを極める)
であり、彼らもまた、世界的規模を誇りながらも長くやることを目的としている企業の一つであると言えるはずです。
事実、この方針に従った上で「ソーシャルゲームに乗り遅れた」と散々批判された後に、Nintendo Switchをあれだけヒットさせているのですから、本当にかっこいい企業だと思います。
時間貴族、京都の学生たち
また、京都で学生時代を過ごした私が東京に出てきて驚いたことは、東京の学生はとても忙しそうだということです。
私の通っていた京都大学には毎年、難しい試験をくぐり抜けた、いわゆる受験エリートが入ってきます。彼らが一番最初に先輩から教わるのは「授業は行かなくてよい」「留年はしてもよい」ということです。
これまで真面目に勉強してきた一年生は、「先輩の言うことは、本当なのかな?」なんて最初は恐ろしく思いながらも、勇気のある者から1人ずつ授業を休み始めます。そして1年後には7~8割くらいが来なくなります。
そして彼らはその有り余る時間を何に使うのかというと、、大体が飲み会や麻雀、サークル、ゲーム、川で昼寝など、欲望の赴くままに消費し切ってしまいます。そのまま廃人になる人もいれば、ふと目覚めてノーベル賞を取る人もいます。
善悪抜きにして、それが文化なのです。そして、現役の学生やOBOGどころか、もはや教授や、街全体までもがその文化をどこか誇りに思っています。(私自身、この章を書く時にどこか鼻が高くなっている自分に驚きました)
これはなにも京都大学だけではありません。全体的に、京都にはのんびりした雰囲気の大学が多いように思えます。
「大学生は人生の夏休み」なんて言われますが、その極値のような、浮世離れした時間感覚を京都の大学生たちは持っています。無敵すぎて、ほとんど貴族と言って良いほどですです。
先輩の長い教え
そんな大変長い夏休みを経て、私はいつの間にか起業家を志すようになりました。そして沢山の先輩に会ってアドバイスを集めていました。
京都大学の先輩起業家たちは、他とは違う一風変わったアドバイスをくれました。
朝から晩まで任天堂のゲームをやりなさい
ジブリを見なさい
麻雀で頭を鍛えなさい
寺や神社に行きなさい
友達ができる飲み会に出来るだけ行きなさい
最低2年は留年しなさい
それは多くの人が私に授ける、「どれだけ生産的に無駄なく時間を使うか」というアドバイスとはまるで真逆のものでした。
「なぜですか?周りの起業家志望はそれはもう一生懸命に働いています」と聞くと「数億円の小金持ちに出来るだけ早くなりたいというだけなら、それでもいい。世の中を変えるホームランを打ちたいのなら、時間が使えるうちに出来るだけ世の中にある感動を知りなさい。それが日本にしか無いものだとなお良い。」と言われました。
常軌を逸した仕事を成し遂げるためには、短期的で常識的な「生産性」というものに囚われるのはやめなさい。という、目から鱗のアドバイスでした。
その言葉を聞いた私はその後、教え通りすぐに留年し、日夜ゲームやテントサウナや散歩に勤しみ、「海外行ってみたら?」と言われるとすぐに行き、とにかく好奇心の赴くまま従って行動しました。
そのうち、お金も尽きてきたタイミングで、絵を描いて売りたくなったので描きました。そうして生まれたのがVeryLongAnimals(ベリロン)です。
ベリロンが生まれた理由と、たった一つの戦略
「ベリロンってどうして思いついたんですか?」
なんてよく聞かれますが、前述通りノリで作ったものです。なので、思いついた理由は特に無いというのが答えです。
強いていうのであれば、京都で過ごした長く尊い時間がそうさせたのだ。と今では思っています。なのでこのnoteを書きました。
そんなベリロンの運営チームで共有している戦略は、とにかく長くやる。ということです。
他のNFTだと、短い間は盛り上がるのですが投機的になり過ぎてすぐ人がいなくなってしまったり、運営の人も途中でやる気をなくして?しまったり、とにかく早く収束してしまいがちです。
「長くやってるだけで、多分いける!」そう言って運営しています。
この先も愛される続けるものは、愛され続けた時間の長さが大事であると考えています。
そう決心して、先日、私にホームランを打つためのアドバイスをくれた京大の先輩起業家に、ベリロンのことを報告しに行きました。
「おかげさまで、ホームランの種を見つけました。長い動物を、できるだけ長くやっていきます。」
そう報告しました。
「そんな意味不明なことは、早くやめなさい。」
そう言われました。
おしまい。