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あなたがつくる、ちょっぴりの箱

自分がどうしても好きになれなかった

自分が嫌いな時間が人生の中で長すぎた。
と同時に自分のことを好きになろうともがいていた時間も長かった。

思えば、あの時の自分は“嫌いな自分”を自分ではないと非難し続け、自分を好きではない自分は、最低だ最悪だ、人生をやめてしまうべきだとずっと考えていた気がする。

なんて、そんなことも東京の喧騒に揉まれ、毎日忙しさに溢れながら生活と仕事を過ごしている私はあの時の気持ちについて考える暇もなくいつしか生きるようになっていた。

ある日、

その日は、会社で毎月行われている社長研修の日だった。社長研修というのは、社長と同期を含めた数人で課題図書を読み、その内容を一人一人がプレゼン形式で発表し、それについてディスカッションすると言う内容の研修だ。

その月のテーマは「組織」で、私が選んだ課題図書は「マッキンゼー流 最高の社風の作り方」だった。組織というと会社制度とか文化とかその会社の意思やビジョンみたいなものが中心に描かれているかと勘ぐってはいたが、読んでみるとそれはの話だった。

デザイナーなら中心から掴めと私の尊敬するデザイナーの先輩はよく言っていたが、それを思い返して考えてみると、やはり会社の中心も基本はであり、組織もその中心はなのだ。
そんなことも思い出しながら熟読していたところ、その本の中で、興味深い実験の話を知った。

非難バイアスと10セント

その本の中で書かれていた実験は、

今のようにスマホもない時代、あなたは買い物をしようとショッピングモールへやってきている。しかし何を買うのかのリストを忘れてしまった。あなたは仕方なく近くの公衆電話を使い家族に連絡し、買うもののリストを聞き出し電話ボックスを出た。するとちょうど目の前のサラリーマンがフォルダを床に落としてしまい、書類が地面に散乱してしまっているのを目撃してしまう。

あなたはその人を助けるだろうか?
という実験だった。
その著者は、色々な企業のトップたちにその質問をしたところほとんどの人たちは「助ける」と答えたそうだ。しかし同じ状況をセッティングし、データを取ったところ実際に助けたのは全体のうちわずか4%だった。

その結果を先ほどの企業のトップたちに伝えると「それはその人の育ちが悪いのだろう」や「学歴がないのだろう」とその実験結果には関係のない的外れな非難をし始めたという。

これが組織の社風を良くないものにしてしまう一つの要素である非難バイアスというものなのだそうだ。何か良くない結果、自分に対して面白くない結果を招いた時に、そのもの、またはその人に対して非難的な目線でものを言ってしまうということであり、それは実験結果や目的に対して間接的な動機となってしまうため、要するに組織としての効率を悪くしてしまうようなのだ。

しかし、この実験は続きがあった。実はこの本を読んで私はこの実験の続きの内容が一番重要なのではないか。と感じた。

今回はその実験にほんの少し、ほんのちょっぴりも変更を加えて行った。電話ボックスの中に見つけられる場所に10セントを置いて実験したのだ。あなたはその日、10セント分、ほんのちょっぴりリッチになった。すると今度は結果が変わった。前回の実験の結果は4%だったが今回はなんと88%の人間が書類を地面にばら撒いてしまった人を助けたのだ。

非難バイアスを取り除くことは難しい。うまくいかなかったことに対して人を悪意という間接的な理由で非難してしまうことは誰しもあることだろうと私は思う。デザイナーなら中心から掴むという言葉からならうならば、非難バイアスをしてる人を変えるより、電話ボックスで助けてあげられる動機を与えてあげられれば良いのではないか。と僕は考えたのである。

この実験の結果から気づくことは、人はほんのちょっぴりの幸せを感じることができれば、それがどれだけちょっぴりなものであろうともそれ以上のパフォーマンスを発揮することができてしまうということだと僕は考えている。

ここで、ふと冒頭で描いた自分を好きになれなかった時の自分のことを考えた。

あの日、僕は僕を幸せにする10セントを見つけようとしてただろうか?

僕は自分の人生において自分を好きでいてあげられる時間が極端に少なかった。
僕は僕を嫌いなままである。生まれてから今までずっとそうであった。だからこれからもずっとそうだ。

自分を好きになれないのは、
今日もいいことも何もなかったのは、
自分が幸せになる才能がないからなんだ

と思っていたことに、なかなか時間がたった今気がついた。本の中では非難バイアスは基本他人に対して抱くものであると同時に自分にでさえ非難バイアスをかけてしまうことも可能なんだと書かれていた。

私は私を非難するバイアスを自身にかけていたのでした。
組織や社風の話を書いているこの本を読んでいるはずなのに、僕はずっと自身の人生や自身の大切なあの人についての考えを広げていた。自分と誰かを通して、人と人の関わり合いを考えていく。それがつながりを生み、いい組織を生み出す。大きいものからではなく小さい小さい中心をまずは掴んで考えろ。とまさにこの本入っているような気がした。

