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米国・ヨーロッパのAIザル法を考察する

下記の記事に縛りのAI規定に関する興味深い解説がありました。このNoteでは米国・ヨーロッパのAI規定がそれぞれ10^26 FLOP、10^25 FLOP縛りである事を解説した下記のニュースを取り上げ、このAI規定がザル法ではないかという事を考察していきます。


アメリカ政府のAIに関する行政命令

バイデン政権が最近発表したAIに関する行政命令や、EUのAI法案が設定した計算能力(FLOP)のしきい値は、特定の高性能AIモデルに対する規制を強化することを目的としています。米国では10^26 FLOP、ヨーロッパでは10^25 FLOPを超えるモデルが対象となります。このブログでは、これらの規定が本当に効果的かどうか、そしてなぜ「ザル法」と呼ばれる可能性があるのかを考察します。


AI規制の背景

米国とヨーロッパがそれぞれのAI規制を設ける背景には、AI技術の急速な進化とその潜在的なリスクがあります。特に、国家安全保障、消費者プライバシー、そして倫理的な問題が懸念されています。規制はこれらのリスクを管理し、技術の安全な使用を促進するためのものですが、その実効性には疑問が残ります。

下記の様なご意見もありますので、今のところAIザル法規定のおかげで一般AIのプライベート目的使用者のマジョリティにとっては安泰と思っている節もあるでしょう。


FLOPとは何か?

FLOP(浮動小数点演算数)は、コンピュータが一秒間に行う計算の回数を示す指標です。10^26 FLOPや10^25 FLOPという数値は、非常に高い計算能力を持つモデルを対象にしています。これらの規定は、特定の計算能力を超えるAIモデルに対して報告や安全テストの結果開示を求めるものです。


規制の焦点とその問題点

0^26 FLOP以上の大手のAIモデルが厳しく規制される一方で、これ以下の計算能力を持つAIを開発する名もないスタートアップが急増し、これらのAIの闇使用が放置される事態になっています。大規模モデルにのみ焦点を当てた規制は、政治利用や詐欺目的、エロ目的の使用など悪意ある小規模なAIプロジェクトを見逃してしまうという問題を抱えているため、「ザル法」とも言える状況が生まれています。


闇AIの問題

技術の進歩により、高性能な計算リソースがより低コストで入手可能になっています。これにより、10^26 FLOPs未満のシステムでも強力なAIモデルをトレーニングすることが可能になってきています。これらの小規模なシステムでも十分に危険なAI技術を開発できるため、規制の焦点を大手企業のみに絞るのは不適切です。

ディープフェイクや詐欺に利用されるAI技術は、しばしば匿名の開発者や地下ラボから提供されます。これらの技術は迅速に広まり、多くの人々に悪影響を及ぼしますが、規制当局がこれを取り締まるのは難しい場合があります。規制の適用が大手企業に限定されているため、こうした問題が見過ごされることがあります。


大手企業への影響と対策

この記事に基づいて、現在10^26 FLOPs以上のPCで開発を行っているAI企業は以下のような大手AI企業です:

  • OpenAI

  • Microsoft

  • Google

  • ミストラル(Mistral)

  • アンソロピック(Anthropic)

  • xAI

  • META

これらの企業は大規模な計算リソースを持ち、最先端のAIモデルをトレーニングしています。
これらの大手企業は、規制に従うために多大なリソースを費やす必要がありますが、小規模なプレイヤーがこれを回避することで、競争の公正性が損なわれる可能性があります。


改善のための提案

大手企業のみに規制をかけると、悪意のある開発者は規制の抜け穴を見つけやすくなります。例えば、複数の小規模なトレーニングランを行い、それぞれが規制対象とならないようにすることで、規制を回避することができます。また、規制対象外の国や地域での開発活動を行うことで、規制の影響を受けずに危険な技術を開発できる可能性があります。

本質的には、危険なAI技術の開発と使用を防ぐためには、計算リソースの規模に関わらず、すべてのAI開発活動を包括的に監視する必要があります。これには、AI技術の開発目的、使用方法、そして倫理的なガイドラインに対する遵守状況の評価が含まれます。的ガイドラインに従うことを促進する。


再考が求められる FLOPs縛り

10^26 FLOPs以上のAIにのみ規制をかけることは、非常に限られた範囲の問題にしか対応できず、実際の脅威を見逃す可能性が高いです。規制の対象を広げ、AI技術の開発と使用に対する包括的な監視と評価を行うことで、より効果的にAI技術の悪用を防ぐことができます。

米国の国土アン戦保障省のAI規定については下記のNoteに詳しく解説しましたので併せてご覧ください。

何一つ具体案のない我が国の経産省のAI事業者ガイドライン

アメリカとEUのAI法案が設定したAI規制は計算能力(FLOP)という明確な基準を設けている一方、経産省の打ち出した日本のAIガイドラインには何一つ具体的な規定が明記してありません。ザル法という明確なものでもなく、オブラート法とか霞法のようなニュアンスで表すことができます。下記のNoteに詳しくまとめましたので興味のある方はご一読ください。


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