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遙かなる時空の中で7 全体のまとめと感想(ネタバレなし)

※個人の感想です。
※他ナンバリングとの比較あり。
※良かった点だけでなく、イマイチだったなと思った点も平等に理由を述べて書いてありますが、それを「作品を貶した。ひどい」と捉える方は閲覧をご遠慮下さい。

※キャラやストーリーのネタバレ、イベントの大きなネタバレはしていませんが、それでも「ネタバレ」だと感じる範囲は人それぞれなので自己判断で閲覧してください


 結論から言えばシナリオ、キャラともに良いゲームだった。スチルも美しく、ストーリーも練られている。故に、これを買って損したと嘆く人はあんまりいないと思うが、それでも「このゲームに向いていない人」「(他のナンバリングと比べて)イマイチだと思った人」はいると思う。
 これから『遙か7』の購入を考えている方の参考になればと思うので、良かった点もイマイチだった点も包み隠さず述べたい。
 重ねて言うが「個人の感想です」。


 『遙かなる時空の中で7』は、5年ぶりのシリーズ新作。
 Switchでプレイできるのは今のところ6と7だけなので、今作が遙かデビューだという新規プレイヤーもいると思う。「遙かシリーズに興味はあるけどいきなり『7』からプレイして大丈夫かな」と不安に思われる方いるかもしれないが、そこは特に問題ない。
 このシリーズはナンバリングごとにキャラも違うし、ストーリーはそれぞれ独立しているからだ。もちろん、1から全部やっていた方が世界観や特殊用語(白龍、黒龍、逆鱗など)をすんなり理解できるし、戦闘画面で怨霊に出くわした時に「お久しぶりです」という気持ちになれる。
 だが、世界観も用語も『星の一族(ヒロインを支えるポジションのキャラ)』がストーリーの中でちゃんと説明してくれるので新規プレイヤーでも困ることはないし、むしろ新鮮な気持ちで物語に入れるのではないだろうか。

 あと「歴史に詳しくなくても楽しめるだろうか」という声を聞いたが、そこも問題ないと思う。むしろ、歴史に詳しい人より、「どの武将が関ヶ原の東軍か西軍かさえわからん」という人の方がストーリー展開にハラハラできて良いんじゃないだろうか。
 それに、そもそも遙かシリーズは歴史ものではなく『日本に似た場所』が舞台の、いわゆる「異世界トリップもの」なのである。
 ヒロインは現代日本から異世界に召喚され、『龍神の神子』としてその世界を救う。細かいところを省くと、これが遙かシリーズ全てに共通するストーリーだ(ただし『4』だけは少し特殊)。だからもし、歴オタがこのシリーズについて史実がどうのこうのとごちゃごちゃ言ってきたら『これは異世界の話です。実際の戦国時代に怨霊は湧きません』と銀魂の作者みたいな返答をぶつけてやればいい。

 次はヒロインについて。
 ヒロインの七緒は可愛いくて適度に鈍感、ネオロマンスシリーズらしく言動にクセがないタイプである。個性が爆発しているヒロインではないので、俯瞰型プレイヤーも憑依型夢女プレイヤーも安心だと思う。
 ただ、歴代の遙かヒロインと比べると、七緒はかなりのチートキャラなので、そこが気にかかる人はいるかもしれない。
 なにしろ織田信長の娘として生まれ、最初から『神子』として育てられたという設定だ。記憶を封じられていたせいで忘れてしまっているが、七緒はもともと異世界や龍神や神子についての知識を持っている。
 また、『織田信長の娘』という続柄を持つということは、異世界に戻った際には権力者に目通りがかなう『姫』としての立場を持っているということでもある。『星の一族』という神子の守り役ははじめから協力的で、異世界での衣食住は完璧に提供される。八葉のうち二人は幼馴染とヒロインの兄だから、一人ぼっちにはならないし、他のメンバーも最初から七緒に力を貸してくれる。
 それに、七緒は部活で薙刀をやっているので、最初から自分で戦うことが出来る。条件が整えば『龍穴』を通って現代日本に戻ることも出来るし、戦国時代に現代アイテムを持ってくることも出来る。
 つまり、歴代神子たちが苦労してきた部分で七緒はほとんど困っていない。だから、その盛りだくさんの設定に都合の良さを感じて「過去の神子たちの苦労はいったい…」という気分にならなくもないのだ。ただ、七緒のキャラそのものが悪い訳ではなく、過去のヒロインと比較しての話なので、『7』が遙かデビューだという新規プレイヤーはそんなに気にならないと思う。

 次に攻略キャラ『八葉』だが、いかにも戦国時代が舞台らしい有名武将から義理の兄までなかなか幅広い。武将だけではなく色々なポジションの男がとりそろえられているので、ストーリーに幅があって面白かった。