あなたの10セントを見つける

非難バイアスを他人に向けてしまう人は少なくないだろうと思うが、自分に対して非難バイアスという悪い魔法をかけてしまっている人は僕を含めもっと多いのではないかと感じる。自分の人生を卑下しない人なんてほぼいない。いい日が今まで毎日続いている人なんていないと思う。そんな最低な日に直面した時、ほかに誰も責められる人がいない場合、あなたはきっと自分を非難してしまうのではないか。

でもこれはただの魔法であるから、大丈夫だと言いたい。非難バイアスは先天的なものではないため、その魔法を解くことが必ずできるということだ。

あなたのDNAにあなたを嫌う遺伝子が含まれているわけではないんだ。

無責任ではあるが、僕はあなたに大丈夫。と言ってあげたい。
根拠はない。あったこともないあなたにそれでもなお、大丈夫と言いたい。

あなたがあなたにかけた悪い魔法だから、
あなたが解くことができる

あなたが笑うための“ちょっぴりの箱”はあなたが用意する

実を言うと、本当はここでその魔法を解く方法を知りたかったし、みんなに共有をしたかった。
が、未だに僕もわかっていないのが実のところだ。無念。
でも、思うのはきっとやり方はみんな違うと思っていて、しかしやるべきことはいくつかあると思っている。その中で一番大事なのは、

あなたの10セントを入れる箱をあなたの中に作ってあげる
だと思う。

ああ、まあまあ色々感情がこもりすぎて、話が相当脱線しまくっていたので一度冷静にな話を戻すと、これは社長研修で読んだ本「マッキンゼー流 最高の社風の作り方」をまとめたプレゼンをnoteにまとめた内容である。

研修の内容は「組織」そして本の中では「いい組織を生む社風とは」について様々な角度から語られている。

そこでは非難バイアスの話から始まり、電話ボックスの実験やそのバイアスは自分にもかかってしまうというものであった。

そして人はちょっぴりも幸せでそれ以上のパフォーマンスを発揮することができるということ。
社風とは社員が作り出す風のことだと思っている。それが強すぎてもいけないし弱すぎてもいけない。ちょうど良い風を周りの社員と一緒に起こせる会社がいい組織なのだろうと思ったのだ。だからこそ今回は個人に注目したいと思った。

幸い僕が働いでいるGoodpatchという会社では、そのほんのちょっぴりの幸せをプレゼントするという文化がすでにとても根付いている会社だった。

褒める文化なんて普通であるし、
些細なことでもありがとうと大袈裟すぎるくらいに大袈裟なトロフィーが贈られる。それをみんなが称賛してくれる。ゴミを捨てに行っただけじゃないかなんてみんな思わないんだ。本気でありがとうと褒めてくれる。

ほんのちょっぴりの10セントをこれでもかとこの会社の環境はすでにたくさん用意してくれていることに今一度改めて、気がついた。

しかし、どうだろうか。
どれだけ環境が10セントをそこら中に置いておいていたとしても

あなたがそれを見つけられなかったら。
見つけたとしてもそれを受け入れなかったら

あなたは救われるだろうか?
あなたはいい風を起こすことができるだろうか?

誰かがあなたを称賛している。認めてくれている場合に、非難バイアスという魔法にかかってしまいそもそもその意見すら受け入れないなんてことがあったらたまらないじゃないか。と僕は思う。

重要なのはあなたがあなたの10セントを見つけることだと思う。
もし見つけられたら、それがどれだけ自分に見合っていないお門違いだと思っていたとしてもその10セントを入れておくための箱を自分の心の中に作って入れておくだけ。それだけは出来ないだろうか。 


きっと非難してしまう日もある。不幸で自分を卑下してしまう日もある。しかし、僕はそれを肯定する。自分自身の人生においてもそれを大いに肯定する。この本を読んで、大事なのは非難し続けないことだと思う。今日不幸でも明日10セントが見つかるかもしれない。そんな環境に私はいる。それを見つけに行こうくらいの軽い気持ちで僕は働いている。

もちろんこれは大きく言えば綺麗事で、わかっちゃいるが難しい問題の代表例だと思う。だからこそこの記事を読んでくれて、かつ自分で自分の10セントを見つけられている人、箱を作ることができている人はその方法をみんなにシェアしてあげて欲しいと思う。方法はひとつじゃない大きな綺麗事みんなでもっとみんなのもののみんなのための綺麗事にしてあげて欲しいなと思う。
僕も正解は出ていない。それをずっと考えることが今後ずっと組織に属している自分にとって大事なことなんだと思っている。

昔の自分に少しだけアドバイスできるなら、少しだけ言いたいことが今はある。

自分を好きになる努力なんてしなくていい。
ただ少しほんの少しだけのラッキーを勘違いするほど嬉しくなるように感じられればいい
偶然自分を好きになれるその時に、いつか会えるように。
あなたを称えるすべての事象をあなたの心の中に入れてあげてください。


Illustration by haniwa



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