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超初心者による超初心者のための小説同人誌作り

※あくまでも私はこうやって作ったよ〜っていう覚え書き程度のものなので、どのやり方が良いとか悪いとかいう話ではありません。また、推し印刷所は人それぞれですので、そのへんはご了承下さい。

 
 イベントに出てみたい、自分の書いたものを誰かに読んでほしい、今まで書いたものを「本」という形にまとめてみたい。同人誌を作りたいという動機は人それぞれです。作ってみたいけど、やたらハードルが高い気がしてためらってしまう人は多いと思います。これは、そんな方々の背中をそっと押したいと思って書いた記事です。
 ちなみに私は「十年前に絵描きのリア友との合同誌を数冊作ったことがある。とはいえ、一番めんどくさい入稿部分を相方に丸投げしたため、令和の世にいざ個人誌を作ろうとしたらさっぱりわからねえ」という状態の字書きです。自力で本を作ったことはないけど、pixivにはめちゃくちゃ作品があるタイプ。つまり、私は印刷所選びや入稿のやり方、表紙作りや紙選びやその他、何一つわからんまま本を作ったのです。同人誌作りの超初心者です。
 私と同じように「二次小説をたくさん書いてはいるけど本にしたことはない。だってハードル高そうだから」と思ってる方々、とりあえず自分のための本を作ってみませんか?意外となんとかなりますよ!
 ということで、これはとりあえず本文と表紙のある「最低限」の本を作るための記事です。歴戦の同人戦士や、オプションバリバリの凝った装丁の本を作りたい方向けの記事ではありません。また、前述のように私は字書きなので、漫画同人誌ではなく小説同人誌についてです。
 この記事が「これから本を出せたらいいな。自分の本を作ってみたいな」と思っている方々の助けに、ほんの少しでもなれたら嬉しいです。

〈同人小説作りの手順〉

1.本にしたい小説を用意する

 手順といってもやりやすい方法は人それぞれですが、とりあえず何をおいても「本にしたい小説」を用意しましょう。よく「イベントに合わせて本を出す」と聞きますが、我々同人超初心者にはそれすらよくわからんですよね。そのイベントに合わせて本を出すためにはいつ頃までに書き上げていつ頃までに入稿すればいいのか。は?わからん。早割?わからん。みたいな状態です。だから、とりあえずイベント関係なく一度本を作ってみるのがいいんじゃないでしょうか。今は、イベント関係なくBOOTHなどで販売ができます。
 本にしたい小説は再録ならpixiv、twitter、ブログなど今まで自分が書いたものをどこからひっぱってきてもいいです。書き下ろしできるならそれにこしたことはないのですが、とにかく「本にしたい小説」を一つの場所にまとめましょう。ベタ打ちした文章を編集しないといけませんからね。ソフトは一太郎だったり、縦書きアプリだったり、印刷所が用意したテンプレートにそのまま貼り付ける人もいますが、私はWordオンリーなのでそれを前提にして話を進めますね。

2.作りたい本のサイズを決める

 さて「この文章を本にすっぞ!」とWordに文章を貼り付けたら総文字数がわかりますね。そこから自分が作りたい本のサイズを決めていきましょう。同じ文字数でもサイズが大きい本の方が1ページあたりに載せられる文字数が多くなるため、ページ数は少なく、本は薄くなります。
 私は絵描きさんとの合同誌ではB5とA5、小説オンリーの個人誌はB6と文庫サイズの2種類で本を出しました。

左からB5、A5、B6、A6(文庫)です

 小説オンリーの同人誌の場合、サイズはA5(本屋さんに並んでるハードカバーの文芸書サイズ)、B6(大判コミック誌のサイズ)、新書サイズ、文庫サイズの大体4つが多いと思います。サイズが小さくなればなるほど1ページに入る文字数が少なくなります。つまりページ数がかさみます。それは印刷費に関わってくる話なのですが、とりあえず「自分はこのサイズで出したい!」とイメージしましょう。印刷費が上がってもいいから厚みのある文庫サイズ!という人もいれば、より安く済むA5で!という人もいるでしょう。