 そして敵キャラだが、こちらもそれぞれ魅力的。しかも『7』は、攻略キャラのストーリーによってラスボスが違う。ルートによって敵に回ったり、途中から出てこなくなったり、味方になっていたりもするのだ。
 それが面白いところでもあるのだが、困ることもある。ラスボスだった相手が別ルートで味方として登場した場合、そいつを全然信用できないのである。当たり前だ、こっちはさっきまでそいつと戦っていたのだから。
 また、敵キャラの過去や闇堕ちに至るまでの描写が丁寧なルートと適当なルートの差が激しい。この点については最後にも述べるが、攻略する順によって敵キャラから受ける印象がかなり違う気がする。「敵なんてどうでもいい」という人もいるだろうが、ストーリーを楽しむために、個人的には敵キャラがきちんと描かれているルートを先にやったほうが面白いと思う。

 あと、遙かシリーズといえば怨霊との戦闘がある。
 マップ移動の際に起きる戦闘によって攻略対象との絆が深まりアイテムが得られるため、それ無くしてエンディングにはたどり着けない。そもそも神子とは怨霊を封じる存在なので、戦闘は不可避だ。
 だがラスボス含めて戦闘で勝つのはそれほど難しくはないので、普通にマップを動いて経験値を上げていけば大丈夫だろう。自分が操作して戦ってもいいし、オートにすることもできるので困ることはないと思う。2周目以降は中ボスも戦闘スキップ出来るし、経験値やアイテムは得られなくなるが怨霊に遭遇しないようにも出来る。
 古参プレイヤーが『7』の戦闘が好きとか嫌いとか言っているのは、ナンバリングによって戦闘の操作や画面が違うためだ。神子の武器もそれぞれ違う。プレイヤーによってお気に入りの『戦闘』ナンバリングが違うため、『7』の戦闘に文句を言ったり擁護したりと、人によって感想がバラバラなのだ。
 私は特に操作しづらいとは思わなかったが、ここは人によって好みが違う。こればかりは実際にやってみないと自分に合うかどうかわからないので、人の感想はあんまり参考にしなくていいと思う。機会があれば、新規プレイヤーも他のナンバリングをやってみて、お気に入りの戦闘を見つけて欲しい。
 というか、戦闘の中身よりも問題なのは、一周目に得た経験値を2周目に引き継げないことだ。せっかく強くなったのだから2周目にも持ち越しさせて欲しかったと思う。

 そしてストーリーだが、どれも面白くて最後の一人まで楽しめた。内容もバラエティ豊かだし、セリフはどれも美しい。過激な描写慣れした乙女ゲーマーには甘さが物足りないかもしれないが、その分上品だし、乙女ゲーらしいときめきシーンももちろんちゃんとある。
 だが、正直かなりストーリーが長い。
 良く言えばボリュームがあり、悪く言えば冗長なのである。
 歴代シリーズの倍近くあるのではないだろうか。しかも、上記のように合間に戦闘が挟まるのでなおさら長く感じる。
 共通ルートのあとにキャラ個別のルートが開放されてエンディングに向かうのだが、共通ルートだけでもかなりの長さだ。戦国末期の情勢について、各勢力について、龍神の神子について、ヒロイン七緒の幼少期について、敵キャラの背負う背景について、とにかく説明すべきことが多いからだと思う。
 この長い共通ルートがあるからこそ、それぞれの個別ルートが輝くのだが、それをわかっていてもなお長いと感じる。シナリオがいいので途中で飽きたり嫌になったりすることはなかったが、それでももう一回最初の最初からやろうとする気が失われる長さだ。
 もちろん、分岐でセーブしてそこから次の攻略に移れば、かなり尺を抑えられる。だが、一人攻略する度に最初に戻って新たな気持ちで物語を始めたいタイプのプレイヤーにはキツい仕様なのではないだろうか。
 スキップ機能はあるのだが、それを駆使してもかなりのボリュームだし、エピソードを詰め込みすぎて「せわしない」と感じたルートもある。
 また、龍穴を通って現世に戻ることができるという設定がついたことで、現代アイテムを異世界に持ってきたり、それが恋愛イベントのきっかけになることがあり、「なんて都合の良さだ」と思うシーンが何度かあった。また、この龍穴はどこでもドアみたいに異世界のあちこちを繋いでいるので、ピンチの際にそれが使われると「便利になったもんだな…」と少し冷めた目で見てしまう。
 ヒロインに付けられた属性や能力の高さ、龍穴がどこでもドア、現世が四次元ポケットのように使われることが「ストーリー上の都合のよさ」に感じられてしまったプレイヤーは、古参新規を問わず存在するのではないかと思う。シナリオが長く丁寧、そして戦国末期というシビアな設定だからこそ、ここぞという時に便利アイテムが登場して一気に片がつくとなんだか拍子抜けしてしまうのかもしれない。
 レビューや感想等でストーリーに不満を述べている人の多くは、ストーリーそのものではなく、おそらくこの「突如として現れる都合のよさ」が嫌なのではないかと思う。
 繰り返すが、ストーリーそのものは素晴らしい。だが、上記の部分が苦手だと思う方、長いシナリオを読むのが苦手な方は要注意だ。

