刀剣乱舞のゲームと二次創作しか知らない人間が、生まれて初めて2.5次元の舞台「ジョ伝」を観た感想

※個人の感想ですよ

最初に言っておきたいのだが、私のホームは乙女ゲームである。
刀剣乱舞もゲームはプレイはしているが、これまで大阪城を100階まで掘り進めたことはなく、玉集めは一万が最高記録、ただしシールは集めてレア刀はいただく、みたいなヌルいユーザーだ。
アニメ版にも漫画版にも詳しくないが、二次創作だけはしこたま読んでいる。私はそんな審神者だ。
当然、2.5次元の刀剣乱舞のこともよく知らない。2年くらい前に紅白歌合戦で見かけたくらいだ。
キャストの名前どころか刀ステと刀ミュの違いもわからず、「ステ」がなんの略かもわからないまま、私は半額で購入したこのジョ伝を視聴したのだ。ちなみにステがステージの略だということは、後でフォロワーさんがそっと教えてくれた(優しい)。

そんな状態の人間が思うさま書きなぐった感想なので、おそらく的外れだろう。
だが、全くその分野に詳しくない人間が刀剣乱舞の舞台を、ジョ伝をどう思ったのか。それだけでも伝えたい。
舞台やキャストをよく知らない人にあれこれ感想を述べられるのが我慢ならんという方は、退避するなり自己責任で閲覧するなりして欲しい。

さて、ジョ伝を手に入れ、ステの略がステージだということはわかったものの、今度は「ジョ」が何なのかがわからない。
「ジョが何かわからん」とツイートしたら「むしろわからないままでいい。何も調べずに観ろ」みたいなリプをもらった。相分かった、と、それから2週間後くらいに視聴を開始した。

山姥切の語りと冒頭のやりとりから、彼がどうやら近侍で部隊長で、この本丸の初期刀らしいとわかる。山姥切役の役者さんは唇が赤めの中性的美形だ。
刀剣男士たちは時間遡行軍の動きがある時代に飛び、そこで歴史改変を阻止するのが役目だが、今回はどうやら用意万全で出陣した先ではなく、調査中に偶然時間遡行軍と会ってしまったようだ。ゲームでいえば、適当な装備で送り出した遠征先で敵に遭遇した感じだろうか。彼らは、すぐに戦闘に入るか本丸に一度帰るかでいきなり揉め始める。
隊長の山姥切は、自信が無さそうなわりにすごく任務に必死というか、戦功を焦っていて余裕がないことが役者さんの演技から伝わってくる。また、他の刀剣たちの意見や連携もバラバラでまとまりがない。これらの事から、「もしやこの部隊はかなり未熟なのでは」とわかる。
あと、私の想像の10倍くらい同田貫(ビジュアルの再現度がすごい)がフレンドリーだった。私も今日から「ばみ、へし、まんば」と呼んでみたい。
だが、この部隊が「未熟」であることが舞台後半に活きてくるのだ。

さて、不意打ちに近い状態で戦闘に入り怪我をした骨喰と、その付添に小夜と長谷部を残して二手に分かれた刀剣たちだが、ここで山姥切チームは謎の武将に遭遇。
北条攻めのさなかであること、「とものぶ」という呼びかけとその彼の得物が槍であること、あとから出てくる年嵩の武将の皮膚と杖から「ジョは如水のジョ!!」と判断する私。
私は舞台には全然詳しくないが、乙女ゲーム育ちなので、大体の有名武将とは交際したり結婚したりしたことがあるのだ。当然(なのか)、黒田官兵衛も元カレの一人だ。