3.「本文」を編集校正する

 同人誌の原稿で使う「本文」という言葉は、小説部分のことだけを指すのではなく「小説部分」「目次」「大扉」「中扉」「前書き」「後書き」「奥付」「挿絵」「口絵」などなど表紙以外のパーツ全てを含めたものを「本文」と総称する場合が多いです。いっぱい書きましたがこの中では、小説部分と奥付さえあれば他はあってもなくてもいいです。
 ここではその「本文」の設定と編集についてまとめました。小説を書き上げる工程を除けば、この作業が一番面倒かもしれません。

※この工程は、塗り足し含めた原稿のサイズ設定や余白、ノンブルなど、主にWordの設定の話になるので「そんな基本は読まなくていいや」という方々は飛ばしてくださいね。私は仕事で紹介文のようなものを書くことが多かったので、「塗り足しとノドって何?」という部分以外は特に設定には困らなかったのですが、やり方をひと通り載せておきます。

 「よし!このサイズの本にするぞ!」と決めたら、Wordの設定をそのサイズに変更しましょう。この段階で、Wordに貼り付けた文章がもし横書きになっていたら縦書きにしておきましょう。
 Wordの「レイアウト」タブから「文字列の方向」で縦書きに変更。さらに「印刷の向き」を縦にします。これで、なんとなく小説原稿っぽくなりますね。そしたらサイズを変えていきます。
 Wordの「レイアウト」タブから「サイズ」を選択。その中で一番下のとこの「その他の用紙サイズ」を選んでそこにサイズを打ち込みます。デフォルトを選択するのではなくわざわざ「その他の用紙サイズ」にするのは、原稿に「塗り足し」が必要だからです。印刷所で製本するときにはどうしても僅かなズレが回避できないので、それを防ぐために原稿自体を少しだけ大きめ(縦に3mm、横に3mmをプラス)で作るのです。その大きめの部分は製本時に裁断されるので、その塗り足し部分に文字がかかると文字まで切れてしまいます。イラストと違って小説の場合は、余白を多めにとれば塗り足しなしでもあんまり困ることはないです。でも入稿する際に「必ず塗り足しを」という印刷所さんが多いので、最初からつけておいた方がいいかなとは思います。
 では塗り足しありのサイズを入力していきましょう。前述のように「レイアウト」タブ→「サイズ」→「その他の用紙サイズ」
 ここでさっき「このサイズで!」と自分がイメージしたサイズを「塗り足し込み」で入れましょう。

※緑陽社さんのホームページから

 これで原稿は印刷したいサイズになりましたが、このままだとめちゃくちゃ余白が大きいです。そこで余白を調整します。
 余白の設定は「好みで」としか言いようがありません。上下左右に文字がみっしり詰まってた方が好きとか、余白多めの方が好きとか、自分の好みと読みやすさを考えて設定しましょう。本屋さんで買ったお手持ちの本の余白を測ってみてもいいですね。
 余白を作るときの注意は、綴る方(ノド)の余白を多めに取ることです。ノド側にギリギリまで文字を配置してしまうと、オープン側(小口)に比べてどうしても文字が読みづらくなるからです。
 あとは文字のサイズを変更します。小説本で10.5だとかなり文字が大きく感じられてしまうので、9.5から8くらいにしておいたらいいかなと個人的には思います。文庫サイズだと8が多い気がします。
 字体は明朝系にしておいたら無難かなと思いますが、それもお好みで。また行数とそこに収まる文字数も好みで色々試してみたらいいと思います。これが正解!というものはないので、自分が「読みやすいな」と思った商業本の行数や文字数を数えて真似してみてもいいと思います。同じ文庫サイズでも、新潮と講談社と集英社では微妙に違ったりしますし、本屋さんにある本でも色々です。
 行数や文字数の変え方、余白の入れ方などは同人小説の作り方というより「Wordの使い方」になるので、そこがよくわからんという方は知りたい部分をWordの使い方として調べてみてくださいね。 
 
 ただ、ここまで読んで、正直その設定すら「めんどくせえ」と思いませんでしたか? そんな方々のために、印刷所によっては「読みやすい余白やら行数やらのレイアウトがすでに設定してあるテンプレート」を配布してくださっているところもあります! すごい! 上記の苦労は一体何だったんだ!
 有名なところでは、しまや出版さん、栄光さん、緑陽社さんあたりでしょうか(他にもあります)。その印刷所に入稿を頼まなくてもテンプレは使用できるので、設定に迷ったら印刷所さんのテンプレをお借りしましょう。

 さて、自分で設定したり印刷所のテンプレをお借りしたりして、サイズ、余白、字体、行数や一行あたりの文字数がこれで決定しました!

