映画「羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来」がすごいぞ君はもう見たか俺は見た
表題の通りですがもう見ましたか?私はやなせさんから「絶対見なさい」と言われて「はーい」と何も考えずに見に行ったのですが
死ぬほど最高
でした。
まさかこの映画体験、知らずに死ぬのはもったいない。そう思ってこのブログを書いています。
あらすじ
黒ネコの妖精シャオヘイは人里離れた森で暮らしていたが、ある日人間たちの自然破壊により居場所を失ってしまう。果たしてシャオヘイが見つける居場所、シャオヘイが選ぶ未来はどうなるのか―
まあそういうことで、主人公はこのにゃんこ。
にゃんこの名はシャオヘイ。妖精で、平和に山に暮らしていたんですがある日人間の開発によって山を追い出されてしまいます。
そんなシャオヘイを拾ってくれたのが、同じく妖精のフーシー。
シャオヘイくん、猫の姿なんですが妖精なので人間っぽくも変身できます。その姿がこれ
他者との共生を知らなかったシャオヘイに、フーシーは仲間を与えて寝るところ、食べるところを与えてくれます。
肉うまい!と感動するシャオヘイ。
ですが!そんなフーシー達を攻撃する「人間」が出てきました!それが、人間であり道士のような存在である「ムゲン」。
こいつ。ムゲンの攻撃から逃げるためにやむなくシャオヘイと引き離されたフーシーたちは必死にシャオヘイを捜索します。その一方で、ムゲンは強引にシャオヘイを人間の世界に連れて行こうとします。ムゲンのいる街では、人間と妖精が共生しているので、そこに行こうというんですね。
イカダの旅。事あるごとに逃げ出すシャオヘイを、ムゲンは圧倒的な力でねじ伏せ旅のお供にします。
そう、このムゲン、人間でありながら妖精と渡り合えるくらいありえないくらい強い強強スパダリなんです。基本的に無愛想ですがいつもシャオヘイのことを気にかけていて、シャオヘイがピンチになったらクッソ強いのでいつもさりげなく助けたりする。
スパダリとスパダリに反抗し続けるケモミミ少年の同衾(同じイカダで寝るという意味で)ロードムービー
これが中盤のあらすじですね。こんなん言われただけで見たいに決まっているじゃあないですか。
なんだかんだで
距離が縮まっていく二人。シャオヘイは「人間なんて大嫌い!」と思っていますが、ムゲンと接するうちに「人間も悪いやつじゃない、、?まあ、いいやつでもないけど!」とツンデレを大発揮します。そんな間にも人間敵対派のフーシーはシャオヘイを懸命に探し回っているんですが、、一体どうなるこの旅!?
■なぜ映画「羅小黒戦記」がすごいのか
まああらすじはこの辺にして、なぜ映画「羅小黒戦記」がすごいのかを言いたいです。
わたしは、「羅小黒戦記」は一言で言うと
ジャンプとジブリのいいとこどり
だと思っています。
「羅小黒戦記」、とにかく登場人物が多い。次から次へとなんかしらの能力を持つ仲間が出てくるんですが、普通「誰こいつ?何?」ってなるところが
ならない
んですよ。これがジャパンの映画ならべらべらべらべら長台詞で説明するんでしょうねってとこも、
「羅小黒戦記」では画の演出と劇伴でしか語らない
んです。だから結構極端に台詞が少ない映画だと思います。それでもね、伝わってくるんですよ。なんでだかわかりますか?
