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the原爆オナニーズ TAYLOWさん ドキュメンタリー映画『JUST ANOTHER』舞台挨拶 トーク全内容

11月3日、the原爆オナニーズのドキュメンタリー映画『JUST ANOTHER』上映の後、名古屋より駆けつけたタイロウさんの舞台挨拶がありました。この昼13時からの回は、満員に。

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自分の覚書のためにも、トーク全内容をまとめました。聞き手はスペースシャワーの、この映画のプロデューサーである近藤さんです。ふたりの息もばっちりでした。

大石監督の苦労とバンドにもたらした影響、この映画制作によってさらに活性化されたthe原爆オナニーズの現況、なぜこのバンドが稀有な存在なのかが改めてよくわかります。このコロナ禍も、「ピンチはチャンスに」とおっしゃってました。

私は改めて、映像にしろ、音楽にしろ、文章にしろ、何でも「表現」で形に残すというとは、忘れていたようなこと、当たり前と思ってしまっていたことを具現化し、自分にも人に大切なことを気づかせるために重要なことだと感じました。ものすごく簡単に言えば、この映画を撮ってくれた大石監督に感謝です!

まだ観てない方も、もう観た方も、これを読んで『JUST ANOTHER』で、TAYLOWさんの言葉の「答え合わせ」を行ってみてください。

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●そもそも、なぜ今回初のドキュメンタリー映画ができることになったんでしょうか?

まず『MOTHER FUCKER』という映画を観たのがきっかけ。これを撮った大石規湖監督なら、うちのバンドを撮れるかなという感じを持ちました。ここにいる(プロデューサーの)近藤さんと話をしている中で、できそうだよという話になり、ある程度期間を短くして、大石さんに撮ってもらうことになりました。まあ30年以上やってるバンドの全期間をまとめるのはちょっと難しいですよね、正直言って。それだったら1年くらいのスケッチみたいな感じで映画に撮ってもらうと、観ているみんなも「このライブ行った!」と思える映像も入ってきて、面白いかなと思って。

●TAYLOWさんは色々な音楽ドキュメンタリー映画を御覧になっていると思いますが、自分のバンドのドキュメンタリー映画を作るにあたって、こだわった部分は?

こだわったことは、一個ある。まず、家の中を撮らないようにしましょう(笑)。バンドのドキュメンタリー映画を観に行くと、生活に入っていって、(妻が)「この旦那はいい旦那ですよ」みたいなこと言うの、よくあるじゃないですか。俺、そんなのまったく興味ないから。「どうやって、このバンドをやっているのか」っていうのが観たいんであって、人の生活に興味はない。だからそういうのはやめようと言ったら、大石監督はオーケーしてくれて、これは弾みになりました。

●映画の中で映る、TAYLOWさんのレコードコレクションが、ギリギリのところだったんですね。

昔『DOLL』で原稿を書いている頃から、僕のレコードコレクションはちょっと見たい人、いるかなーと思ってたんで(笑)。カミさんと飯食ってるとこなんか見てもおもしろくないじゃないですか。それはいやだけど、レコ―ドとか、自分が大事にしている昔の音楽の新聞とかちょっと見せて自慢したいなというのはありました。たとえば今回は手にとらなかったけど、「カート・コバーン死す」みたいな記事もいまだにとってある。グランジが流行りましたよとか、フガジがちょっとかっこいいですよとか、90年頭くらいまでのいろんな新聞持ってるんで、ちょっと持ってるゼ感(笑)。俺、物持ちいいでしょ、捨ててないよ、っていうのは見せたかった。

●大石監督は東京と名古屋行ったり来たりの撮影だったわけですけど、撮影にあたって苦労された部分ありますか?