 次は原稿を縦書きにふさわしい形に直していきましょう。ベタ打ちしただけの原稿を整えていきます。
 改行したら段落を一段落とす。「」の会話文は改行する。数字を漢数字に直す。「…(三点リーダー)」は偶数で使う。―(ダーシ、ダッシュ)を連続して使う時に間が開いていないか。「?」「!」の後に文章を続ける時は、ひと文字分間を空ける。「!!」「!?」などは縦中横にして、縦書きにしても違和感がないように変更する。句読点が段落の頭に来ていないか。などの基本をおさえて、とにかく縦書きにした時におかしくないか、誤字チェックしながら直していきましょう。
 pixivやブログだと多くは横書きで掲載されるのでこういう文章作法はあんまり気になりませんし、私は横書きの時はむしろ読みづらい気がして、段落は落とさない事が多いです。横書きの時は「?」の後に空白も入れませんし、三点リーダーも奇数で使ったりします。でも縦書きでそれをやると、作法云々より何より読みづらいので、そこは頑張って直しましょう。
 ここまでで、サイズ設定、ページ設定(余白、文字数、行数)が決定し、文章を縦書き用に直し、小説本文の原稿が完成したかと思います。やったー!
 あとは小説本文前に目次を入れてみたり、タイトルだけ入った大扉を入れてみたり、短編なら作品ごとに中扉を入れてみたり、後書きを入れてみたりと、そのへんはお好みです。入れても入れなくてもいいです。
 ただ、絶対に入れないといけないのは「奥付」です。だいたい本文の最後に持ってきますが、「作品名(タイトル)、発行日(本を発売したい日、参加予定のイベントの日など)、発行者の名前(自分のペンネームやサークル名)、印刷所の名前、自分の連絡先(メアドを載せることが多い。SNSアカウントのみはダメ)」を載せます。そこにさらに「これは〇〇(作品名)の非公式ファンブックです」とか「無断転載、転売やオークションサイトへの出品は固くお断りします」という注意書きを一緒に載せてもいいです。検索すれば色んなタイプの奥付が出てくると思うので、必要事項は忘れずに、なおかつ自分の作りやすいようにやってみましょう。
 縦書き本文に対して奥付は横書きで載せることが多いです。Wordのセクション区切りを使って奥付のページだけ横書きに変えましょう。
テキストボックスを挿入してもいいですね。

 これでほぼ「本文」が完成しました! そこにノンブル(ページ番号)をふっていきます。本文は奇数から始まって偶数で終わるようにします。ページ番号は3からスタートする場合が多いと思います。なぜなら1ページ目は「表紙」だからです。そして2ページ目は「表紙の裏側」です。それは決まっています。となると本文は3ページからスタートすることになります。ただ、巻頭にイラストや遊び紙が入るならそれもページ数に入れるので、ノンブルは5ページからだったり7ページからだったりします(でも必ず奇数です)。奥付含めて、もし偶数ページで終わっていなかったら、ページ数を増やすか減らすかしてなんとか偶数で終わらせるようにしましょう。
 この段階ではまだ依頼する印刷所が確定していないと思いますが、ほとんどの印刷所に「本文の全てにノンブルをふって入稿してほしい」との記載があるので、ノンブルを入れといて悪いことはないです。ノンブルを「隠しノンブル」として、見えないようにする方法もありますが、ここは「基礎の基礎」の本作りをする場なのでノンブルは普通に入れます。
 ノンブルの入れ方はるるるさんのホームページにわかりやすい設定の仕方が載っています。自力での設定が難しい方は参考にしてみてくださいね。

 ここまでで、サイズが決まり、本文の設定と編集が終わり、さらにページ番号まで入りました! ということは、本文の総ページ数も決まったということです。誤字脱字はその都度直していくとして、ページ番号がちゃんと奇数で始まり偶数で終わっていたら、これでもう同人誌作りの工程は7割が終わったようなものです。よっしゃ!

