「kiko」"ウェブカレンダーからゲーム実況動画配信サービスTwitchへ" (2005夏YC卒)
1.【3分解説動画】
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2.【kiko概要】
kikoはウェブカレンダーのアイディアでYコンビネータの最初の学期となる2005年夏学期へ参加し、その後、Googleカレンダーの参入によりkikoはウェブカレンダー事業を撤退、kikoのソースコードをオークションサイトにて25万8100ドルで売却する。その後、ライブ動画配信サービス"Justin.TV"を開設。そのJustin.TVからさらに、スマホ動画配信に特化した"Socialcam"と、ゲーム動画に特化した"Twitch"が派生して誕生する。2012年にSocialcamはAutodesk社に6000万ドルで買収され、更に、2014年にTwitchはAmazonに9億7000万ドルで買収された。(この記事では、kikoのみならず、Justin.TV、Socialcam、Twitchの流れを追うことにする。)
Amazonに9億7000万ドルで買収されたゲーム動画実況プラットフォームtwitch(https://www.twitch.tv/)。
3.【創業者】
エメット・シーア(Emmett Shear)
1983年生まれ。イエール大学卒。大学時代に共同創業者のジャスティン・カン(Justin Kan)氏とウェブカレンダーサービス"kiko"を運営。2005年夏学期のYCヘ参加し、その後、Justin.TV、Twitchを創業。2016年(現在)、TwitchのCEOを務める。また、パートタイムのYCパートナーにもなりYC運営へも関わる。
ジャスティン・カン(Justin Kan)
1983年生まれ。イエール大学卒。大学時代にエメット・シーア(Emmett Shear)氏と共にkikoを創業、その後もシーア氏と共にJustin.TV、Twitchの創業へ携わり、現在はYCのパートナーも務める。
4.【kiko~Twitch 沿革】
~2005年~
イエール大学在学中、ジャスティン・カンとエメット・シーアにて、ウェブをベースとしたカレンダーアプリを提供する「kiko」を創業し、サービスを運用する。その後、同年の2005年の夏学期のYCへ参加し、5万ドルの資金調達をするも、Googleがkikoに似たオンラインウェブカレンダーの提供を開始したため、kikoは撤退。
~2006年~
kikoのソースコードをインターネットオークションサイトのeBayにて25万8100ドルで売却。その後、再び、YCより資金調達を行い、ライブ動画配信サービスである「Justin.TV」を創業。(Justin.TVは2006年夏にYCより資金調達をしているが、YCの2006年夏学期には正式には参加していない。)
~2007年~
Justin.TVのサービス提供の開始。開始当初、アクティブなユーザーは約2000人。エンジェル投資家等より、合わせて720万ドルのシリーズA資金調達を行う。
~2008年~
Justin.TVの月間ユニークユーザーは3000万人へ到達。
~2010年~2011年~
Justin.TVの成長に伸び悩み、汎用的な動画配信プラットフォームから、ゲーム分野へ特化した動画配信サービス「Twitch.TV」とスマートフォン動画配信アプリの「Socialcam」の2つのサービスへ転換。「Twitch.TV」は後に「Twitch」となる。
~2012年~
Autodesk社がスマートフォン動画配信アプリの「Socialcam」を6000万ドルで買収。
~2014年~
Twitchの月間ユニークユーザーは6000万人となり、AmazonがTwitchを9億7,000万ドルで買収する。この時の買収額は当時、Amazonの最大の買収額であった。
~2016年~
Twitchが人気ゲームコミュニティーを運営するCurseを買収する。
5.【kiko~Twitch 詳細】
エメット・シーア氏とジャスティン・カン氏は、大学在学時、コンピューター科学専攻ではなかったが、独学でプログラミングを学び、2005年夏のYC応募時点で、ウェブカレンダーのkikoを既に5ヶ月運用していた。当時、YCから「kikoのアイディアは良くないが、人材としては優秀」とされ、YCの学期への参加を認められている。
ジャスティン・カン氏は「大学で身につけた知識とスキルの内、現在、IT起業家として役立っているスキルはごくわずかだ。自身が考えるITスタートアップに必要な分野は、プログラミング、ウェブ開発、デザイン、製品管理、経理、企業戦略、ビジネスコミュニケーションである。」と自身のブログで綴っている。
彼らの最初のサービスであったウェブカレンダーサービスである、kikoは、Googleがオンラインカレンダーに参入したため、撤退しているが、2人はeBayにて、kikoのソースコードを25万8100ドルで売却している。このことについて、YC創設者のポール・グレアム氏は後日談として、
Googleが得意な分野で競争しないように私は勧めている。
と語っている。
kikoを売却後、カン氏とシーア氏はエンジェル投資家らに資金を返し、2006年のYC参加者たちと一緒に「誰かの生活を24時間動画配信をし、それに対してチャットで会話ができる」という動画配信サービスのアイディアを思いつき、カン氏とシーア氏は2006年のYCの学期への正式な参加メンバーではなかったが、YCより再び投資を受け、「Justin.TV」を創設。
Justin.TVが最初に自身の生活を24時間動画配信したのは、ジャスティン・カン氏自身だったという。その後、誰もが、頭にカメラをつけて自分の生活を発信しようとは思わないという気づきを得て、カン氏は自身のブログで「Justin.TVはやってよかったけど、非常にまずいアイディアだった」と綴っている。
その後、Justin.TVはライブ動画の汎用プラットフォームというサービスの方向性へシフトする。この時、エンジェル投資家から720万ドルの投資、銀行から200万ドルの融資を受け、Justin.TVは方向性を変え、再出発する。これを機にJustin.TVの月間ユニークユーザーは3000万人に到達する。
2010年、軌道に乗ったと思われたJustin.TVの成長率は鈍化し、創業者らはJustin.TVをさらに違う方向性へシフトさせることを決意する。この時、新たな方向性として「ゲーム配信動画へ特化させる」「スマートフォンで撮影した動画のライブ配信プラトフォームヘする」の2つのアイディアがあり、どちらも同時並行で試すことを決意。
これにより、Justin.TVはゲーム配信動画アプリの「Twitch.TV」とスマートフォン動画配信アプリの「Socialcam」、2つのアプリへ分裂し、どちらも順調に成長を記録し、成功を収めることとなる。(Twitch.TVはサービス開始、1カ月でユニークユーザー300万人を獲得し、ユーザー一人当たり平均のサービス利用時間は4時間半であった。)
2012年には、Justin.TVから派生したスマートフォン動画配信アプリの「SocialCam」ダウンロード数が1600万に達し、Autodesk社に6000万ドルで買収される。
さらに、2014年には、Justin.TVから派生した、もう一つの動画配信サービスであったゲーム動画実況アプリ「Twitch」は、当時、Amazonの買収最高額とされる9億7000万ドルで買収された。(Youtubeを所有するGoogleがTwitchを買収すると噂されていたが、結果としてAmazonが買収する形になった。)
同年、Twitchの前身となったJustin.TVは正式にサービス提供を終了した。
ゲーム動画実況サービス「Twitch」は日本語版でも提供されています。
2016年1月、YCのパートナーも務める創業メンバーのカン氏はSnapchatのストーリー機能を気に入り、「Snapchat上でのJustin.tvを始める」として新たに求人を開始している。
【参考図書・参考URL】
「Yコンビネーター」 (著) ランダル ストロス 日経BP社
Amazon、総額9億7000万ドルのTwitch買収を完了
Twitch、人気ゲームコミュニティーを運営するCurseを買収
Kikoに投資していたYCombinatorのPaul Grahamインタビュー