座り読みの綾子 10
前川孝夫は一人で食事をし、毎日庭に出てボールを投げていた。
多田くんは教育熱心な両親のもと、学校でもリトルリーグでも相変わらずの真面目さを発揮していた。
レイは図書室に入り浸り、ユリは少しづつ母親に反抗するようになった。
綾子は総ざらいの翌日まで、連日稽古に通った。先生のお宅の舞台は小さいから、ケイさんのお宅のすごく大きな舞台を借りることもあった。稽古着の浴衣を学校まで持っていき、授業が終わるとまっすぐに稽古に向かった。少しずつ綾子の口数が減って行き、前川孝夫にはそれが物足