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中国における債権回収についてわかりやすい紹介

世界の経済情勢は相当不況と確実に言える状況になってきましたね。実際のところ、マクロの観点からは金融周期というものがあって、要は、周期的にも、そろそろ不況かな?という時期でもあります。具体的な原因としては、アメリカの金利上げ(金融緩和政策の反動)による世界への影響、ロシアのエネルギー資源政策、コロナによる経済活動の鈍化、などが挙げられます。

こういった環境、情勢の中、不良債権問題がまた突出してしまいではないかと思い、中国における債権回収をわかりやすく紹介したい次第です。また、本文は中国で会社や子会社を持つ場合生じた債権のみならず、中国から商品を輸入する場合の債権回収も意識して作成しました。

そもそも債権回収とは

債権回収の場合、その債権の種類はいわゆる金銭債権と限られます。金銭債権とは、広義的には金銭の給付を目的とする債権です。我々は社会活動の中に、常に経済活動を行っています。そこで一般的の感覚で「お金を貸したから」で生じた金銭債権のほか、企業経営活動におけるいわゆる売掛金(売掛債権)も金銭債権であり、民事における損害賠償責任と相対する損害賠償債権も金銭債権であります。

※物やサービスを買う側の債権者は、債務履行の遅延に遭う場合、債務者に求める内容が、基本的に契約の約束通りしかなりません。ただし、遅延履行のタイムロスで生じた損害に関して金銭債権が生じる可能性があります。債務不履行に至っては、契約が解除され、損害賠償を求めることができます。

債権回収は名称通りで、債権を回収するものであります。個人的には、債権の実現、と表現したほうがよりわかりやすいではないかと考えています。ちなみに債権回収は中国でも債権回収と言います。また、完全な互換ではないですが、一種の潮流として、最近は“不良資産”と呼称するケースが多いです。経済界ではよくある、少しでもポジティブに見せる名詞遊びですね。

日本の債権回収との違い

端的に言えば、中国における債権回収は、プロセス的に日本とさほどの大差がありません。もちろん手続法的にはかなりの相違があります。しかし、民事の法理は共通していますし、実際日本法から輸入するものも多かったので、弁護士などに依頼する債権者からすれば、あれほぼ同じなのでは、と感じてしまうかもしれません。

ほかに、文化がもたらす相違もあります。例えば日本なら訴訟沙汰はわりと大事件ですが、アメリカほどはないですが、訴訟に慣れているような個人、会社が、中国ではそこそこいます。

債権回収の一般的方法とプロセス

(WORDからペーストしたものですが、番号振りがバグったようなのでご了承ください)

  1. ご自身、または弁護士を通して債務者に催告を行う

    1. 事情を一番熟知しているご自身による催告は言うまでもありませんが、弁護士を通して催告する場合、証拠が十分で、且つ裁判沙汰になりたくない相手であれば、期待できる債権回収手段と思われます。具体的な方法は通常、電話またはより正式な催告書送付が存在します。

  2. 債務者の状況について確認・調査

    1. 債務者の名称、債務者の住所、組織機構番号(会社のIDみたいなもの)、身分証明書(マイナンバーみたいなもの)等の確認。債務者の資産状況を調査。

    1. 時効確認

  3. 督促手続(支払督促)

    1. 債権債務関係がシンプルな場合、民事訴訟より効率な督促手続を通して債権回収したほうが望ましいと思われます。裁判所に申し立て、債権の認めを得て、支払命令を債務者に発送することになります。債務者が支払命令を受け取ってから15日に支払いまたは異議を行わない場合、裁判所に強制執行を申し立てられます。

  4. 民事訴訟

    1. 民事訴訟は複雑なものであり、改めて紹介したいですが、決め手はやはり証拠となります。

    1. 調解 中国特色の法制度の一つとされていまして、裁判所が立会人のような立ち位置で、まず争い双方が和解案について合意し、それから裁判所より調解書を作成し、争い両者より署名しそれを受け取ることになります。そこから争い双方は調解書における合意内容通りで実行することになりますが、不履行の場合、調解書に強制執行の効力を持つようになります。

  5. 強制執行

    1. 訴訟で勝って、被告がおとなしく債務を完済すれば債権回収完了となります。しかし訴訟まで応酬する相手であれば、どうしても支払いたくない被告も少なくなりません。そこで、裁判所に強制執行を申し立て、被告の財産に対して強制執行を行うことができます仮に執行できる資産がないなら長期戦となります。

    1. ただし訴訟を通しておけば、裁判所権限に債務者の資産を調査してもらう請求ができます。また、弁護士により裁判所に調査状の発行を請求し、裁判所に認められると、被告の不動産、車、有価証券等財産を調査することができます。

  6. 時効について

    1. 通常債権の時効は三年で、国際貨物輸出入契約及び技術輸出入契約で生じた争いの時効は四年となっています。訴訟時効の「中断」は、時効を一から計算し直す制度で、日本の「更新」に当たります。債権者が債務者に履行請求を行うだけで訴訟時効の中断が成立するので、債権者からしては、日本民法より有利と言えます。その他の中断事由は、債務者が履行義務を認める場合、債権者が訴訟か仲裁か、訴訟や仲裁と同等効力のものを起こす場合があります。

    1. 「中止」は、日本民法「完成猶予」に似たような趣旨の制度です。

    1. 強制執行申立の時効は二年、債権の中止、中断制度に準拠するものと定められます。

最後に


以上はあくまで一般的な債権回収の方法でして、債権回収の本質は債権の実現にあります。債権債務の相殺、債務整理、債務の株式化など、やや金融寄りの債権回収方法も存在します。それぞれビジネスの事情や、人的関係などの都合が異なるので、最善の策はこれと一概には言えません。最善の策があるとしたら、こういった事情を徹底的に分析し、優先順位をつけてから行動したほうが望ましいかと思われます。

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