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アンジェリークルトゥール ジュリアス攻略感想

オリヴィエに続いて、攻略二人目はジュリアス。
ただ二人目とはいっても、アンジェリークシリーズは個別ルートに分岐する形式のゲームではないので、程よき所でセーブさえしておけば一回のプレイで複数人のエンディングを見ることはできる。
だがルトゥールの場合、エンディングはともかく同じ相手を複数回誘って初めて見られる会話やスチルがある。そのため一回のプレイで全部を回収するのは無理な仕様になっており、リメイク前よりもやりこみ度が増したと言える。
オリヴィエの感想にも書いたが、アンジェリークシリーズの基本的な流れは「慣れない場所で懸命に女王試験に臨むヒロインに協力していくうちに、守護聖たちは彼女のひたむきさ、明るさ(前向きでも優しさでも勤勉さでもなんでもいいが)などに惹かれていく」というものだ。
狙ったキャラによってエンディングまでの流れが違うということは無いし、あくまでも舞台は飛空都市で行われる女王試験だ。

今回メインで攻略したジュリアスは、この「女王試験」という舞台に、最も強い使命感と責任感を持って臨んでいるキャラだ。
なぜならジュリアスは守護聖の首座、つまりリーダーだからだ。守護聖=宇宙にたった9人だけの神様みたいなものと考えれば、その中のリーダーであることの凄さはよくわかる。ジュリアスはその偉そうな態度を同僚たちに煙たがられている場合が多いが、実際偉いのだ。
ジュリアスは女王陛下に絶対の忠誠と敬意を捧げ、守護聖の職務に誰よりも熱心、自分の司る力を理解し、その力を持っていることを誇らしく思っている。その使命と地位の重さを判った上で、それでも重圧より自負が勝っているように見える。
しかもジュリアスは主星の大貴族出身なので、宇宙や女王に対する知識も幼児期から叩き込まれている。ジュリアスは突然守護聖になっても最小限の動揺で済む素地を持ち、それに相応しい能力を持ち、かつ守護聖の首座たる努力を一切惜しまない守護聖の中の守護聖なのだ。
そんな彼が、自分が今後忠誠を誓うべき新たな女王を選ぶ試験に関わることになったのである。
これで気合を入れるなと言う方が無理な話だ。
まだまだ女王の何たるかを分かっていない少女達を首座たる自分は正しく導かねばならぬ、だだし試験の妨げになってはならぬ、みたいな気持ちで、ジュリアスが女王候補たちに接していることは会話の端々から伝わってくる。事あるごとに「女王候補とは」「守護聖とは」みたいな話をするからだ。
女王試験という日常とは違ういわば一大イベントに、他の守護聖たちは少しばかり気持ちが浮き立っていたり、気持ちが揺れたりしている様子だが、ジュリアスだけは「一層気合を入れねば!」と気を引き締めて臨んでいるように見える。執務室のウェルカムメッセージも、ジュリアスは「よくやっている」「女王候補らしくなった」という上司からの褒め言葉みたいな段階を踏んでからでないと、「よく来たな」的なことは言わない。
日の曜日のデートも「これは…デート…なのか?」と最後まで疑問に思うような雰囲気である。少なくともマリジェリークは「今、私は試されている!」と思いながら公園を歩いていた。もちろん他の守護聖もデート中に質問をしてくるのだが、ジュリアスの場合はデートの合間に質問しているというより、質問の合間に公園を散策している印象だ。
舞踏会のダンスやお茶会で手作り菓子を振る舞うシーン、また大陸視察でも、ジュリアスとアンジェリークは常に面接官と受験生のようである。
「お前を見習わねばな」とジュリアスに言われたアンジェリークが「ジュリアス様がそんなことを?…聞き間違いかしら」と幻聴を疑っていたが、ジュリアスとアンジェリークの恋はそんな感じでスタートするのだ。