4.表紙を作る

 字書きにとって一番ハードルが高いのがこの工程「表紙」だと思います。でも便利なツールがたくさんあるので、凝ったものでなければ簡単に作れますよ。
 「表紙」は5つのパーツから成っています。「表紙1」「表紙2」「表紙3」「表紙4」それから「背表紙」です。
 「表紙1」は、一般的にイメージするいわゆる本の顔「表紙」です。「表紙2」はその裏側で普通は白紙になります。「表紙4」はいわゆる「裏表紙」。その「表紙4」の裏側が「表紙3」で、これも白紙が普通です。「背表紙」は本棚に立てた時にタイトルが見える部分ですが、薄い本(特に漫画同人誌)だと背表紙はない場合も多いです。厚みのある本にだけ付くパーツになります。
 印刷のいらない「表紙2」「表紙3」以外の部分を作るのがこの工程です。

 表紙の作り方ですが、一番簡単なのは「表紙も一緒に作ってくれる印刷所に頼むこと」です。注文表にタイトルなどの必要事項を書きさえすれば、あとは何一つしなくても、印刷所さんがかっこいい表紙を作ってくれます。ただ、全ての印刷所さんがそのサービスをやっているわけではないので、この方法を使いたい時には自ずと頼む印刷所が決まってきます。
 よく知られているのはしまや出版さんでしょうか。「こんな表紙にして欲しい」と完全オーダーも出来ますが、そちらは別途料金が発生します。しかしセミオーダーなら追加の料金が発生しませんし、豊富なテンプレから表紙を選ぶだけです。
 あとはプリントオンさんの「わくわくドキドキデザインセット」が有名です。これはこちらが細かくオーダーするのではなく、印刷所さんが「あなたの小説のイメージで表紙を作ってくれる」セットです。全部おまかせするだけ! でもどんな表紙になったのかは本が届いてみないとわからない、その名の通り「わくわくドキドキ」のセットです。
 
 次に簡単なのは無料の表紙テンプレを使うことです。「同人誌表紙メーカー」さんのテンプレを使えばあっという間に出来ます。自分が作る本のサイズ(工程その2で選んだサイズに塗り足しが入ったものと背幅)と、好きな表紙と字体や色を選んで、タイトルを入力するだけです。使い方や入稿時の注意まですごく丁寧に解説してくださってます。「入稿時には備考欄にこれをコピペしといてね」という注意書きまで! ほんとにありがたい!

 最後に、上記2つに比べたら面倒ですが、それでも私のような超初心者にも充分できる方法です。
 表紙は、ざっくり言うと背景になる素材(写真とかイラスト)と作品タイトルを組み合わせて作ります。ということは、背景素材とタイトル文字、そしてその2つを組み合わせるソフトが必要です。
 背景素材はイラストならpixivで無料提供して下さってる方がたくさんいらっしゃいますし、写真も少し探せば無料素材がたくさんあります。ただ、使用する際はそれを同人誌に使ってもいいのかどうかちゃんと注意書きを確認しましょう。pixiv投稿のみ許可していたり、加工(タイトル入れたりする)はNGの場合もあるので。
 背景にするイラストや写真を手に入れたらあとは文字を入れます。canvaという無料サイトがすごく便利で、字書きにも簡単なのでおすすめです。無料の会員登録をしたら、そのサイト上で、画像と文字組み合わせるだけ。PDFに変換もできます。ただ、自分でサイズは設定しないといけません。

 表紙については、テンプレートを配布している印刷所さんもありますし、どの印刷所さんにも背幅(背表紙のサイズ)の自動計算ツールがあります。自分の出したい本の総ページ数を入れたら背幅が出ますから、自分で作る場合にはその背幅と本のサイズ(塗り足しあり)を加えればいいです。ごちゃごちゃ書きましたが、テンプレには「この本ならこのサイズや」と書かれています。

 でもほんと、「表紙作りはわけがわからん」と思ったら、凝ったことをせずに素直に同人小説表紙メーカーさんからそのまんま持ってくるか、印刷所さんに丸投げする方法でいいと思います。無理はすんな!

