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「科学」のない組織変革は頓挫する

企業の課題は組織やチームへ。

先日、吉本興業の内部騒動が大きな話題になりました。芸能という一般企業とは異なる世界での出来事に見えますが、業界の違いに関わらず様々な世界で働く多くの人たちが『心理的な安全』や『仕事へのやりがいや幸福感』など求めているという点で、現代の人々のライフニーズを象徴する出来事だった気がします。人々にとって仕事は単に報酬を得るための活動ではなくなり、働くことを通じて生きがいや幸福感を手に入れようとする人が増えてきています。

それに伴い、企業における関心事も「事業や戦略」から「組織やチーム」へと移りつつあります。実際、今まさに組織変革に取り組もうとする企業は多いのではないでしょうか。例えば「働き方改革」や「ダイバーシティ」といった活動も個別のトレンドとしてではなく、組織変革の大きなムーブメントの一部として捉えられるようになってきています。またムーンショットと呼ばれる強力なビジョンをつくることで組織変革に取り組む企業も増えています。企業活動において持続的・反復的に新たな製品や事業を創造していくためには、自立した個人が集まった有機的な組織づくりが必要である、ということに多くの企業が気づき始めたのだと思います。

組織変革を阻む「壁」。

これらのムーブメントが広がりを見せる一方で、新たな課題も生まれています。組織に「課題」を抱える企業と、彼らに「解決策」を提供しようとする研究者やコンサルとの間にある『溝』です。

多くの場合、組織変革の活動では、ビジョンデザインやチームビルディング研修といった企業文化やマインドセットへのアプローチが中心になります。もちろんこれらのアプローチは重要な施策ではありますが、一過性のコンセプチュアルな活動で終わりやすいという問題もあります。背景には、そもそも組織づくりに関する活動は感覚的で概念的なエッセンスが多く、ロジックで説明しづらいという性質があります。そのために文化やマインドに働きかけようというアプローチに偏ってしまうのです。

このような組織開発の性質に対して組織コンサルや組織理論の研究者の多くは「組織づくりとはそういうものだ」というところで思考停止している気がしています。「組織開発の取り組みはもともとロジックで説明しにいものであり、企業側の人間もそのことを理解すべきだ」という姿勢です。

一方、組織変革をビジネスプロセスに落とし込み、ビジネスパフォーマンスを向上させたいと考える企業側の担当者にとっては、不安を感じてしまうポイントになります。ひどいケースでは組織の専門家側の説明がスピリチュアルや精神論に傾倒してしまうこともあり、こうなると企業側の担当者からはカルトにしか見えず、近寄りがたいものになってしまいます。

科学や論理で組織を変える**

今後、より多くの企業で組織変革の取り組みを進め、成果を上げていくためには、この企業側と専門家側の間にある溝を埋めていく必要があると思います。つまり専門家側が持つエッセンスをロジックに変換していくことが求められています。組織変革の活動を「科学」で説明できるものにしていくのです。そうすることで企業側の人間は、組織が変革していく過程をメカニズムとして理解できるようになり、その理解によってより円滑で効率的な行動変容にも繋がっていきます。

組織開発の分野は今まさにこの踊り場にある気がしています。理念的、文化的なアプローチに止まらず、「科学」によって組織を変えていくことが必要であり、組織開発の専門家自身がこのことに気づかなければならないと思います。

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