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10月10日にダウンした全国銀行データ通信システムとは

2023年10月10日に全国銀行データ通信システム使用の以下の11銀行で振込障害が発生しました。

  • 三菱UFJ銀行

  • りそな銀行

  • 埼玉りそな銀行

  • 関西みらい銀行

  • 山口銀行

  • 北九州銀行

  • 三菱UFJ信託銀行

  • 日本カストディ銀行

  • JPモルガン・チェース銀行

  • もみじ銀行

  • 商工組合中央金庫


世界で類を見ないシステム「ZENGIN」

1973年4月9日に世界に先駆けて平日日中の即時送金を実現した全銀システムは、富士通メインフレームとCOBOLを使い、株式会社NTTデータが開発と保守をしています。全銀協傘下の一般社団法人全国銀行資金決済ネットワークが運営しています。取扱量や加盟金融機関数等において世界に例を見ないシステムとして「ZENGIN」の名称で広く知られています。

フィンテックに危機感、「モアタイム」の導入

全国銀行協会は、2018年10月9日に、LINEなどの新しい24時間送金サービスが出てきたのを見て、これまでの全銀システムの稼働時間を変更しました。今まで、全銀システムは平日の朝8時30分から午後3時30分までしか動いていませんでしたが、新しい「モアタイム」というシステムを追加して、午後3時30分以降も動くようになりました。これにより、普通の口座で、給料やボーナス以外の1億円未満の送金が、基本的にいつでもできるようになりました。

この新しい24時間送金サービスに最初から参加する銀行は504銀行で、全銀システムを使う全ての銀行は1275銀行ありました。みずほ銀行は2019年5月7日から、みずほ信託銀行は2019年7月16日から、農林中央金庫は2019年11月11日からこの新しいサービスを使い始めました。でも、大和ネクスト銀行のように、モアタイムを少ししか使っていない銀行もありました。

そして、2023年5月1日に、auじぶん銀行は、最近フィッシング詐欺で不正送金が増えているため、モアタイムの時間での即時送金を止めることにしました。

富士通メインフレームとCOBOLから脱却計画

全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)は、2027年に新しい「全国銀行データ通信システム(全銀システム)」を開始する計画です。この計画の詳細は、2023年2月8日までに明らかにされました。新システムでは、今まで使われていた富士通製のメインフレームから離れ、新しいオープン基盤を導入する予定です。さらに、古いCOBOLプログラムもJavaなどの言語に書き換えることが考えられています。

この全銀システムは、1973年から稼働しており、現在は第7世代が使われています。概ね8年ごとにシステムが新しくなっていて、次に登場する第8世代の全銀システムも、2027年に稼働開始を目指しています。

2027年の稼働を目指す次期全銀システムの大枠

主な変更点として、既存の富士通製メインフレームから脱却し、オープン基盤を採用する方針が打ち出されています。これに伴い、プログラミング言語も既存のCOBOLからJavaなどに切り替えることが検討されています。全銀ネットは2023年3月に基本方針をまとめ、同年5月にはRFP(提案依頼書)を作成して、NTTデータ、日本IBM、NEC、日立製作所、BIPROGY(旧日本ユニシス)、富士通の6社に開発提案を依頼しています。開発ベンダーの選定は2023年9月上旬に予定されています。

全銀ネットの千葉勇一企画部長は、新システム開発で「変えるべきところと守るべきところはトレードオフの関係になりがち。バランスを取るのに苦労した」とコメントしています。この次世代全銀システムの方向性は、国内金融機関の基幹系システムに対する判断にも大きな影響を与えるとされています。

対抗馬の台頭で急がれる次世代全銀システム

SBI銀行と楽天銀行のフィンテック戦略

SBI銀行は住友信託銀行と新銀行を開業し、楽天は東京都民銀行の「支店」システムを完成させました​​。SBIは地域金融機関のサービスを高度化し、楽天銀行は上場準備に入っています​​。また、第一生命がSBIネット銀行および楽天銀行と提携して銀行サービスを始めることを発表しています​​。

韓国バンクウェアグローバルのパッケージソフト

LINEの銀行プロジェクトについては、みずほフィナンシャルグループとの共同出資で新銀行設立プロジェクトが進められていましたが、2023年にプロジェクトは中止されました。システム開発の困難さや経営統合の影響が指摘されています​。新銀行の勘定系システムについては、韓国バンクウェアグローバルのパッケージソフトを採用し、開発を進めていました。

フィンテックの取り組みと全銀システムのJavaへの移行

これらのフィンテックの取り組みは全銀システムの改善計画とは異なり、より速やかに市場に対応し、デジタル化を推進しています。全銀システムのJavaへの移行は、システムのオープン化とコスト削減を目的としていますが、SBI銀行や楽天銀行、そしてLINEのようなフィンテック企業は、新しいビジネスモデルとサービスを提供することで、市場の変化に迅速に対応しようとしています。全銀システムの改善計画とこれらのフィンテック企業の取り組みは、日本の金融市場の未来を形作る重要な要素となりそうです。


1日経っても復旧の目処が立たず、COBOLがXでトレンドワード入りしています。コボラー総動員についてNoteにまとめましたので合わせてごらんください↓


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