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女性の昇進意欲には、女性活躍施策よりも職場のマネジメントが重要であるという研究(武石,2014)

概要

女性の昇進意欲の決定要因を、①企業がコーポレートレベルで実施する施策・制度要因(ポジティブアクションやWLB施策など)と、②関連施策の実施や上司のマネジメントに関する従業員の認知(部下が状況をどう認識しているか)との2つの面から調査している。その結果、②の影響が大きいこと、そして上司の部下育成マネジメントが性別によって異なっていることを明らかにした。

女性の昇進意欲に影響する要因を、企業レベルと従業員レベルで調査

女性の昇進意欲が男性とは異なる状況にあることは、多くの先行研究でも明らかになっている。企業の女性活躍推進の取組みは女性の昇進意欲を高めるという研究はあるが、企業レベルでの取り組むが従業員に正しく認識されているとは限らないという指摘もある。また安田(2009)は総合職女性の中でも昇進への嗜好が異なると指摘しているし、管理職の部下への対応は女性の意欲には大きな影響を持つ(佐藤・武石2010)。21世紀職業財団(2013)は女性の昇進意欲において上司の職場管理の特徴や評価の仕方、仕事の与え方などの上司マネジメントの重要性に着目している。

この研究は企業レベルでの施策実施状況と、管理職の意識調査、一般従業員(部下)の意識調査をマッチングをしながら分析しているのが特徴で、男女一般従業員の昇進意欲を被説明変数として「昇進意欲あり層」と「昇進意欲なし層(係長・主任相当までを含む)」に分け、二項ロジスティック回帰分析でその規定要因を調査している。

発見事項

その結果、以下のようなことが明らかになった

  • 企業が実施する施策以上に、職場の状況が昇進意欲に強く影響している

  • 正社員に占める女性比率は女性の意欲にマイナス影響(マミトラが存在?)

  • 企業の女性活躍支援や両立支援のとりくみは、女性に認知されることではじめて女性の昇進意欲に影響する

  • 上司のマネジメントの認知は男女双方にとって昇進意欲に強い影響を及ぼすが、そのうち「自分の仕事の仕方や内容について関心をはらってくれる」「自分に高い目標や課題を与えてくれる」「自分の成長・活躍を後押ししてくれる」という項目においては男女差が大きい

  • 女性活躍推進策を実施している企業においては、管理職が部下の女性の育成方針に前向きな傾向がある(施策の存在→管理職が育成に前向き→部下の意欲に影響)

  • 男女ともに「主任・係長」のポジションにあることは昇進意欲にプラスに影響する(責任ある立場につくことで意欲があがる?)

結論

女性の昇進意欲を高める上で、企業レベルでの施策実施の効果は限定的で、職場レベルで従業員が認知することと、上司の部下育成マネジメントが重要である。

出典:武石恵美子(2014)「女性の昇進意欲を高める職場の要因」日本労働研究雑誌


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