見出し画像

貴重な体験(後編)


有難いことに続きが気になるとコメント頂いたので後編スタート。

複雑な思いでパトカーから降りて管轄の警察署へ。

取り調べ室で警察官と、調書をPCに打ち込む警察官。

「うわぁこれドラマでみるやつやん」

なんか警察官のオーラに圧倒されてやってもいない罪を認めてしまいそうな気持ちになりながら、精一杯虚勢を張り、「迷惑なんですけど、帰りたいんですけど」
という雰囲気を漂わせ取り調べに応じる。


「あすかが16歳だとは知らなかった」という旨、必死で伝える。

その上で普段のあすかの接客を執拗に尋ねられる。


待てよ?もしかしてママは皿洗いとして雇っていたとか供述していたら私の供述と食い違いが起きてしまうかもしれない…

どう答えるべきなのか…

私の供述は全部ふわっとしたものになった。


私「接客ですか?接客という接客はしてたようなしてなかったような」

私「皿洗い的なことをしてましたね」

私「他の従業員の手伝い的な?」

警察官の取り調べに全部

「んー、どうでしょうね?」
と曖昧な返事ばかりしていたら夜が明けた。


ネコはどうしているだろうか、このまま拘束になったら友人に電話をしたいと言おうと考えていたところ、他の警察官が来て取り調べ中の警察署に耳打ちした。

「うわ!よくみるやつやん」
なんか嫌な予感して泣きたくなった。
ネコのことばかり考えていた。


警察官から言われた言葉は

「○○(ママの本名)が全部の罪を認めて、あなたは知らなかったことだと言っていますので今日は帰っていいです」

この時の安堵は、この先も経験したことがない。

晴れて自由の身だ。
シャバに出れる。


パトカーで連れてきたくせに帰りはタクシーで帰れと言われたのが納得いかなかったが、まあ無罪放免になったのでよしとしよう。


そしてママは
「風営法違反、未成年者雇用」の罪で正式に逮捕され、新聞に載った。

新聞を読むと聞いていたママの年齢と実年齢が違ったが、まあよくある話だ。


ママはそのまま留置所に拘留された。

管轄の警察署と別の場所に移送されたのは何故か分からないが、後日面会に行った。


その時初めて知ったのだが、面会のときにアクリル板?ガラス板?みたいなやつの会話する口元のところ穴があいているのをドラマで見るが、本物は2層になっていて穴の位置がズレていて何かを渡せないようになっている。

無駄な知識が増えた。


ママに何か差し入れはいりますかと聞いたら

「とにかく中が寒い」と言っていた。
素足だったので

「靴下持ってきましょうか?」というと

「靴下はほどくと紐状になるから自殺防止の為に靴下は履けないらしい」と言われた。

また1つ知識が増えた。



そんな感じでママは1ヶ月くらい拘留された。

相当な罰金を払って出てきた。

後で聞いたところ、警察は既に内偵調査を始めていて、新規客を装い店に潜入捜査していた。

ママにはその情報がはいっていて、あすかを新規につけるなという司令を私に出していた。

内偵が入っているなら、さっさとクビにしろよと突っ込みどころ満載なのだが、ガセネタかもしれないとママも半信半疑だったらしい。


そんなこんなで日常に戻ったが、ママが新しく3人のキャストを連れてきた。

私に耳打ちしてきたが
「この3人まだ高校3年生だから気をつけといて」

全然懲りてない!!!


まあ普通に1ヶ月くらいで高校は卒業していた。



そして2年経って、あすかが18歳の誕生日

「あのときはご迷惑おかけしました」と言って、あすか正式入店した。


今にして思えばだいぶ貴重な体験をさせてもらったのであった。

後編までお付き合いありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?