白ゆり姫
謂れのある人をやっと殺した
または 死んだ
裏山の斜面の一部に埋めた
白百合の球根を植えた
百合の球根あり 立ち入り禁止と立札を立て
園芸用ロープを張った
時期がくれば 様々に白百合が咲き誇り
鎮魂も最盛期になるだろう
罪滅ぼしにはなるまいが 自分の心に少しは感傷的光景を
作ってくれるのではと 勝手な発想もあった
ところがある日 田舎の役所の広報から電話が入った
住民や通り掛かりの人からの写メで 御宅の山の斜面に
この世のものとは思えぬほどにギラギラとラメに光る
真っ赤な百合の花が群生している
なんという品種か? 花盗人が出るといけないし
一度帰省してインタビュー受けて頂き広報に掲載したい
耳を疑った
念のため 球根を買った業者に色を間違えていないか問い合わせた
勿論 不手際はなく 購入したのは白色の百合の球根
因みに真っ赤な百合は現存しないとのこと
あるはずのないことが起こっていた
しかし それはあの人が死んだ時から
既に始まっていたのだろう
帰省して裏山の斜面の前に立った
見たこともない真っ赤な百合の花が群生していた
鎮魂ではなく 私の罪を告発していた
身体から力が抜けていくのを感じていた
対面するように凝視してから
涙は流さないと誓った
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