落ち着いた演技の黒田官兵衛役とは対象的に、素人が見てもやけに大袈裟な演技の長政役。役者さんの癖なのかな?と思って見ていたのだが、このわざとらしさの理由はやはり後半でわかる。
山姥切、同田貫、山伏の三振りは、「豊臣秀吉が暗殺の危機にあるので護衛してほしい」と官兵衛に依頼されてそれを請ける。北条攻めの最中に豊臣秀吉が死んだら歴史が変わってしまう。時間遡行軍の狙いはそれに違いないと判断したからだ。
ここで私は、初対面の人間たち(いかにも怪しい風体の)にあっさり主君の護衛を任せようとする官兵衛に違和感を覚えた。初視聴の時にそう思った人は私だけではないだろう。
他にもこの舞台の序盤にはちょいちょい「ん?」となる部分がある。それほど強くは引っかからないものの、何となくおかしいなという程度の違和感がたくさんあるのだ。
例えば、長政の大袈裟な演技、官兵衛の護衛依頼、後から出てくるもう一振りの山姥切、矢文、唐突に山伏に抱きつく骨喰、折れたはずなのに復活した山伏、絶妙なタイミングで牢屋に現れて長谷部たちを助けてくれた長政。
いきなり骨喰に回想をぶっこんできた三日月と、もう一振りの山姥切についてだけはちょっとどころか大いに引っかかるのだが、それ以外は「ん?なんで?」「なんかちょっと変だな」と思う。
実は、これらは意図的に起こされた引っかかりである。たくさんの小さな違和感は全て後半への伏線になっているのだが、初見では当然そんなことは判らない。
味方だと思ってた弥助は敵になるし、時間遡行軍のことも刀剣男士のことも知っているし、すごい剣を持っててめちゃくちゃ強いしで混乱に陥る山姥切、山伏、同田貫の三振り。
「色んなことがいっぺんに起こりすぎてわけがわからねえ!」と叫ぶ同田貫に心の底から同意した頃、牢にぶち込まれていた長谷部は、助けに来てくれた長政に対して完全に乙女の顔。
しかし逃してもらったものの、山姥切たちと同じく時間遡行軍に追い詰められる。始動してまもない本丸の未熟な部隊は、時間遡行軍にこてんぱんに敗れるのだ。山伏に至っては山姥切を庇って一度は折れかけたほどである。このシーンに限らず、この山伏の兄弟愛とおおらかさ、包容力が序盤からとにかくすごい。山伏役は、笑顔が素敵な男前の役者さんだ。
なんとしても戦功を上げて主に報いたいと意地になっていた山姥切だが、自分を庇った山伏が倒れ、この部隊で一番戦うことに拘ってきたはずの同田貫が「俺たちは負けたんだ!」と悔しさを押し殺して叫んだのを受けて、ついに撤退を決める。

その後、刀剣たちに秀吉の護衛を頼んできた官兵衛が、実はこの事態の黒幕であり、天下を獲るために時間遡行軍を利用していることが明らかになる。また、彼のそばで剣を振るう弥助は、本能寺で信長が討たれた「正当な歴史」に復讐したがっている。二人の目的と、何でもいいから歴史を変えたい(よく考えたら何故なんだ)時間遡行軍の利害は一致。官兵衛は異形の部隊、時間遡行軍を指揮し秀吉に続く鼓星、つまりオリオン座の帯を形作る3つ目の星として輝こうと目論む。オリオン座の三ツ星は戦勝を呼び込む将軍星でもある。

そして場面は変わり、数年後の本丸の様子が描かれる。本丸には新しい刀剣たちが増え、小夜は修行に旅立っている。
みんな着実に経験を重ねて成長しており、山姥切の表情にも余裕が見られる。
例えば戦闘シーンの殺陣を見比べたとしても、私にはどっちがビフォー本丸でどっちがアフター本丸なのか全然わからない。たとえ役者さんが殺陣のうまい下手でビフォーアフターを表現していたとしても、殺陣の良し悪しなどよくわからんので全部すげえとしか言えないし、「戦ってる最中に疲れやすいのがビフォーだな」くらいでしか判断出来ない。だがそんな私でも、舞台前半の山姥切たちと中盤以降の山姥切たちを比べたら、彼らの佇まいとセリフから「こっちの方が強そうやな」とちゃんと判るのだ。