 操作については、大きく気になる部分はなかったのだが、あえて言うなら選択肢画面のセリフ選択が確定するのが早い。これは一度やってもらわないとすごく説明が難しいのだが、ストーリーを早く読み進めようとするあまりボタンを連打してしまうタイプのプレイヤーは要注意だ。
 また、私のようなせっかちプレイヤーは、マップを大きく移動する度にいちいちロード画面になる待ちの時間が面倒に感じた。

 まとめにうつる。

・遙かシリーズはナンバリングごとにキャラも話も違うので、『7』から始めても問題ない。

・戦国時代が舞台だが、歴史に詳しくなくとも特に歴史が好きじゃなくても楽しめる。むしろ詳しくない人のほうがいちいち突っ込まないで済むので向いているのではないか。

・ヒロインはネオロマらしく可愛くて上品、かつ性格に個性が強すぎないので夢女も俯瞰方も安心である。だが、かなりのチート持ちなので歴代神子を知る古参はそこが気になるかもしれない。

・攻略キャラは数も中身もバランスがいい。

・戦闘は普通。操作も特にやりづらいことはなかった。ただ、せっかく上げた経験値を2周目に持ち越せないのがキツい。

・ストーリーは良く言えば丁寧で、ボリュームがあり読み応えがある。悪く言えば長い。
 また、龍穴、現世アイテムがかなり都合よく使われるシーンがあるので、そこを歴代作と比べてしまう人がいるかもしれない。

 以上である。

 上記を踏まえて、このゲームが自分に向いているかどうかを判断していただけたら嬉しい。ゲームレビューには毎回書くのだが、乙女ゲーに限らずどんなゲームでも万人に受けるものはない。
 ゲーム性など一切無いノベルゲームが好きな人もいれば、シミュレーションが好きな人もいる。好みのキャラ、cvを好きな声優があてていたらストーリーはいまいちでも購入して正解という人だっているし、ネオロマから出たものなら全肯定という人もいるのだ。
 だから、面白い?と人に尋ねたら違う言葉が返ってくるかもしれない。最終的に自分に向いていそうかどうかで判断するしかないと思っているが、この記事が少しでも参考になればと思う。

 最後に、このゲームをやってみよう!と思った人向けに『おすすめ攻略順』を書こうと思う。
 誰かに聞いたところで正解がわかるわけではないし、この世に『攻略順の正解』は存在しないが、個人的なおすすめ攻略順なら話すことができる。

 一周目におすすめなのは『宮本武蔵』『柳生宗矩』『黒田長政』の誰かだ。この3人の中なら誰が最初でもいいが、この3人を始めに攻略した方がいい。
 理由はラスボスの存在である。
 前述のように、遙か7はラスボスがルートによって異なる。そして、ラスボスの敵対背景が詳しく説明されているルートと、イマイチ説明がないルートが存在するのだ。「敵のことなんてどうでもいい」と思う方もいるだろうが、このゲームはストーリーがかなり重厚なので、物語をより楽しむためには敵が敵たる理由も理解した方が面白いと思うのだ。
 武蔵、宗矩、長政の3ルートは全てラスボスが違い、その3人の敵についてそれぞれ他よりも詳しく描かれている。だから、この3ルートを先に攻略してから他のルートやった方が色々理解しやすく、納得もできると思う。

 この3ルートを終えたら、次は『阿国』『天野五月』『佐々木大和』『直江兼続』の4ルート。
 こちらも誰からやってもいい、と言いたいところだが、でかいネタバレを持つ阿国と五月は後に回せば回すほどバレの危険があるので、最初の3ルート(宗矩、武蔵、長政)の直後がいいだろう。
 宗矩と同じラスボスに当たる『佐々木大和』は、宗矩の後でさえあれば順番はどこでもいい。
 『直江兼続』も最初の3ルートの後ならいつ攻略してもいいと思うが、西軍(敗軍)の兼続(と幸村)ルートはプレイヤーの精神がかなり消耗するので、兼続→幸村とぶっ続けてやるのは危険かもしれない。
 そしてラストは『真田幸村』がおすすめだ。
 理由は、このルートが他のルートで出てきたエピソードの多くに触れているからだ。他のルートの前に幸村ルートをやっていると、当然それには気付けない。幸村ルートの攻略がラストかどうかで印象が違ってくると思う。
 ちなみに私が実際に攻略した順番は『武蔵』→『五月』→『宗矩』→『大和』→『長政』→『阿国』→『兼続』→『幸村』である。

 最初の武蔵とラストの幸村はいいとしても、長政と阿国はもうちょいはじめの方でやればよかったなと思った。
 その経験と反省を活かしての『おすすめ攻略順』である。

 だが、他人にいくら「こいつはラストにしたほうがいい」と理を尽くしておすすめされたところで「私は絶対こいつからやりたい」と決めている人もいるだろう。
 好きなキャラから攻略すればいい。それが最善だ。
 だから、この『おすすめ攻略順』はほんとに参考までにどうぞ。

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