5.印刷所を決める

 ここまでで、本文と表紙が用意できたかと思います。次は印刷所を決めましょう。
 前の項で「よくわかんないから表紙は印刷所さんに頼もう」と思った方は、その印刷所さんに入稿することを前提にしましょう。
 私が漫画との合同誌に使った所、小説オンリーの個人誌に使った所、かなりの数の印刷所さんに頼んだことのあるリア友の話、フォロワーさんに聞いた話、それらを総合して、我々初心者に優しそうな印刷所をいくつか挙げてみますね。
 あくまで「初心者が使いやすいところ」という視点なので、ここに挙げていないからといって悪いということではありません。そして何度も書いてますが、これは「最低限の装丁の小説本を作りたい」という人向けです。漫画原稿におすすめの印刷所さんと小説原稿におすすめの印刷所さんは、やっぱりちょっと違う気がします。それに、ここであげた印刷所さんで凝ったものが作れないということでもありません。
 印刷所はたくさんありますし、「おすすめ印刷所」で検索したらこれまたたくさん出てきます。目移りしてしまいますが、選ぶときには自分なりに基準を設けたらいいと思います。印刷所を選ぶ際に重要視するポイントは人それぞれ違うからです。
 少ページの本を大部数刷りたいとか、カラーの画集を作りやすいところとか、締切が優しいところとか、料金が安いところとか、同時にグッズも作りたいとか、目指すものがほんとに人それぞれです。だからみんな推し印刷所が違うのだと思います。
 ここでは「小説同人誌向け」「初心者に優しい」「少部数」「入稿をよくわかってない人でも入稿がしやすい」ところ。これに絞ります。それもほんとに私個人の感想ですからそのへんはご了承くださいね。
 以下、順不同です。

しまや出版さん
 最低部数は10部。「文芸セット」という字書き向けのセットがあり、「表紙」の項でも触れたように無料の表紙テンプレが用意されています。ページ設定済のWordテンプレがあり、それを入稿するための専用のアップローダーもあります。PDFにする際には不備を自動で指摘してくれるのがすごいです。
 同人小説を出したい字書きさんが悩む部分はほぼすべてクリアできるせいか、ここで初めて同人誌を出したという字書きさんは多いです。ちなみに私もここで出しました。
 あと、特徴はとにかく応対が丁寧なことです。どの印刷所さんも申し込みをしたり入稿を済ませたりしたら「ありがとうございます」の自動メールが来ます。不備があればメールや電話で知らせてくれます。でも、原稿を受け取ったあとに特に不備がなくても電話をくれるのはここだけではないかと思います。「入稿ありがとうございます。お疲れ様でした」というような電話ですが、その時に質問があれば何でも答えてもらえます。こっちは右も左も分からない上不安でいっぱいなので、この電話にほっとするのは間違いないと思います。
 原稿を作りやすく入稿しやすい、しかも丁寧な印刷所さんですが、他と比べると料金は安くないです。加工のオプションをつけたらなおさらですし、小説はただでさえ漫画よりもページ数がかさみ、その分値段が上がります。個人的にはこちらで少部数を頼むなら、小説本としてはページ数が少なめ(50ページ前後)の本にしたいところです。200ページ超えの文庫サイズとかだとほんとにお高くなってしまいます。
 ただ、早割などの割引を使えば値段を抑えられるので、こちらに頼む際はそれを狙いましょう。

プリントオンさん
 最低部数は10 部。
こちらも「表紙」の項で紹介しましたが、「わくわくドキドキセット」という、印刷所さんに表紙を丸投げできるセットがあります。テンプレから選ぶのではなく、作品のイメージを表紙にしてもらえて、しかも、自分では思いつかないような加工、素敵な書体で、特殊紙に印刷してもらえるので字書きさんには大人気です。また、Wordのテンプレートがあるので、そこに自分の原稿を貼り付けて編集して入稿できます。
 紙の種類が豊富で、本の形も加工もとにかく色々できる印刷所さんなので、初心者だけではなく何度も本を出されている方にも人気です。
 ただ、こちらのセットも料金は安くないです。ページ数が多いならなおさらなので、100ページ以上になると料金の面で躊躇してしまいますが、頻繁にフェアをされていますし、早割に加えて、初めて割や、いろんなイベントの支援もされているので、それを駆使すると料金がかなり抑えられます。もちろんわくわくドキドキセット以外の普通のノベルセットもありますよ。

栄光さん
 最低部数は10部。
オンデマンドのノベルセットがありますし、入稿もテンプレートがあり、さらにその際にはセルフチェックまで出来ます。
 通常では特別安いわけではないのですが、キャンペーン中はかなり値引きされるのでタイミングが合ったらぜひ利用したいですね。
 入稿もわかりやすく、漫画との合同誌を作った際もスムーズにできました。