このように違和感なく数年後の本丸に時間軸がシフトしたわけだが、強くなったこの本丸では数年前のあの負け戦が「やばかったこと」として記憶されている。
負けたからというだけでなく、負けたのに何故か歴史が改変されなかったという不思議な出来事としても、新参の刀剣たちに語り継がれているようだ。
そして、そんな中再び小田原攻め前のあの場所で、時間遡行軍の動きが捉えられる。
いざ、出陣。
これはレベルアップした山姥切たちのリベンジ戦であり、今度はきちんと準備をしてからの出陣だ。

今回の出陣には同田貫、骨喰、小夜の代わりに、ソハヤと日本号、博多藤四郎が加わっている。
ちなみに弊本丸にソハヤはまだいない。
私にとってはいろんな意味で「初めましてソハヤ」という感じだが、とにかく陽気そうな刀剣である。華やかな顔立ちのソハヤ役の役者さんがずっと楽しそうな表情なので、アップになるたびにこっちも笑顔になる。
博多はもう「ゲームのまんまだ、すげえ」と思ったし、日本号の役者さんはあまりにも顔が好みであり、彼が我がホームであるネオロマンスの舞台にも立ったことがあるらしいと聞いて「わかる…」と思った。とりあえず、弊本丸でレベル15くらいに留まっている博多と日本号に申し訳ない気持ちになったことは確かだ。

しかしいざ山姥切たちが小田原征伐の地点に着くと、なんとそこには過去の自分たちの姿が。
普通はそんな風にバッティングすることはないらしいのだが、今回は何故かそうなったらしい。
未熟な過去の自分たちが折れたら今存在している自分たちも消えてしまうし、何より「彼ら」では時間遡行軍を止められないことは経験上わかる。
そこでアフター部隊の山姥切たちは、過去の自分たちを密かに護り、さらに時間遡行軍を倒すという二重の戦いを展開していくことに。
ここから前回出陣の場面を表す序章の「序」にかぶせる形で、今回出陣を表す如水の「如」が謎解きのように展開していく。後の「助」を含めて3つの意味があるため、「ジョ」がカタカナ書きだったのだなとようやく分かる瞬間である。
そこから、前半部で感じた小さな違和感が次々に解けていくのはひたすら快感である。

そして、実は官兵衛のみならず長政も時間遡行軍や刀剣男士のことを知っていたことがわかる。ただし、歴史を変えたい官兵衛が刀剣男士を邪魔だと思っているのに対して、長政は官兵衛を止めるために刀剣男士に協力を頼もうとしている。父を尊敬しているので、異形の力を使ってズルしてまで天下を獲って欲しくないと思っている。
長政が最初に出会った刀剣はアフター部隊の強い山姥切たちである。だから、ビフォー部隊が同時にここにいることを知っているし、彼らを父が消してしまわないように動く必要を理解している。
前半部の長政役の大袈裟な演技は本当に「演技」であり、一方で官兵衛があっさりこちらを信用したのも刀剣たちをまとめて消すためだったことがわかる。
前半部、ピンチに現れたもう一人の山姥切はアフター部隊の強い山姥切。唐突に山伏にハグしてきた骨喰はこれまたアフター部隊に増援された未来の骨喰で、山伏にお守りを忍ばせにきた、というように、「如」はこれまでの小さなひっかかりについて「なるほど!」と膝を打つ解決編として描かれる。
舞台は「序」と「如」を行き来して、私達は一度観たあのシーンの裏でアフター部隊がどう動いていたのかを知る。何年たっても外見が変わらない(極にならない限り)男士ならではの演出だと思う。
過去の自分たちを護り、ついに時間遡行と官兵衛、弥助を追い詰めたアフター部隊とその増援。
アフター部隊にソハヤ、日本号、博多というビフォーと異なるメンツを入れたのは、観客がどっちの部隊なのか観ていて混乱しないためだろう。だが、小夜、同田貫、骨喰を増援として送ったあたりに、この本丸の審神者の粋なはからいを感じる。前回の小田原征伐での任務失敗をその時の六振りに乗り越えさせたかったのかなと思うからだ。

