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タロット解説② 0・愚者〜10・運命の輪

前回の続き、タロット解説です。

今回からはタロットの特徴的なカード、大アルカナ22枚の解説をしていきたいと思います。
大アルカナには全て固有の絵が描かれており、それは一つの物語を表しています。
タロットの種類は色々ありますが、今回は代表的なマルセイユ版とライダー版を例に出したいと思います。
左の小さい方がライダー版、右の大きい方がマルセイユ版です。
それでは順に見ていきましょう。


【0 愚者】

0 the fool 愚者

0という数字が示す通り、無を意味しています。
0は他のどの数字とも違う特殊な数字です。
始まりの前であり、まだ社会の歯車にはなっていない状態です。
現代で言えばニートやホームレスなどが近いでしょう。
社会的な価値観だけで言えば、彼らは役立たずであったり劣った者と見なされますが、逆に言えば社会的価値観には縛られず自由であるとも言えます。
王族の身分を捨て修行に出たブッダは言ってしまえばホームレスですが、ホームレスでなければ悟りは開けなかったでしょう。
絵柄を見てみると、鞄を持ち、これから旅に出るようです。
背後からは犬が追いかけてきています。犬は主人に従順で、家を守る番犬としての役目がありますが、これからの旅には危険が伴うことを警告しているようです。
その警告をものともせず、愚者は旅に出ます。
役立たずの愚か者であると同時に、異次元の可能性を秘めた存在でもあるのがこの“愚者”なのです。
トランプのジョーカーは他のどのカードとも異なる異質の存在ですが、ジョーカーはタロットの愚者が起源であるという説もあります。
道化師であると同時に凄まじい力を持っている点が確かに共通していますね。

【1 魔術師/奇術師】

1 the magician 魔術師/奇術師

1は始まりの数字です。0の段階では何も存在しませんでしたが、全てはここから始まります。
絵柄にはテーブルに色々なものを広げた男性が描かれています。
この男性は愚者の男と同一人物であり、彼が持っていた鞄の中に入っていたものが今テーブルに広げられています。
右側のライダー版ではそれらは4元素を表すコイン、カップ、棒、剣として描かれています。
愚者だった彼はひとまず放浪の旅を(一時的にかもしれませんが)終えて、場所を定め、何か仕事を始めました。
この世のどこかに場所を持ち、作業をするということは、もう愚者のように完全フリーでいられるわけではありません。
これは出家していた人が還俗するのにも似ています。社会の中に役割を持つということです。
関わりを持つことでこの世に囚われ、死ぬまで抜け出せなくなります。
宇宙から地球にやってきた魂が受肉し、人間としての人生を開始すると言ってもいいでしょう。

【2 女教皇】

2 the high priestess 女教皇

2は偶数です。数の持つ意味として、奇数は陽を、偶数は陰を表します。
偶数は割り切れる数であり、受動的で女性的な数だとされます。
1が父なら、2は母です。
それらは対立する要素でありながら、共に存在します。
全てを受け止め、豊富な可能性を持ちながら、あくまで受動的であり、主体的に何かを選び取っていくことはしません。
絵柄では女教皇は書物を読んでいますが、そこにはあらかじめ決められたことが書いてあり、彼女はそれに準じます。
ライダー版では白と黒の柱に挟まれていますが、一人きりで書物に準じる女教皇は、白と黒のどちらに偏ることもありません。他者との関係に依っていないからこそ出来ることです。

【3 女帝】

3 the empress 女帝

3は創造を表す数字です。1という父、2という母から生まれた初めての子供です。
2の女教皇は一人きりで書物にふける、やや冷たい印象の女性でした。そんな女教皇は独身女性を表し、女帝は既婚女性を表しています。
ライダー版の女帝は生い茂る大地にゆったりと腰かけており、豊かさを象徴しています。
女性は子を産む、創造性の源ですから、3の持つ創造性と合致します。
マルセイユ版では女帝は右手に盾を、左手に笏(しゃく)を持っています。右手は顕在意識、右手は潜在意識を表すとされるので、この場合、意識上では防衛的だが、実は積極的であることが暗示されています。
2の女教皇はあらかじめ書物に書かれたことに従って選択するだけの受動的な存在でしたが、3の女帝は自ら作り上げていく積極性を持っています。
3は図形でいうと三角形です。線でしかなかったものが初めて図形になりました。
創造性はありますが、安定性はありません。

【4 皇帝】

4 the emperor 皇帝

4は安定を表す数字です。
4は図形でいうと四角形です。不安定だった三角が四角になり安定しました。
創造性は失われますが、現実社会に根を張る力は強いです。
皇帝は社会の支配者であり、国や共同体に秩序をもたらします。
マルセイユ版で皇帝は右手に笏を持ち、左側足元に盾が置かれています。女帝の時とは左右が逆になっています。
皇帝が対外的には積極性や野心を見せるものの、防衛にはさほど興味がない様が見て取れる。足は軽く組まれている。
皇帝はあくまでポーズとして野心や男性性を見せているだけで、本音としてはあまりやる気がないのかもしれない。
4は安定を表すため、この帝国の支配は既に完了しており、義務的に維持しているようにも見える。