「これ、見たことある」
ものだからです。あっこれジブリで見た、あっこれジャンプで見た、そういうもののエキスのかけらを散りばめて「羅小黒戦記」は出来ています。
こんなこと言うと「えっパクリじゃん」という方もいると思います。
それが、
全然パクリじゃない
から「羅小黒戦記」はすごいんです。例えば突然年が行ってる偉そうな「所長」だかなんだかが出てくる。名前も紹介されない。でもわかるんです。
「あっこういう人、こういうところでこういう風に出てきたからこういう役割の人だわ」
ってわかるんです。なぜなら俺たちは少年ジャンプを、マガジンを、チャンピオンを読んできた。ジブリ映画を見てきた。そうしているうちに、だんだん「ああ、こういうところで出てくる人はこういう役割ねなるほど」となってきます。ヒソカとか出てくるだけでヤベエヤツだってわかるし、大原部長はまあああいう見た目だからこういう人だなんだろなって思うでしょう。
なんかこういう余裕こいてるのに強いヤツが出てきたら「ああ、こいつ余裕こいてるのにマジで強いヤツだわ」って思うでしょう。
「羅小黒戦記」では、そういう日本漫画の文脈を凄まじくうまく利用してきます。だから登場人物が新しく出てきてもろくな説明もないし、台詞も少ないんです。でもわかるんです。
「ああ、この人こういうタイミングで出てくるこういう人だからこういう役割を果たしてるんだろうな」
って。
見る人をものすごく信用してくれてる
もしくは
製作者が単に心から好きなものを集めて作ってる
んですよ。
その結果が
最高のエキサイティングなエンターテインメントです。
どのキャラにも感情移入できる。一瞬写るだけのキャラでも性格が把握できる。
私が思うに、「羅小黒戦記」は
今までに我々が見たことがあるものだけで構成されている
だからこそものすごいんです。
ピカソでしたか、“凡人は模倣し天才は盗む”とか言ったのは。
「羅小黒戦記」が見せてくれるのは、今までに絶対見たことがあるけど実際には見ていなかったもの
です。ジャンプ(他日本の少年漫画)とジブリのかけらを使って、最高の映画を作ったんです。中国のアニメスタジオが。打ちのめされませんか。この事実に。
よくいますね、現代美術とかなんとかで「自分の創作に影響されたくないから他人の創作は見ない」という人が。そういう人って、たいてい死ぬほどつまらないものを作ります。結局、あらゆる芸術って文脈の上に成り立ってるんですよ。私が「2gether」に熱狂してたのも同じで、
すでにある文脈の上でいかに華麗に踊れるか
それがエンターテインメントの世界では大事なんじゃないかと思います。そして、それを初めてやり遂げたのが中国アニメだった。日本アニメではしばしば萌えに走ったり説明過多に行ったりしてますが本末転倒です。「羅小黒戦記」を作り上げたのは本当にピュアな才能でしかないし、エンターテインメントの真髄がなにかということをピクサーやディズニーとは全く違う形にして世界に見せつけた。本当にすごいことだと思います。
ここからは腐った意見になりますが、言葉を換えると実際オタクの好きなもの陳列館ですからね、、スパダリ?あります!権力あるジジイ?あります!生意気なケモ耳?あります!みたいな、、
出たよイケメン人外
各個人が持つ特殊能力!!!知ってる!!!見たことある!!!!そういうの!!!!大好き!!!!!
「羅小黒戦記」が素晴らしいのは、あまりにも普遍的で日本人からするとブロック塀くらい見慣れたものを宝物として価値を見出し、形にしてくれた中国スタジオのおかげです。こういう形でわたしたちが心の底から興奮してきたことを昇華させてくれる作品が出てくるとは思っていなかったし、ある意味私の人生をまとめあげてくれた気がして涙が止まりませんでした。あんな作品、こんな作品が頭をよぎって、そして目の前のシャオヘイやムゲンやフーシーを愛おしく思って、本当に幸福な映画体験でした。
■中国のいま
さらに泣かされたのが、中国が置かれている現状をサラっと描いているところです。中国ではご存知の通りすさまじい都市化が進行してすさまじいGDPを叩き出しています。でもその豊かさの裏に、失ったものがある。豊かな自然や動物たち、のどかな生活。その葛藤が裏にあるというのが見えるのが、これまた涙腺を刺激するのでした。
ということでみんな見てくれ!円盤化がまだ決まってないらしい!見れるうちに、絶対見てくれ!あ、日本映画の説明台詞過多なやつが好きな人には向かないのでそういう人は三国志とかに行ってください!
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