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バイクのアクティブセーフティ

1980年代後半、VOLVOが安全だとしりきに言われていた頃なのでたぶんもう30年以上も前。車の安全性についての議論があった。

車の構造をがっちり固めて乗員の安全を確保するというアプローチと、車の運動運動性能を生かして危険を回避するという2つのアプローチが話題になった。

事故っても乗員にダメージが少ない車(パッシブセーフティ)と、事故を回避できる可能性が高い車(アクティブセーフティ)のどちらがいいのかという議論。

パッシブの雄はメルセデスやVOLVOで、アクティブの雄はポルシェやBMWだったように記憶してる。当時からなかなか面白い議論だと思って注目してたんだよね。
もっともこれは各メーカーがそう主張していたのではなく、欧米のモータージャーナリストが勝手に盛り上がっていた話だと思う。欧米人らしいっちゃらしい。

後世の我々はその後の経過を知っている。車はどんどん丈夫になり大きく重くなった。エアバッグやABSも標準装備になった。世の中はパッシブの方向に進んだわけだね。

これは当たり前の流れだよね。だって車の運動性能が高くても運転する人が未熟だったら充分機能しないわけだから。であれば運転者に依存しないパッシブに進むのは当然の理。

どちらにしろ、ドライバー側で出来る努力というのはあって、それは運転技術の向上という部分。運転が上手であればどっちにしても恩恵は大きい。

ここでやっと本題。
バイクの安全性って車と比較すると運転者に依るところが断然大きい。理由はやはり身体全体を使って重心を動かしながら乗るからだと思う。ハンドルを切ったら曲がっていく車とは違う。普通に運転するだけでも車よりずっと周到な準備が要る。

ではバイクの場合に置き換えると、パッシブセーフティは身体に着けるプロテクター類。そしてアクティブセーフティは運転技術なるんだろうか。

いや、よく考えると車と少し事情が違う。
バイクは身体がむき出しなので、どんなプロテクターをしていても充分ということがない。「ひとまずこれだけ着けていれば死なないよね」と言う閾値が見当たらない。従ってプロテクター程度ではパッシブセーフティになり得ない。

これが「バイクは危ない」と言われる所以だね。もちろん起きるのは重大事故だけじゃないので、どんなプロテクターも無意味ということはない。でも群を抜いて重視すべきは運転技術、まずは思い通りに操縦できること。
バイクの場合はアクティブセーフティが支配的で、副次的にプロテクターを着けて事故時に少しでも実害を減らす方向が正解なのかも知れない。

周りを見ていると、その逆パターンがちらほら目に止まる。プロテクターを着けてるから大丈夫、とばかりにUターンもロクに出来ない人が長距離ツーリングに出かける。まあ気持ちはよく分かる。運転技術の練習をしろと言われても何をしていいか分からないだろう。

ぼくは県警が実施する練習会にしばしば参加している。白バイ隊員たちがカリキュラムを組んで教えてくれる。他にもショップが開催する練習会もありこれも内容はとてもいい。

ぼくは自分の技術が大したことないので上手な人を凄く観察する。その経験で言えば運転が上手な人が事故に遭遇する確立は絶対低い。もちろん事故は運だから完全に可能性を潰すのは無理。でも上手い人はその経験値で事故の可能性から遠いところを走ってる。

こういう話になると教習所を難しくして免許のハードルを上げろという意見が出てくる。それでは解決しない問題だと個人的には思う。自分に何が足りないかは路上に出なければ分からないから。

ここ数年、ツイッターを見ていても免許取り立ての若いライダーの事故が目立つ。ぼくのアカウントのFF関係の9割はライダーだからだ。彼らは別に無茶をしているわけではなく単に経験が足りないんだと思う。

今回、書いていてバイクはアクティブセーフティなんだと自分の中で結論が出た。警察や行政もバイクの練習場所を確保してやってくれないだろうか。メーカーやショップでもいい。練習さえすればみんな上手になるのだから。

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