ちょ古っ都製本工房さん
 一冊から作れます。
 とにかく安い印刷所さんで、100ページ越えの本、文庫本はここで作った方も多いと思います。私達初心者でも入稿しやすい印刷所さんです。工程3で作った「本文」と工程4で作った「表紙」をPDFに変換して、専用のアップローダーで入稿するだけ。絵描きさんの中にはPDFのみという部分にひっかかる方もいらっしゃるのですが、小説のみだとむしろその方が楽です。
 もともとは同人誌の印刷所さんではないので、あまりにも過激な18禁イラスト表紙はNGのようです。Wordのテンプレや表紙のテンプレはありませんし、文庫本ならカバーは作れません。また、よほど不備以外は連絡はなくそのまま印刷されるので、入稿前にミスがないかチェックしましょう。
 私はこちらで頼んだことがありますが、よほどの不備(カラー口絵をモノクロ指定で入稿した)があったので連絡頂いた上、こちらからの電話にもめちゃくちゃ丁寧に対応していただきました。

 その他に友人やフォロワーさんにおすすめいただいたのは、ワンブックスさん、STAR BOOKSさん、サンライズさん、コミックモールさん、オレンジ工房さんあたりです。
 ワンブックスさんは予約制で、出来上がるまでに他よりも時間がかかりますが、安く一冊からでも作れるのが嬉しいです。
 スターブックスさんは早く入稿すればするほどかなり大きな割引がききますし、ホームページもわかりやすいです。
 サンライズさんはギリギリの締切にも対応してくれ、電話対応も非常に優しいとのことです。我々初心者は「こんな初歩的な事聞いたらダメかな……」などと思いがちなので、問い合わせに優しく答えてくれるというのは心強いですね。
 コミックモールさんは「カバー付き文庫本を作るならここ」と評判の印刷所さんで、カバー付き文庫本の値段がすごく安いです。ただ、入稿のやり方が特殊で、初心者には厳しい仕様だと思いました。不親切というより「特殊」なので、初めての同人誌をここで作るなら同人に詳しいお友達に聞きながらの方がいいと思います。また、最低部数が20部なので、超初心者は「そんなにいらない」と思う場合も。もっと慣れたらこちらでカバー付き文庫を作ってみたいですね。
 オレンジ工房さんは、WEBイベント支援を積極的にされている印象です。もしイベントでの販売を考えているなら、オトクな割引やオプションが利用できます。時期によっては「カバー付き小説本」のフェアをやっていたりします。

 どの印刷所さんもホームページには「入稿の仕方」「原稿の作り方」がきちんと載っていますので、ちゃんと読めば「全然わからん」ということはないと思います。
 あとは値段です。自分用に一冊だけ本を作りたいのならいくらかかっても構わないでしょうが、「せっかくだから販売もしたい」となると印刷費を考えないといけません。注文する部数と、いくらでなら販売可能かを考えて、入稿のしやすさと値段の折り合いをつけ、印刷所を決めましょう。自動見積もりはどの印刷所さんでもその場で気軽にできます。