大石監督は、多分すごく苦労してます。2か月とか、ひと月に1回くらいしか会わないわけじゃないですか。そうすると「こんにちは」って言うとみんなリセットされてて、初めて会う人みたいな感じになってる。話し出すと、「この間聞いた話、またしてるよ」っていうのが、僕含めてあったはずです。「この人たちちょっと…認知症入ってるおじさんかな」と思われたかもしれない。

●メンバーの皆さんは、「映画作るよ」って言った時どんな反応だったんですか?

「映画作るよ」って話は、今までもあったけど形にならなかった。テレビ局の人とか他の映画監督の人とかから話がある都度そういう話を(メンバーに)してるもんですから、「ああ、またちょっと『あるある詐欺』かな?」と思ってたかもしれないですよね。

●大石監督も言ってましたが、「半信半疑」の状態が続いてた感じなんですか?

最初の3か月、4か月はそういうの強かったかもしれないですね。大石監督とは、(2018年9月の映画冒頭の)今池まつりの次に、Firestarterと対バンのライブ(2018年11月3日)のために、岐阜の方まで一緒に行ったんですけど、その時もひとりお客さんが乗せられてるみたいな感じで。ちょっと大石監督にかわいそうなことをしました。

●大石監督も頑張ったんですね、ほんとにねえ…。

令和最初のライブだった大阪の時も、大石監督と一緒に行ったんですけど、その時くらいからみんな打ち解けて、話ができるようになりました。半年近く、よく頑張ってくれました。やっとその辺り(に撮った映像)から、僕が『MOTHER FUCKER』を観て「これだ!」って思ったようなところが、この映画の中にも入ってきてるんじゃないんですかね。

●いよいよできあがった作品を、初めて見た時の印象は?

「こうくるか!」っていう感じですよ。うちのバンドは、しゃべらなくても、わかりあっってしまっているところがあって。東京~名古屋間、車に乗ってる間に何もしゃべらないんですよ、もう。80年代は、名古屋から東京に行く間、ずっとしゃべってたんですけど。どうだろう、2000年代入ってからは、みんな車の中、「ひと眠りしよう」って感じで。豊田でインター乗って、浜松から足柄くらいまではみんな寝てますから、しゃべらないんですね。大石監督が入ったことによって、もう、全然しゃべらなくて忘れていたようなことが、掘り返されているっていうか。「やっぱりこうだよね」って再確認できて、メンバーそれぞれにとって良かったと思います。

●バンドも、映画を観て改めて気づかされることがありましたか?

あったと思いますよ。例えばSHINOBUと僕の関係が後半すごく出ていているんですが、SHINOBUは最初にthe原爆オナニーズに入った時に、「俺はズブの素人だから全部言ってくれ」って言ってたわけですよ。それで彼は、わーっと「常に言われる係」になった。「バンドはこういう風に進めていくよ」っていうの確認しながらやっていくっていうのはそういうことからなんですけど、こっちは日常の生活で(意識もせず)ルーチンでまわしてるんで、忘れてるわけじゃないですか。それが大石監督が入ったことによって、「あ、俺たちルーチンでまわってるけどちゃんとこういうことやってるんだ」ってわかって、ちょっと良かったですね。

●では38年初のドキュメンタリーですけど、バンドにとって意味のあるものになったんですね。

そうですよ。今、すごく練習に入ってるんです、「新曲作ろうよ」って雰囲気になったりとか。古い曲でSHIGEKIがいた頃の最後あたりの、『STEP FORWARD』とか『ALL THE WAY』の曲だと、ライブでやったりやらなかったりっていうのが多くなってきてるんで、そういう曲やってみたいねとか、メンバーそれぞれの思い入れのある曲をリクエストして練習したりとか。(映画のお陰で)そういうのが活性化してます。大石さんが「いつも曲一緒なんですよ」って言ってましたけど、the原爆オナニーズは、1年間だいたい一緒の曲でまわすんですね。マイナーチェンジして、毎年少しずつ変えてるんですけど、基本変わらないんで、みんな、「あ、今年はこの曲で始まったこれで終わる」ってわかる。でも、来年次のライブやる時にはちょっと変わるかもしれない。映画の効果ですね、やっぱり。

●38年間でこれだけライブができない時期が続くというのは初めてだと思うんですが、バンドの中でどうやってテンションを維持していますか?