前述したように、ジュリアスは女王試験に臨む二人を「守護聖首座として」導かねばならぬと気合が入っている。特にヒロインアンジェリークはロザリアと違って、女王試験そのものに戸惑っている様子が見えるから尚更だろう。
だが、戸惑いながらも育成を頑張っているアンジェリークを間近で見て、デートを重ね会話を重ねていくうちにジュリアスは「アンジェリークといるのは楽しい」と思い始める。
恋愛モードに入ったジュリアスの代表的セリフと言えば、私は真っ先に「このジュリアスともあろうものが」が思い浮かぶ。また「守護聖として接していたつもりが」も同率一位だ。
つまり、面接官、指導役としてアンジェリークの言動を見ていたジュリアスが、いつの間にかその立場を忘れて普通にデートを楽しんでいたという事だ。
何度も言うがジュリアスは守護聖の中の守護聖だ。そんな彼が「守護聖としての立場を忘れた」のである。これ以上ないほどのジュリアス陥落の知らせではないか。ほら貝を吹き鳴らしてもいいくらいだ。
ジュリアスからこの言葉を引き出したとき、私は
やった…!勝った!(何にだ)
と思う。
デート成功の後や恋愛イベントの時、他の守護聖も「守護聖としての立場を忘れていた」みたいな事は言ってくれる。しかし、ジュリアスが言ってくれた時ほどのカタルシスは無い。
それはやはりジュリアスが、常に守護聖の立場を超えないようにしようと自分を律しているからだ。だからこそ私は「あのジュリアス様が守護聖の立場を忘れたってよーーー!!(みんな聞いてーー!!)」と思うのだ。
また、恋愛が進行すると、ジュリアスがそれまで見せてきた厳しくてお堅い部分がとたんに可愛らしく見え始める。アンジェリークへのお手紙に真っ先に愛馬の話を書いてみたり、森の湖で黙り込んだと思ったら「私がお前を気にかけているのは、お前が女王候補だからだ。全然おかしいことではない」と言い聞かせてみたりする。
自分が恋に落ちたことになかなか気づかないのだ。
恋に慣れていないのだなと思えば微笑ましいし、そこが可愛いポイントでもある。
それにジュリアスは恋という感情を、忠誠や友情よりも下に見ているというか、自分には理解できないものとして捉えているふしがある。
そんなジュリアスが恋に落ちる様を目の当たりに出来るのだから、萌えないわけがない。
私が攻略した時のジュリアスは、たまたま仕事熱心で大陸に興味のあるタイプだったので、毎日毎日プレゼント育成と妨害に余念がなかった。完全に恋は盲目状態だったので「お前、今アンジェリークに恋してるぜ」と肩を叩いて教えてやりたい気持ちでいっぱいになった。

前述のように、ジュリアスは女王候補が立派な女王になれるように試験を全力サポートをしてきた。そうしてそばで見守るうちにアンジェリークに恋するのだが、アンジェリークが女王候補らしくなればなるほど彼女は女王に近づくのである。
女王は至高の存在だから、そうなってしまえばもうこうして気軽に言葉を交わせない。恋か守護聖としての責務か。ジュリアスが恋を自覚したあと、次に待っているのはその葛藤である。
それは、女王陛下を特別に崇め誰よりも忠誠を誓ってきた守護聖首座のジュリアスだからこそ生まれる葛藤だ。さぞかし悩んだだろうし、私はこの時ジュリアスは、クラヴィスと現女王の悲恋を思い出したと思う。
使命か恋かの選択はアンジェリークシリーズの醍醐味の一つだが、ジュリアスとの恋愛は他のどの守護聖を攻略する時よりもそれを感じることができると思う。
守護聖として揺るぎなく生きてきたジュリアスはアンジェリークに恋し、ついには「今の私には試験などどうでもよい」と言い出すのだ。
すごい。
最後にプレイしてから10年以上経っているが、改めて見てもやはりジュリアスの告白シーンはすごい。
あんなに女王候補らしくしろ、試験頑張れと言い続けてきたジュリアスからのこの告白。
堅物のジュリアスからこのセリフを引き出したときは、ジュリアス推しでなくとも「やった…!」と思うのではないか。最初の厳しさがあればこそ、ジュリアスが悩みに悩んで告白してくれた事が伝わってくるからだ。
ちなみに、ジュリアスの告白を断った時には大人気ないと評判のすげーセリフを吐かれるのだが、「それだけこの恋はジュリアスにとって、ほんっとに本気の恋だったんだな」と思わせられるので、私はあれが結構好きだ。

アンジェリークと結ばれた後、ジュリアスが彼女と共に主星に帰る日が来たとしたら、やっぱりジュリアスは女王試験中と同じように、アンジェリークに「大貴族の奥方として相応しく」みたいな事を言って花嫁修業的な事を課すだろうと思う。
だが、奥方として相応しくあろうと努力するアンジェリークを見て、ジュリアスは女王試験中と同じようにやっぱりまた「このジュリアスともあろうものが」を発令したあと、「私の奥方は可愛い」と惚れ直しそうな気がする。

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