6.入稿する

 さて、これで「本文」「表紙」の準備が整い、印刷所も決まりました。いよいよ入稿です。ここが一番「未知の領域」という感じですよね。
 まずは、工程5で「ここにしようかな」と決めた印刷所さんに会員登録しましょう。住所、氏名、電話、メールアドレスなど、問い合わせの際に必要な個人情報です。そこでだいたい「登録ありがとうございます」の自動メールが来ます。登録したからといって必ずそこに入稿しなくてはいけないわけではないので気軽に登録しましょう。
 次に注文表に必要事項を入力します。送信しない限り注文は確定しないので、焦らずゆっくりいきましょう。
 総ページ数を入れ、カラーかモノクロか(本文をモノクロ、表紙をカラーにするパターンが多いです)、本文や表紙の紙の種類は何か、加工はどうするのかなどの項目を埋めていきます。
 紙は、小説なら「淡クリームキンマリ」にしておくといいです。真っ白な紙は目が疲れるので小説向きではありません。クリームキンマリには55、72、65 90などなど、とにかく種類がありますが数字が小さいほど紙は薄くなります。よっぽど分厚い本でない限り、72くらいでいいと思います。 
 表紙の紙の種類はほんっとに沢山ありますが、一番良く見る同人誌の表紙はおそらく「コート紙」です。そこに「表紙」の色が乗るわけなので色は白が一番無難です。他にもザラザラした手触りの紙やボコボコした凹凸のある紙などたくさんあります。印刷所さんのホームページに紙の説明が載っているので確認してから決めましょう。
 選んだ紙に加工をするかどうかも決めます。オプションで追加料金になる場合がほとんどですが、フェアやイベント支援で無料や格安になっている場合もあります。
 キラキラしたホロ加工や模様の入った加工、文字の箔押しなどについてはここでは触れません。ただ、初心者とはいえ「PP加工」はした方がいいと思います。つるつる、もしくはサラサラした光沢が出るのですが、これをやることで、表紙の印刷が剥げにくくなります。
 あとは部数です。自分用だけならともかく、たくさん刷るなら当然たくさん売らないといけないので、そのイベントの規模やジャンルの人気なども考えて部数を決めましょう。
 それから自分のもとに本が届いてほしい日を決めます。イベント参加を前提にしている人は、そのイベントから何日前という風に、イベント関係なく作りたいなら自分の好きな日にしましょう。すると「入稿は〇〇日まで」と表示が出るので、その日が入稿締切の日なんだなとわかります。期日は余裕があればあるほど「早割」が使えるので、それを見ながらお届け日を決めましょう。
 これで作りたい本の仕様がはっきりしました。値段もほぼ決定です。
 これでオッケーならそのまま注文できますが、注文書を送信する前に、その印刷所さんが求める「原稿の作り方」「入稿の仕方」「入金方法」などをよく確認しておきましょう。
 その上で「いける!」と思ったら注文を送信しましょう。そしたら「ご注文ありがとうございます」の自動メールが届きます。「〇〇日までにご入稿下さい」という内容です。
 そうしたら、その印刷所さんの求める形式で、原稿を提出します。この「提出」部分のことを入稿といっています。入稿前に、つまり印刷所さんの求める形式にする前に、原稿に不備がないかチェックしましょう。印刷所さんにチェックシートのようなものがあるので、それに合致している原稿になっているかを確認し、それから入稿します。
 入稿のやり方で一番多いのは、Wordなどで作った原稿を一度PDFに変換してから入稿して欲しいというパターンだと思います。表紙も同じです。さらにそのPDFを圧縮してほしいという場合もあります。
 表紙と本文、2つのPDFを作ることになりますが、この2つのファイルをその印刷所さんで用意された専用のアップローダーに入れたり、メール添付したりします。その部分は印刷所さんによって様々です。「表紙はここ、本文はここ」という具合に分かれている場合もありますし、「表紙も本文もここ」と一緒の場所に入れる場合もあります。あとはWord文書を圧縮してメール添付したり、Word文書をそのままアップロードしたりするところもありますが、指示されるままに添付したりアップロードしたりすれば大丈夫です。ただ、ぶっつけでやると戸惑うので、実際に入稿へと進む前に「入稿の仕方」や「Q&A」などをよく読んで、その印刷所さんのやり方をちゃんと理解してからにしましょう。
 原稿を印刷所さんに提出(入稿)し終えたら、だいたい自動メールが来ます。「ご入稿ありがとうございます」という内容で、確定した料金が入金方法や入金期限とともに書かれています。
 入金が済まないと製本作業に入れないのでなるべく早く入金しましょう。原稿に不備や疑問点があれば印刷所さんから連絡があります。メール連絡だったり、電話連絡だったり様々です。ただ前述の通り、しまや出版さんは不備がなくても電話を下さいます。
 原稿に特に不備がない場合は連絡がない場合がほとんどなので、その場合、次に連絡が来るのは「本ができたので発送します」という自動メールです。
 入稿したら不備がないかどうかドキドキし、連絡が無いならないでドキドキし、実物がほんとに自分の手元に届くのかドキドキします。


 これで本づくりの全行程が終了しました! お疲れさまです!
 本を作っていくイメージが何となくわいてきましたか?
 これで最低限、表紙と本文のある本が作れます。同人誌を作ってみたいあなたの助けに、ほんの少しでもなれたら嬉しいです。

           〈おわり〉

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