テンションを保つには、うちらみたいに仕事持ってバンドをやっていると、毎日顔合わせちゃうと多分ダメだと思うんですね、そのかわり、ある程度の期間の中で、たとえばひと月で2回会うことを決めると、「次のタイミングまでにこの曲をこうやって仕上げよう」とか、自分の中で目標もってやっていける。それでたとえライブがなくても、自分たち(それぞれ)の目標というのが常にできるんで、バンドとしてはいい方向に向かえる。今は、走り続けるんじゃなくて、ちゃんと見直すっていうタイミングが来てるかな。逆にラッキー、「ピンチじゃなくてチャンスに変えましょう」っていうところがありますね。

●しばらくは、お客様の前でライブをいつやれるのか、見えないですもんね。今池まつりもまだ来年もわからない感じですか?

現時点ではまだわからないけど、今年の9月に配信でやった時は、「来年こそやろうね」って言ってました。ワクチン次第なところはありますよね。

●映画は、今池まつりで始まり、今池まつりで終わるでんすが、バンドにとって今池まつりってどういうものですか?

まあちょっと特別に羽目をはずしていい時。今池まつりの映像を観てわかると思うんですが、何でもありのお祭りです。それこそうちらのライブやってるところの横のブロックでは、国会議員がブースを開いてうどんを作ってるわけですよ。で、その隣で市会議員がたこ焼き焼いてるようなところなんで、街のお祭りというか、特別なライブイベントではないところが面白いですよね。朝から晩までパンクバンドのGASOLINEが出たりとかTURTLE ISLANDが出たりとか、ロックが鳴ってたり、ジャズが鳴ってたりというところではありますね。

●バンドは今年が結成38周年で、再来年は40周年になるわけですけが、ここから先のthe原爆オナニーズはどういう風に進んでいくんでしょうか?

映画のタイトル通り「JUST ANOTHER」、「当たり前」で「ありきたり」に、まあ続いていくんでしょうね。映画でSHINOBUが言っている通りで長いつきあいになっていってるし、JOHNNYが言っているように波乱万丈がない。波乱万丈がない、っていうのが一番難しいことだと思うんですよ。バンドって半年くらいでも波乱万丈じゃないですか。「もうあいつと、顔を合わせるのもいやだ」とか。それが「ない」ってJOHNNYが言ってたのって、思いがこもった言葉だなあと思います。

●そうですね。確かにバンドを撮ったドキュメンタリーって、何らかの事件が描かれてますよね。

1年バンドやってりゃ、事件が起きますよ、普通は。それなのに事件もなく、「何となく続いてるよね」っていう不思議なバンドなんですよ、逆に言うと。「JUST ANOTHER」、我ながら最初に出したEPにそんなタイトルを付けたのは、たいしたもんだな

●この映画は、「バンドの名前は知っていたけど、音楽は聞いたことなかった」という若い人たちも観に来てくれています。若いバンドマンに伝えたいことってありますか?

若いバンドマンに伝えたいことは、「やってればおもしろいよ」っていうことしかないんで。バンドって、最初の段階で、考えずにやっちゃうんですよ。僕はちょっと入口が違ってて、考えてからバンドを始めた。「若いバンド」って言ってる人たちも、ハタチ過ぎたくらいでバンド組んでる人が多いと思うんで、「(バンドに)入る時に、ミーティングをいっぱいやった方が面白いんじゃねえかな」と思ったりはします。

●the原爆オナニーズの鉄の掟みたいなものってありますか?

なんにもないです。なんにもなくて、ゆるゆる、ってなってるのが、一番いい状態。「なんにもない」って(the原爆オナニーズの)曲のタイトルだけど(笑)。その通りになると一番いいかなって思います。

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