【5 法王】

5 the hierophant 法王

5は遊びを表す数字です。4は安定していて地味でしたが、5では再び活発になります。
絵柄を見ると法王には二人の信者が群がってきています。
法王の権威は絶大で、信者に何かありがたいお言葉を授けているのでしょう。
法王は精神世界、崇高なことについては熟知していますが、世俗的なことはよく知りません。
世間知らずですが、信者に囲まれているため何とかなっている、未熟さを抱えた存在とも言えます。
現実の歴史を見ても、法王というのは腐敗していることが多いです。それでも立派な冠をかぶっています。

【6 恋人】

6 the lovers 恋人

6は調整を表す数字です。5までは自己の中に閉じこもっていることができましたが、数字も大きくなってきて、いよいよ他者を無視できなくなってきます。
5の法王は周りにイエスマンしかいなかったのでマイペースでも大丈夫でした。
6では他者からの要請を受けて調整を余儀なくされます。
6の段階ではまだ自己のバランス感覚は確立されていないため、自分を押し殺して他者の要求に応えようとします。
マルセイユ版の絵柄を見ると、男性は二人の女性に挟まれ、どちらかを選ばなくてはならないようです。
モテている…のではなく、この女性二人は母と恋人だという説があります(おそらく左の女性が母で、右が恋人でしょう)。嫁姑問題とも言えますね。
若者は恋人を選ぶことで母から自立し、地に足のついた生活をするようになります。
いろんな可能性を持っていたはずの若者は、特定の異性を愛し結婚することで、いつの間にか可能性を失い、社会の中にその身を埋めていきます。
一方、選ばれなかったもう片方の女性は、目に見えない内面で生き続けます。
現実世界で安定を選ぶと、不安定さに憧れを抱き、逆に、ザ・不安定で夢追い的な実生活を送る人の内面世界は案外つまらなかったりするように、選ばなかった方は内面化されます。

【7 戦車】

7 the chariot 戦車

7の数字には伝達、成就の意味があります。
6はおとなしく調整をする数字でしたが、奇数になった7には運動性が加わり、内から外へ、外から内へと激しく動きます。
絵柄を見ると、戦車は2頭の馬が推進力になっています。6の段階ではどちらか片方しか選べなかった若者は、7に至り、二つの相反するものから力を得られるようになりました。
しかし、馬は完全にコントロールされているわけではありません。
若者にも御しきれないようなパワーで戦車は前に突き進みます。

【8 正義/裁判の女神】【力】

8 justice 正義

マルセイユ版とライダー版で分かれますが、ここではよりクラシックなマルセイユ版を採用します。
8は凝縮という意味のある数字です。7でバタバタと忙しく動いていた2頭の馬は、ここで秤に変わります。馬が秤に凝縮されるのです。
7では男は戦車に乗り、馬の動きと一体化していましたが、8ではそれらを客観視し、裁きにかけます。
方向性の異なる二つの考え方を客観視することで、初めてコントロールが可能になります。
そのようにして、裁判の女神は社会の中で正しい判断を下します。

【9 隠者】

9 the hermit 隠者

9は精神性、総合性などを示す数字です。一桁数字の最後だけあって成熟していて高い精神性を持ちます。
9は3が3つで出来ています。3は創造性を、6は調整を意味しました。6では他者との関係に束縛されていましたが、関係性からも自由な存在として新たに生まれてくるのが9という存在です。
8の裁判の女神は一つどころに腰を下ろし移動することはありませんでしたが、9ではそこからも自由になっています。
絵柄では孤独に旅をする老人が描かれています。これまでの数字でさまざまな経験をしてきた老人は再び旅に出ます。老人は若い頃のように無謀な物理的冒険をするのではなく、精神的な探索をするのでしょう。
老人は人間関係、職務、権利欲、性欲などから解放されています。そして真に自由な思索をすることで、自分が何者だったのか、やっと気づくのです。
9で人間としての物語はいったん完成となります。

【10 運命の輪】

10 the wheel of fortune 運命の輪

1から9までの物語は10で締めくくられます。魂が地上に降りてきて肉体を持ち人として生きる、物質的生活がここで完了します。
今までやってきたことの成果や結果がここで出ます。結果重視、実績重視の世界です。
結果を出すためには現実世界のどこか特定の場に身を置いて活動するしかありません。
絵柄を見ると輪っかの周りに獣がいます。輪はぐるぐると周り、人生の浮き沈みを表しているようです。ずっと同じでいることは出来ません。
何かが完成するというのは実現という実りであると同時に、終わりでもあります。もうこれ以上やることはないからです。
11〜20では次のストーリーが始まります。

11以降は次回解説します。

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