さて、パワーアップした部隊は見事に時間遡行軍を倒し、官兵衛と弥助を止めることに成功する。
最後に官兵衛に野望を諦めさせたのは長政である。
また、秀吉は官兵衛を赦して度量の大きさを示す。あそこで「官兵衛と同じくらいすごい」みたいに言ってた相手は竹中半兵衛の事なのだろうか。それを聞いた官兵衛は「光栄です」というような顔をしている。
しかしどうやら官兵衛は「天下獲りをやめた」のではなく、「(時間遡行軍を使っての)天下獲りをやめた」ようだ。その後、官兵衛は秀吉の死後に再び天下を狙うと、後の語りで伝えられるからだ。
官兵衛の関ヶ原での動きについては、有利に領地を得るためという意見もあり、再びの天下獲りについては色んな意見や説がある。だが、この舞台の官兵衛ならまあ、再び天下を狙うだろうなと納得できる。ただし、今度は時間遡行軍になど頼らずに自分の知略だけを頼りに。ギラついていて実にいい。ギラついているわりに、秀吉のことがとにかく好きなのもいい。
官兵衛が時間遡行軍と組んでまで3つ目の星を目指したのは単純に天下が欲しいというより「秀吉が「次の天下は黒田官兵衛」と言ってくれたから、ならばそれを証明しよう!」みたいな、CLAMP漫画の敵のような動機だったのが個人的にすごく好きだった。

私は今、前半部の謎が全部とけてすっきりしているところだが、三日月についてだけはよくわからない。
顕現前の前半で意味有りげに登場したことといい、顕現してすぐに骨喰にお守りを渡していたことといい、まるで顕現前からこの本丸を知っているようで、不思議な存在感がある。ジョ伝以降に回収される伏線なのだろうか。

あとは殺陣についてだ。
刀ステをすすめて下さった方がみんな「殺陣がかっこいいですよ!」と言っていたが、ほんとにそうだった。
暗闇の中ライトの反射が白刃を引き立てて、ワンシーンごとに絵画のようだったし、ゲーム内で聞いたことのあるセリフが出てきて嬉しい。大勢での斬り合いも群舞のように美しかった。
私は大河ドラマを始めとした時代劇が好きなので、打刀や太刀や槍の殺陣については他でもよく見る。だが、短刀や脇差の殺陣はあまり見たことがない。だから、今回見た短刀と脇差の殺陣には特に感激した。
ゲームでも、暗かったり狭かったりするステージでは短刀脇差が大活躍だが、こうして実際に打刀や太刀と戦う短刀脇差の諸君を見ると「マジすげえ」としか言いようがない。
自分の武器に比べてあんなに長い真剣を持った相手を倒すには、白刃をかいくぐって喉元に迫らなければならないのだ。勇気と度胸と腕っぷしが揃わなければそんなことは出来ない。
当たり前の話だが、自分の目でそれを見ると短刀や脇差の男士の技が改めてただ事ではないとわかる。
それに、ゲームに出てくる短刀は少年の姿、それも小学校低学年くらいの身長の者が多い。だから、短刀たちのイメージを壊さずに演じきった役者さんがほんとにすごいと思った。

最後に、長政に対して完全に目がハートマークになっている長谷部がすごく可愛かった。視聴前完全にノーマークだった長谷部に心を奪われるとは思わなかった。
ラストで、長政はじめ、あそこに居合わせた武将たちは刀剣男士のことを口外しないと言ってくれた。
だから長政は「へし切の御刀」を見るたびにあの長谷部を思い出して、一人でふふっと笑うのかなと思うと微笑ましい。
長政さま、優しくてかっこよかったな、わかるで長谷部。
だけど、私はもうすぐ「遙かなる時空の中で7(乙女ゲーム)」を手に入れるつもりだ。そしてなんとそこには攻略対象として黒田長政様がいらっしゃるのだ。
つまり私はこれから黒田長政と恋に落ちる予定なので、ごめんな長谷部。

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