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サム・アルトマンが指摘する室温超伝導体: 科学的奇跡か、単なる誤解か

サム・アルトマンOpenAIのCEOは、1時間前のツイートで次のように述べています。「心から信じたいけど、私たちは反磁性体のことで興奮しすぎているのではないかと思う」。一体何が彼をこの発言に至らせたのでしょうか?

超伝導体とは何か

超伝導体は特殊な物質で、電流を抵抗なしに伝導できる性質を持っています。これは「メイスナー効果」として知られ、外部からの磁場を完全に排除するという特性を持つため、磁石が超伝導体の表面を滑るように動く現象が起きます。

超伝導体の現状と課題

しかしながら、超伝導体のこの驚異的な性質は、非常に低い温度でしか発揮されません。液体ヘリウムや液体窒素を使って冷却することで、この低温状態を維持することが必要です。この過程は、空気中の水蒸気が冷たい物体に触れて急速に冷えて結露する現象を引き起こします。ですから、もし超伝導体が手で触れられ、またその周りに湯気のようなものが発生していないのであれば、それはその物質が室温で超伝導性を示す可能性があるという証拠になります。これがアルトマンがツイートで指摘した動画の異常性の一部です。

元となった動画をアップしているtweetはこちら↓

室温超伝導体の可能性と影響

それでは、もし室温で、さらには大気圧で動作する超伝導体が存在するとしたら、どのような影響があるでしょうか?電力輸送では、エネルギーロスを大幅に削減し、エネルギー効率を高めることが可能になります。磁気浮上輸送では、高速で効率的な輸送システムを提供します。医療用イメージングでは、より正確な画像を提供し、診断を向上させる可能性があります。そして、量子コンピュータでは、超高速計算の門を開くことができます。

量子コンピュータと超伝導体

恐らく、サム・アルトマンはこの発明が本当であれば量子コンピューターに革命を起こす点で注目したのだと思われます。

量子コンピュータは、量子ビット、または「キュビット」を使って計算を行う新種のコンピュータです。これらのキュビットは、0と1の状態を同時に保持する能力があり、これによって量子コンピュータは驚異的な計算能力を発揮します。

ただし、この量子ビットの状態を維持し、量子効果を利用するためには、非常に低い温度が必要です。この問題を解決するために、現在の量子コンピュータは極低温の環境で動作しています。

そして、量子ビットを作るための一つの主要な技術が「超伝導回路」です。超伝導回路を使った量子ビットは、電流が抵抗なく流れる超伝導体の特性を利用しており、そのために超伝導体を極低温に保つ必要があります。

つまり、現状の量子コンピュータ技術では超伝導体と極低温環境が必要となっています。もし室温で動作する超伝導体が実現したら、それは量子コンピュータの設計や運用において大きな進歩をもたらす可能性があります。

サム・アルトマンとRigetti Computing

超伝導体と量子コンピュータの関連性を理解したうえで、アルトマン氏がこの分野に特別な関心を持つ理由について掘り下げてみましょう。それは彼の投資歴に関連しています。

アルトマン氏は、米国の大手スタートアップ・インキュベーター、Yコンビネーターの元社長で、現在でも影響力を持つ存在です。Yコンビネーターは、Stripe、Airbnb、Dropboxなど、インターネットとソフトウェア業界で著名なスタートアップを数多く輩出してきました。

しかし、アルトマン氏がYコンビネーターの社長に就任した2014年以降、彼の指導の下で同社の注力分野は大きく転換しました。彼は社長就任直後に「ブレイクスルーテクノロジーのスタートアップ募集」を宣言し、エネルギー、AI、ロボティクス、バイオテック、ヘルスケア、食料と水、教育、インターネットインフラストラクチャー、交通、住宅といった領域のスタートアップを支援する方針を明らかにしました。

この方針転換の一環として、Yコンビネーターは超伝導方式の量子コンピュータを開発するRigetti Computingに投資を行いました。リゲッティ・コンピューティングは、Yコンビネーターの「卒業生」でもあります。

このような背景を踏まえると、アルトマン氏が室温超伝導体の可能性について注目している理由がわかります。

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